物理学最大の謎 | ある女子大講師

物理学最大の謎

物理学最大の謎はなんですか?

1.「非局所性」という量子論が突き付けている魔法のような事実があります。量子のもつれとか量子エンタングルメントと言われるものがそれです。一言で言えば、光の速度を超えて宇宙の端から端まで情報が瞬時に伝わる(量子テレポーテーション)という現象です。

これが真実ならば、これまで積み上げられてきた自然法則のすべてを再検討しなければならなくなります。なぜなら、極微の素粒子から、広大な宇宙の現象まで、今迄の物理学は「局所性」を前提に組み立てられた理論であり法則であるからです。

 

2.それは物理学にとどまらず科学的事象やそれを支えている力学法則、すべてに当てはまることです。化学、生物学、進化論、カオス理論、複雑系理論 等々。(これらの物質の相互作用には背後に漏れなく運動力学と電磁気学と熱力学が前提にあります。)

これらの理論・法則は光速度の呪縛から逃げ出すことは出来ません。とどのつまり、アインシュタインの相対論ですらどこまで行っても「局所性」が暗黙の了解事項として大前提となっているのです。

。彼は、自分のスタンスと量子論が示す「非局所性」が両立できないものであることを熟知していたようです。(WikipediaのEPRパラドックスを参照してください。アインシュタイン=ポドルスキー=ローゼンのパラドックス - Wikipedia )

この「非局所性」はミクロの素粒子世界だけでなく巨大なマクロの宇宙の現象にも見られると言われるようになりました。「ブラックホールのパラドックス」とか「宇宙の地平線問題」と言われるものがそれです。

3.宇宙の地平線問題とは?:サラリーマン、宇宙を語る。

(* このブログの最後に「宇宙の地平線問題は長いこと謎でしたが、現在ではインフレーション理論によって解決されています。」とありますが、それには疑問があります。インフレーション理論も光速度一定「局所性」に依存した理論だからです。この宇宙の地平線問題は、そもそも、情報は超光速度で伝達されるということを言いたいのではないかとかんがえるものですので・・・。)

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その辺の事情と内容は、昨年日本語訳が出た「宇宙の果てまで離れていても、つながっている: (量子の非局所性から「空間のない最新宇宙像)」(作者:ジョージ・マッサー 翻訳:吉田三知世 出版社:インターシフト 発売日:2019-03-05)という本に詳しい。一読をお勧めします。

 

4.

一読をお勧めします。

『宇宙の果てまで離れていても、つながっている 量子の非局所性から「空間のない最新宇宙像」へ』 - HONZ (このサイトの中に的確な要約が書評として掲載されています。)

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結論として申し上げるなら、「物理学最大の謎」となると、やはりこの「非局所性」の問題でしょうし、これを現代物理学は避けて通るわけにはいかない、と考えます。

この「非局所性」は「非因果性」の問題も含んでいますから、いわゆる今迄の「時・空」概念に揺さぶりを掛けるものになっています。この視点からするとアインシュタインの時空の歪みが重力の本質であるとする時空観も既に古典的な概念になってしまっているかもしれません。

だからと言って、ニュートンの万有引力の法則が、無効化されてしまっていないのと同じで、アインシュタインの時空論(重力理論。一般相対論)が無効になるということではありません。

実は私は今、未だに謎のまま残されているニュートンの万有引力(ここでは、重力と言ってもいいのかな)の「引力」に注目しています。理由は、この引力は「非局所性」ではないか、と考えているからです。

最近は、重力波の検出 が話題を呼んでいます。これはアインシュタインの相対論が前提(重力波は光速度で伝達されるという考え)になっているようですが、重力問題はまだまだ多くの謎を抱えているのではないか、というのが私の個人的見解です。

統一理論の前に立ちはだかっている最後の力でもあるし、何よりも、重力の「力」(この場合、引力と置き換えてもいいでしょう)の根源の謎は残されたままになっています。

いささか飛躍しますが、単刀直入にいえば、物理学が扱うフィジカル世界での現象も、いよいよメタフィジカル(形而上 or 異次元)の領域を覗かなければ、説明できない時代に入っているのではないか、と考えたりもしています。

もちろん、それは理性や論理だけで処理されるものではなく、感性とか直感と言ったものなどを総動員して追及される世界観と言ってもいいでしょう。(直観は瞬時にやってくるものです。これを「非局所性」の情報が瞬時に伝わることのアナロジーとして捉えても、私自身の中には違和感はありません。)

余談です。

秋晴れが続きそうですから、3,4日(2020年初秋)車中泊の一人旅に出ようかと考えています。大自然の中で、こういった問題を考えるのも悪くはないな、と思っています。

上記した謎につながるヒントが与えられればいいな、と期待するところです。

(* 旅行中に何か直感するものがありましたら、帰宅後、追記として書かせて頂きます。)

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追記:(2020/10/14 am 11:15)

一人旅から帰って、日が経ってしまいましたが、旅の間も上記で紹介した本を就寝前につまみ読みしたり、さらに、テキストファイル化したものをBlue tooth イヤホンでハンドルを握っている間も、スマホを使って「聴読」という形で通読しました。

「旅をしたくなる美しい景色」の写真を見せてもらえませんか?に対する中村 敏行 (Toshiyuki Nakamura)さんの回答

旅の間に、とりわけ飛び出たようなインスピレーションがあったわけではありませんでしたが、前々から考えていたことを整理することが出来たので、それを基盤に考えを今後も深めていこうと思いを新たにした次第です。

整理したというのは、この「非局所性」と「局所性」との間に立ちはだかる壁の問題です。これはこれからの物理学においても避けて通れない課題だと考えます。壁というのは以下の2点です。

【1.】 アナログ情報とデジタル情報(0,1 or on,off で表現される情報) の性質の違いと、その伝達速度(光速度と超光速)の問題。超光速は「瞬時」という意味。

【2.】 エネルギー概念の捉え方の問題。これは現代の時間・空間を説明する基礎物理定数(普遍定数とも言われている)、いわゆるプランク定数(h=6.62607015*10-34J・s, and h=4.135667696...*10-15eVs. すみません、乗数の表記の仕方が分かりません )が関わる問題。

エネルギーといえば、普通にこの現象世界での物質の振る舞いを説明する時に欠かせない概念ですが。プランク定数は、エネルギーの「不連続性」(0,1,2,…と続く整数の集合値)を明確にしたもので、エネルギーの「連続性」に関しては、アンタッチャブルな領域なのです。(触れてはいけないという意味ではなく、触れることが出来ないという意味です)

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この「情報」(アナログとデジタル)と「エネルギー」(連続性と不連続性)の問題は相互に深くかかわっている問題である、と私は見ています。

人間の心とか魂、人間の意識を超えた霊界とかスピリチュアルな世界、はてや究極存在としての「神」。これらはすべてがアナログ情報と連続エネルギーの飛び交う世界です。これをメタフィジカル世界と言います。【「瞬間移動」(空間概念)とか「永遠の今」(わたしはαでありωである、私は始めであり終わりである、と聖書の中(黙示録 1:8) で表現されている時間概念)の世界】

一方、プランク定数で構築される現象世界像(フィジカル世界)はどこまで行ってもデジタル情報と不連続エネルギー、すなわち、速度に限りの有る光速に、それこそ「拘束された」世界と言えるのです。

ここに「非局所性」と「局所性」の間には、現代の知性を総動員させ、それをあらゆる方法で駆使しても、絶対に超えることが出来ない壁(埋めることが出来ない溝と言ってもいいでしょう)があるのです。ここでは「知性」という言葉がポイントです。知性だけでは困難だ、と私は考えているのです。

最近、わたしがあるスペースに投稿したものがあります。その中で紹介した「日本物理学会」の記事をリンクして置きますので、ご一読をお願いします。この中で紹介した記事で「局所性」を前提とした現代の物理学が大きな困難に突き当たっていることを確認できると思います。(学会の執筆者の皆様はそういう視点では書いてはいません。物理学の未来を希望的に描いています。)

https://www.jps.or.jp/books/gakkaishi/files/71-09_70fushigi.pdf

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再び余談ですが、

今年(2020年)のノーベル物理学賞に3人選ばれましたが、その中で長老ともいえるロジャー・ペンローズが入っていました。授賞理由はブラックホールに関することだったようですが、何とも「遅ればせながら」という印象を持ってしまいました。おそらくこのブラックホールの研究成果は1970年代にスティーブン・ホーキングと一緒に取り組んだものが評価されたのでしょう。

その後、ペンローズはホーキングとも袂を分かって、量子力学上のここでテーマとした「非局所性」という問題を念頭に置きながら研究し続け、今日に至っています。

ホーキングはこのペンローズの取り組みを揶揄するかのように批判しています。その辺は以下のペンローズの本「心は量子で語られるか」に詳しい。(この本の第6章、第7章)

今回、彼がノーベル賞を獲得しなかったとしても、今後もこの「非局所性」に関してノーベル賞をはじめあらゆる科学賞を獲得することは出来ないでしょう。なぜなら、彼は物理学(数学も)のフロンティアに誰よりも早く飛び込んで開拓しているからですし、今後も、彼が優れた論文を提出しても、それを正しく査読して評価できる人がいないからです。その意味で先頭を走る人は皆孤独な人と言えるのではないでしょうか。

(* 科学論文のあらゆる領域を見ても、査読の限界も数多く報告されているというのが実情ではないでしょうか。科学者は未知なものに挑むパイオニアでないといけない、という性格(宿命とも言える)を帯びているからです。そういう意味においては査読者は既存の人、または過去の人と言われても、何も言えないと思います。科学の進歩には多く貢献はしていると思うのですが・・・。)

心は量子で語れるか―21世紀物理の進むべき道をさぐる (ブルーバックス) | ロジャー・ペンローズ, 中村 和幸 |本 | 通販 | Amazon

皇帝の新しい心―コンピュータ・心・物理法則 | ロジャー ペンローズ, Penrose, Roger, 一, 林 |本 | 通販 | Amazon

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まだまだ、書きたいことが沢山あるのですが、これ以上は浅学のため自分の力量を超えるものと思われます。Quora に参加しておられる理系の人(特に物理学者)のご意見を賜りたい、とこころ秘かに念じております。

尚、いくつかのコメントを寄せて頂いておりますが、上の理由でお応えするのに限界を感じますので、ご意見を聴かせて頂くことだけに留めました。ご容赦ください。

最後に、わたしの科学とか宗教のスタンスを表明した過去の投稿が幾つかあります。厳選して4つだけ、以下にリンク先を貼っておきますので、 ご参考に供して頂ければ、幸いです。

科学技術が進んだ現代でも宗教はいまだに重要ですか?に対する中村 敏行 (Toshiyuki Nakamura)さんの回答

なぜ物理学者は一般的に無神論なのか?に対する中村 敏行 (Toshiyuki Nakamura)さんの回答

AIによるシンギュラリティが到来すると考えている学者とAIは数学(演算・確率・統計)でできているので、読解力を持てずシンギュラリティなどおきないと考えている学者がいます。どちらが正しいと思いますか?に対する中村 敏行 (Toshiyuki Nakamura)さんの回答

数学には限界とかありますか?に対する中村 敏行 (Toshiyuki Nakamura)さんの回答

10/22公開 『奇蹟がくれた数式』予告編 95,759 回視聴 2016/07/21

(* この回答に貼り付けた映画の予告編の中の「神が教えてくれたんだ」(本編ではインドの女神たちとなってます)というラマヌジャンの言葉が、印象的です。映画をご覧になられることをお勧めします。)

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発想をひっくり返して述べるなら、私は「非局所性」を人間に直感してもらうために、神が人間に「局所性」という魔法(トリック)をかけたのではないか、と考えたりもしています。

近世以降の科学の立脚点という振り子は「局所性」の方に振れていましたが、20世紀に入って振り子は逆の方向に振れ始めているように思えます。

議論はまだ続いています。