ライセンス管理の責任はユーザーにあるのか? | 国際IT資産管理者協会 武内烈

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国際IT資産管理者協会 認定講師/ITIL Expert 武内烈のブログ

「ソフトウェア資産管理プログラム」 で貴社のソフトウェア資産の適正化を支援します・・・



などという謳い文句でソフトウェアメーカーから来る手紙に苦しんだという経験を持つユーザーが増えている。

ライセンス監査への導入となる「ソフトウェア資産管理プログラム」のご案内は、ユーザーにとっては「ありがた迷惑」としか言いようがない。



ソフトウェアメーカーのライセンス監査の活動は、端的に言えば「確度の高い営業活動」にほかならない。

米大手ソフトウェアメーカーが公然と「ライセンス監査活動は営業活動である」と認めているし、ソフトウェアメーカーにとっては、当然の権利であると言える。



しかし、多額の予算をソフトウェアに投入し、当該ソフトウェアメーカーに支払っている顧客の立場であるユーザーには、極端にいえば「盗人に追い銭」と受け止める人も少なくはない。



特にユーザーが製造業である場合、製造する製品の品質管理やコスト削減をぎりぎりまで追い込んで、さらに乾いたぞうきんを絞るようなコスト削減の努力を重ね、そこに追い打ちをかけるかのように人件費を削って、命を削って生存競争をしている日々に「ソフトウェア資産管理プログラム」は、そんな厳しい状況に、逆なでするかの如くバグを出すようなソフトウェアを出荷しておきながら、複雑なライセンス体系を盾に、「ソフトウェア資産管理プログラム」は何事かと、腹立たしい思いをされることだろう。



「ライセンスの管理など製造したソフトウェア メーカーの責任だろ!」

と思われる人もいるだろう。



しかし、ライセンス監査は今後ますます増加するだろう。

ソフトウェア資産管理も形を変えながら必要とされるだろう。



何故なら、ソフトウェアは契約であり、著作権物であり、IP(インテレクチュアル・プロパティ:知的財産)であり、ソフトウェアメーカーが、その権利を主張することは当然の権利として法が定めている事であり、使用権(ライセンス)を購入する際の契約で、当該ソフトウェアメーカーとの合意の上でソフトウェアの使用に至っているからだ。



「ライセンスの管理ができないなら包括契約(EA契約)で保険をかけておきましょう。」



高額なEA契約は確かにコンプライアンスの課題を解決してくれるかもしれない。しかし、本当にそんな高額な保険が必要だろうか?

最近、機会があって1980年代にサーバーアプリの契約統合を米大手銀行で手掛け、Enterprise Agreement という包括契約により大幅なコスト削減を実現し、業界では初めてEA契約なるものをソフトウェアメーカーと交わしたというSAM(Software Asset Management:ソフトウェア資産管理)の重鎮とお話した。

彼女によると、そもそものEA契約は、大幅なコスト削減を実現するための契約統合を意味していたらしい。

いつの間にか、保険の位置づけになってしまったが・・・

SAM もサーバーアプリの契約統合によるコスト削減を意味していたというお話はとても面白い内容だった。



ITの環境がますます複雑化し、ライセンスがデバイスやユーザーに紐づいたり、様々な状況でライセンスを執行するようになれば、これらも管理する必要がでてくる。

ソフトウェア メーカーは使用条件を定め、使用条件の遵守を求めてくるだろう。



かなり乱暴なアナロジーだが、ここしばらく考えていた「SAM のアナロジー」を披露させていただく。



私には18歳になる娘がいる。

手塩にかけて育てたというほど良い父親ではないが、大事な娘だ。



(もう、すでにどこに向かっているかお気づきの方もいるかもしれないが・・・)



娘がアルバイトにでた。

父親としては、当然、娘の人権は保護され、未成年であるから、状況に適した仕事が割り当てられるものと期待している。アルバイトの仕事先は信用のある企業だ。例え、娘が派遣されるとしても、派遣先などもしっかりと管理して、まっとうな仕事をさせてくれているものと信じている。せいぜいコンビニのレジ打ち程度だろうと。



ところが、実際は、深夜にお酒を飲んで、露出の高い服で、男性を相手にホステスまがいの仕事をさせられていたらどうだろう?



「ふざけるな! うちの娘になんてことしやがるんだ!」



相手の会社を訴えるぐらいじゃぁ、気が収まらない。

ひょっとすれば、相手の責任者をムショ送りにしてやるか、暴力沙汰でこっちがムショ送りになるかもありえるだろう。



恐らく、年頃の娘を自らの管理下に置く父親であれば、同じような反応をするのではないだろうか?

そして、誰もが「そりゃぁ、ひどい会社だ。未成年の子供にそんな仕事をさせるなんて」と、常識的にも、法律的にも許されないことだということが理解できる。



ソフトウェアメーカーにとってライセンスを提供することは、娘を仕事に出すのと変わらない。

(まぁ、ちょっと乱暴ですけど)

手塩にかけて育てた(バグありますけど)娘が、とんでもないところで勝手に仕事をさせられていたら、それは怒らずにはいられない。

(条件は小さい字で使用許諾契約書に色々と書いてあり、読まない人がほとんどだと思いますが)



「いやいや、娘さんは大人っぽく見えたので、てっきり成人しているのかと・・・」

履歴書を読んでないのか!18歳って書いてあるだろ!何を管理してるんだ!

(まぁ、使用許諾契約書にこまかく書いてますけど)



「いやだともいわずに、素直に派遣先に向かってくれたので・・・」

勝手に有無を言わさず送っただけのことだろうが!

(インストールはできちゃうんで)



現代では、未成年の就業についてはかなり厳しく管理されるようになった。

しかし、昔はそんなじゃなかった。

未成年のホステスなんて、あたりまえにいたし、高校生の深夜勤務もあたりまえにやってた。

しかし、人権や児童福祉法の運用がしっかりすると共に厳しく管理されるようになった。



著作権法や知的財産基本法や、ソフトウェア契約というものも今後ますます運用がしっかりとされるようになると、厳しく管理され、管理してあたりまえの世界がやってくる・・・だって、日本も IP で稼いでる国だし・・・そんな気がするのは私だけだろうか?