エンジンの調子が悪く、暖気後にエンジン警告灯が点灯するという平成13年式エルフ(NKS71EA、4HG1)。
同業者からの依頼だが、話を聞くと驚くことに「実は2年ほど前からエンジンの調子が悪いのだが、ユーザーさんはなんとか使っていた」というのである。
その間、エアクリーナーエレメントや燃料フィルタの交換などは行ったようだ。
いよいよ完全に良くしてほしいと修理を依頼されたようで、噴射ポンプを交換したのだがよくならないとのこと。
エンジン警告灯が点灯しているので、まずはダイアグノーシスを調べると、コード13(TCV系統)を表示。
TCVは噴射タイミングを制御するバルブなので、TCVの信号波形をオシロスコープで点検したが、悪いと断定できる信号ではなかった。
ただ、逆に良いとも断定できないが、制御自体は行っていた。
また、TCVに関する点検を行ったが特に問題はなかった。
こうなると電気的なトラブルではなく、機械的な部分に原因がありそうである。
最も怪しいのはバルブタイミング。
不調が始まった2年前に何をしたのかは不明のようだが、今回は噴射ポンプを交換している。
そのやり方を聞くと、マニュアルに従ってクランクプーリーとカムシャフトの合いマークを合わせて噴射ポンプも規定のマーク位置で組付けたとのこと。
とはいうものの、過去の事例(始動不能)のように、根本的に間違っている可能性も十分考えられる。
始動不能/ダイナ⑤ | 自動車整備士駆け込み寺 喝っ! (ameblo.jp)
よって、こちらでも再度確認することにした。
まずはクランクプーリーにある切り欠きのマークをトップに合わせて、カムシャフトの合いマークを確認したところ、合いマークが全く見えない状態だった。
クランクプーリー側
カムシャフト側(正しくは、TOPマークがヘッド上面にあるはず)
試しに、カムシャフトの合いマークを合わせると、クランクシャフトの合いマークは30度くらいずれた位置にあった。
カムシャフトのマークをTOPにした状態
クランク側はかなりずれていた
このまま噴射ポンプを組付ければ、当然、噴射タイミングの狂いにより異常検出をするはずだし、エンジン不調も当然である。
というか、こんなにもずれていても走れるものなのか?
ただ、気になったのは、暖気後にしか警告灯が点灯しないとのこと。
資料を調べると、コード13の検出条件は「水温60度以上で7°CA以上」となっていることがわかった。
これで納得である。
なぜ、こんな間違いを起こしたのだろうかと、カムシャフトをTOPに合わせている状態で、クランクプーリーを見ていたら、クランクシャフトのTOP近くに、本来のクランクシャフトの切り欠き部とは違うケガキ線のようなものが一致していることに気が付いた。
もしかしたら、このケガキ線のようなものでカムシャフトのTOP位置を合わせたのかもしれない。
この間違いが今回の物なのか、2年前からのことなのかはわからなかった。
今回は原因までの追及でいいということなので、修理は依頼者の工場で行うことになった。
数日後連絡があり、本来のマークに合わせたら調子よくなったとのことであった。
クランクプーリーはとても見にくい状態なので、出来ればしっかりと確認して色を塗ればこんな間違いはしなかったのではないかと思う。(写真のピンクは当方で着色)
過去にも何度か言ったことがあるが、やはり「急がば回れ」である。