燃料系に問題があると思われるダイナ。
しかし、コモンレール圧も良く、インジェクタやエンジン回転センサー系の波形に問題は見つからなかった。
エンジンECUやEDUも絶対に正常とは言えないが、オシロでの点検結果、それから症状やこれまでの経緯(オーバーホール前は不調ながらエンジンはかかっていた)等からは、これらのユニットが原因ではないように思えた。
もう一度、頭の中で1つずつ確認をして、整理していった。
その結果、どう考えてもタイミングが合っていないとしか思えなかった。
それも機械的なタイミングである。
となると、依頼者の工場で確認はしているが、本当にタイミングのマークは合っているのか疑問に思えてきた。
タイミングがずれているとしか思えなかったので、もう一度依頼者の人に詳細な話を聞いてみた。
エンジンの修理は外注だが、その時は高圧ポンプを外してエンジンだけを修理に出したそうである。
オーバーホールして戻ってきたエンジンに、依頼者のメカニックがタイミングを合わせて高圧ポンプを組付けたそうである。
そしてエンジンを車に乗せたところ、エンジン始動不能というトラブルが発生したのである。
エンジンを載せた後に発生したトラブルである。
当然、タイミングのズレを疑って、依頼者の工場でも再度タイミングは確認したそうである。
それも念をいれて2人で確認したそうである。
とはいうものの、その確認法が間違っている可能性もあるので、どうやって確認したかと聞くと、クランク位置、カム位置、高圧ポンプの位置を合わせるために、それぞれ合マークがあり、それが合っているかを確認したという。
それが本当であればタイミングはいいことになる。
なのにエンジンがかからない。
しかし、タイミングがずれている可能性が高い。
ただ、気になる点が1つある。
それは前回の記事でも書いているが、クランク角センサーの欠歯部とインジェクタの駆動指示信号を比較すると、噴射時期がずれているとは思えないのである。
もし、ずれているとすると、クランク角で360度ずれていることになる。
色々と考えてもしょうがないので実際に確認しようと思ったが、タイミングのずれで始動不能になったあるトラブル事例を思いだした。
たぶん、まだこのブログでは紹介していないと思うが、ガソリン車でかなり悩んだトラブル車があり、それはVVTが進角したことにより、エンジンがかからなくなった事例である。
それも、なぜか分からないが火花が飛ばなくなったり、インジェクタが作動しなくなったという事例なのである。
タイミングがずれたことによりECUが演算できなくなったのであろうと推定したのだが、その時に解決のヒントになった点検方法があった。
どうするのかというと、クランク角センサーとカム角センサーのコネクタを別々に抜いてクランキングしてみるのである。
5年くらい前の事例であり、なぜ、そんな点検をしたのか覚えていないが、かなり行き詰ってしまった事例であり、ワラをもすがる状態だったのかもしれない。
その時は、どちらのコネクタを抜いたのか覚えていないが、どちらかを抜いてクランキングするとエンジンがかかったのである。
結局、VVTのOCVに異物が噛みこんでいたのが原因だったのだが、その事例も原稿は書いているのだが、かなりの長編でオシロの波形等の整理に手間取って放置状態になってしまった。
とても面白い事例で、いろいろな発見があった事例だが、すでに5年ほど経っており、いよいよお蔵入りになりそうか気がする・・・(ホール素子式の回転センサーには、回転速度により立ち上がり波形になったり立ち下がり波形になったりと変化するという驚きの発見があった。等々)
そのことを思い出し、今回も同じように試してみた。
全く期待はしていないまま、カム角センサーのコネクタを抜いてクランキングすると、あれだけ苦労してああじゃないこうじゃないと悩んでいたのに、あっけなくエンジンが始動したのである。
これでやっと光が見えてきた。
それにしてもどうなっているんだ?
つづく