休日の朝、うだうだとテレビを見ていたら、ドキュメンタリーの放送が始まりました。
誰でも一度は歌ったことがあると思います、童謡『ぞうさん』の詞を書いた、詩人のまど・みちおさん、100歳になられるそうで、今は都内の病院に入院中ですが、毎日車椅子でのお散歩を欠かさないほどお元気です。
(このドキュメンタリーは今年1月3日に放送されたものの再放送だと後で知りました。)
ぞうさん
ぞうさん ぞうさん
お鼻が長いのね
そうよ 母さんも 長いのよ
この詞についてまどさんは、「象ほど鼻の長い動物はこの世にいない。それに向かって『鼻が長い』と言うのは、『お前はヘンだ』と言っているようなものである。しかし、『母さんも長いのよ』と応えると、大好きなお母さんと同じという、嬉しさがあふれてくる」というような意味の説明をなさっていました。
毎日の短いお散歩の中でも、小さな虫や植物を見つけては、生命の不思議に思いを馳せることをやめません。
このドキュメンタリーの題に「ふしぎがり」という言葉が入っていました。
「なんだろう?」、「ふしぎだなぁ」という思いが、100歳になる現在までまどさんに詩を書かせてきたのでしょう。
児童文学のノーベル賞といわれる国際アンデルセン賞・作家賞も受賞されたまどさん、創作の泉はまだまだ枯れません。
アリ
アリを見ると
アリに たいして
なんとなく
もうしわけ ありません
みたいなことに なる
いのちの 大きさは
だれだって
おんなじなのに
こっちは そのいれものだけが
こんなに
ばかでかくって‥‥
7歳年下の奥様もご健在ですが、ご自宅で一緒に生活されている時から、アルツハイマー病を発症しています。
発症当時にはずいぶん悩み苦しまれたようですが、生活を続けるうちに「アルツのハイマ君」と病気に名づけ、『トンチンカン夫婦』なる詩まで詠んで、ときにトンチンカンなことも起こる夫婦の生活を楽しんでさえいらっしゃるかのようです。
その奥様が、息子さんに連れられて、杖をつきながら週に1回面会に来られます。
「私と一緒にいたくないから、ここ(病院)にいるんでしょう?」なんてちょっと拗ねる奥様。
ある時、デイケアに行った施設で奥様がしりもちをついて怪我をしたのでしばらく来れないと息子さんから知らされます。
顔を曇らせるまどさん。心配そうです。
またある日には母校の大後輩(?)で放送部員の女子高生が、まどさんにインタビューをしに訪れます。
いろいろな質問に丁寧に答えていくまどさん。
「幸せってなんですか?」の問いに、「現在を肯定的に見ることのできる人は幸せ。自分も、周りの人も幸せになれるんじゃないかと思いますよ」というように答えていらっしゃいました。
昨年の11月16日に100歳のお誕生日を迎えたまどさん。お誕生日を祝いに、家族が病院を訪れます。
その中には、車椅子に乗った奥様の姿も。
病室に入ってきた奥様を見て、驚き、感動するまどさん。
「ああ、貴女は来れないんじゃないかと思っていた」と目に涙を浮かべて、妻の健康を喜びます。
まどさんが伸ばした手の上に、奥様が手を重ねられます。
しわしわの手の上に しわしわの手
しわしわと しわしわが 重なって
いままで重ねてきた二人の時間が
築いてきた家族の歴史が
しわしわの中に 織り込まれている
(拙詩)
戦時中も詩作活動をしていたまどさんは、戦争協力詩を2編書いています。
30代前半で自らも招集され激戦地の南方戦線に送り込まれたまどさんは、人と人が殺しあう現実の中で、協力詩を書いたことを痛烈に後悔されます。
2001年に増補・新装版で出版された「まど・みちお全詩集」に、この2編の戦争協力詩も収められています。
「よけることはできませんでした」とまどさんは語ります。「それは自分の良心が許さなかった」と。
そして、この詩集のあとがきの中で、戦争協力詩を書いてしまったことへのお詫びを述べているそうです。
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病室で、ノートに大きなクエスチョンマーク(?)とびっくりマーク(!)をたくさん書かれていたまどさん。
「?」が「!」に変わる瞬間に、素晴らしい詩が生まれるのかもしれませんね。
これからもお元気で、瑞々しい感性あふれる詩を、たくさん書いていただきたいものです。