ミスは素直に認めたい | 倉敷市の社会保険労務士・行政書士 板谷誠一 雑多な日記

倉敷市の社会保険労務士・行政書士 板谷誠一 雑多な日記

社会保険労務士・行政書士として仕事している板谷誠一の雑多な日記です。私は岡山県倉敷市に事務所を構えています。

毎年このころになると年末調整の話を聞くのだが、ちょうど昨年のこの時期に、源泉所得税に関する裁判例をブログに書いた。そこでは、

・年末調整や確定申告について、源泉所得税の過不足の清算を行うことは法律上想定されていない。

と僕なりの解釈を述べたが、


また、給与所得に係る源泉徴収の場合の年末調整について定める所得税法一九〇条は、同条一号に掲げる所得税の額の合計額がその年最後の給与等の支払をする時の現況により計算した同条二号に掲げる税額に比し過不足があるときは、調整を行う旨を規定し、その一号において「その年中にその居住者に対し支払うべきことが確定した給与等・・につき一八三条一項(源泉徴収義務)の規定により徴収された又はされるべき所得税の額の合計額」と規定している。
右「一八三条一項の規定により徴収された」とする文理からすれば、右規定によらないですなわち誤って徴収された金額はこれに入らないと解すべきものと思われる。


青柳馨「給与等の受給者が支払者により誤って源泉徴収された金額を税額から控除して確定申告することの可否」『最高裁判所判例解説民事篇(平 4)』59 頁より引用

のとおり同じような解釈をしている書籍をみつけた。

昨年もブログに書いたが、給与所得の概念等に争いがあるのであれば別として、誤って過大に徴収した源泉所得税について、「年末調整で調整するから間違っても構わない」という考えは納得できない。(僕も法解釈を誤って税金を多めに天引きされそうになったことがあったが、あまりいい気分はしなかった。)

実務上、誤って徴収された源泉所得税も含めて年末調整で調整されることに理解できなくはないが、上記言い訳をする前に、毎月の給与計算を間違えないように改善する努力をすべきだろう。
計算ミスはミスとして素直に反省し、給与ソフトを導入したり、専門家の先生にチェックしてもらうなりの改善策を導入すればよい。(もっとも専門家がミスを放置しては意味ないが・・)

そもそも労働基準法第二四条は、賃金が確実に労働者の手元に渡ることを意図して考えられた条文であり、法令に定めのある場合の控除を認めているのは、法令で明確に規定している以上、使用者の裁量が働かないからだと思われれる。

毎月の給与計算も使用者にとっては時間がかかって大変なのだろうが、労働者は賃金をもとに生活しているのだから、できるだけ計算ミスを防ぐように努力することこそ、健全な労使関係の構築に資するものと考えている。(昨年とほとんど同じ記述になってしまった・・)