なぜ自署・押印か? | 倉敷市の社会保険労務士・行政書士 板谷誠一 雑多な日記

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社会保険労務士・行政書士として仕事している板谷誠一の雑多な日記です。私は岡山県倉敷市に事務所を構えています。

社労士が取り扱う分野で、申請・届出書に記載する申請・届出人欄には、記名押印または署名を求めるものが多い。記名押印とは簡単に言えば、申請人等の文字をゴム印や、パソコンソフトを使って印字したものに、はんこ(法人であれば代表者印、個人であれば個人印など)を押すことで、署名とは簡単にいえば手書きで自分の名前(法人であれば法人名と代表者名)を書くことである。


一昔前は、署名かつ押印を求める書類が多かったと聞くが、平成9年に政府が国民の申請・届出に関する負担軽減をねらい、「署名に押印を求めている場合、原則として押印を廃止し、署名のみでよいこととする。」といった内容を含んだ、「押印見直しガイドライン」を策定した。それを踏まえて、記名押印または署名でよいとされたと推測される。(押印見直しガイドラインについては、WARP を使って検索すれば見れます。)


余談だが、この時に履歴書も見直しがされて、原則押印を求めないこととされたようだ。(ちなみに、その理由とは、履歴書は単に事実・状況を把握することのみを目的としているものだからだそうだ。ただ、この時は履歴書は手書きするものという一般常識があったからだと思われ、最近はWord,Excelあるいはwebで履歴書を作成するケースもあって、このような時は事実に相違ないという意思表示をするために、氏名を自筆でかく(つまり、自署)か記名押印(氏名もパソコンで入力するが押印する)しておいた方がよいのではないかと個人的に思う。)


それはさておき、今でも署名かつ押印を求める事例がないわけではない。もっとも有名な事例では、「税」関係だろう。(以下、税について少し記述するが、僕は税の専門家でないので正確な知識に基づいた記述になっていない可能性があることを考慮いただきたい。)


先日、とある手続きの「添付書類」として法人税の納税証明書が必要になった。(誤解を招くとこわいので強調しておくが、納税証明書をもらうという業務だけを受任したわけではない)お客様(法人)から委任状をもらって、僕が税務署に納税証明書の交付請求を行った。国税庁のホームページを見る限りは、委任状に「代表者の自署・押印が必要」となっている。(自署・押印とは自ら署名してはんこを押すことである。)


ただ、税務署に聞くと、「法人名などはゴム印で押して、法人税の申告時に押印した代表者印を押印していればそれでかまいません。」とのことだったので、実務上は記名押印でよいようである。ただ、所得税(個人)については、自署・押印でないとだめということだった。(今回確認しなかったが、法人税の場合でも押印なし、つまり自署だけではNGかと思われる。)


なぜ、税関係は「自署・押印」なのだろうか。ちょっと気になって税理士の先生に聞いたり、ホームページで調べたりしたのだが、明確な回答は得られなかった。推測するに法人税が「申告納税制度」であることに由来するようだ。(反対語としては、「賦課課税制度」(役所が税額を決定する仕組みで住民税がそれに当てはまると思う。))


労働・社会保険分野が特殊ではなくて、税関係が特殊だと思われるのだが、なぜここまで署名押印を求めるのだろうか。国民の申請・届出の負担軽減の観点からいえば、記名押印または署名の方がよい。


そんな署名だろうが記名だろうか仕事の何の役に立つのか、別に署名押印でもいいのではないかと思うかもしれないが、高齢者の人は署名するにも非常に時間がかかる(体力の低下だと思うが、筆圧が弱い)、またはんこもいつも持ち歩いているわけではない。ようは署名・押印は負担がかかるのだ。


なんとまあ細かいことを気にするやつだと思うかもしれないが、署名押印よりは記名押印または署名の方が負担がかからないことは事実であり、それがお客様のためになるわけだから、お客様サービスという観点から知っておきたい。


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