労働保険は労災保険と雇用保険のこと | 倉敷市の社会保険労務士・行政書士 板谷誠一 雑多な日記

倉敷市の社会保険労務士・行政書士 板谷誠一 雑多な日記

社会保険労務士・行政書士として仕事している板谷誠一の雑多な日記です。私は岡山県倉敷市に事務所を構えています。

今年は、雇用保険法の改正が4月以降にずれこんだ影響で、労働保険料の申告期限が、例年より遅れて6月11日であった。そのために、いろいろなところに影響が出たようだ。事業主に申告期限が遅れたことなどをいろいろなところで話してきた。


労働保険という言葉は、「労災保険(労働者災害補償保険)」と「雇用保険」をまとめた名称だが、被保険者(労働者)にはあまりなじみがない言葉だろう。そもそも労災保険と雇用保険は保障される内容が違うので、当然被保険者の範囲も異なっている。労災保険の保険料は事業主が払うインセンティブが働く(労災が発生した場合に、事業主に災害補償義務が発生するが、労災保険により、国が保険給付を行うことになる)一方、雇用保険の保険料はインセンティブがあまり働かない(労働者が失業しても事業主に直接デメリット(費用など)が発生するわけではない。)ので、まとめて保険料を納めるようにしたのではないか(つまり、雇用保険料の徴収率向上が目的)という話を聞いたことがある。


実際は、労働保険の保険料の徴収等に関する法律案審議時の国会議事録を確認すると、政府答弁によれば、「被保険者の範囲が広くなり、労災保険と雇用保険(法案審議時は、失業保険)料を別々に徴収すれば、事業主の事務負担が増えるのでまとめて徴収することで、負担の軽減になる」という意図のようだ。(この時に、労災保険と雇用保険の適用労働者の範囲を大幅に拡大改正が行われたようだ)


そのような議論も昭和40年代であったので、労災保険と雇用保険はそもそも別という話をしてもあまりピンとこない人が多く、「とにかく申告すればいいんでしょう」ということをよく聞くが、まあ「労災保険料しか払わない」といった事業主があまりいない意味ではよいだろう。

しかし、労災保険と雇用保険の被保険者は完全には一致しないので、労働保険料を計算するときには、分けて考えないといけないのだが、労災保険と雇用保険の被保険者が一致しないことに疑問を持つ人もいるわけで、そのあたりを事業主に説明するのが大変だ。

結論を言えば、労災保険と雇用保険の保険料をまとめて徴収するのは合理的だと思うし、その制度はよいのだが、労災保険と雇用保険はそもそも制度が違うということや雇用保険の手続は場合によってはハローワークで別途する必要があったりするなど、「違い」の周知も必要なのかと考えている。まあ、僕は事業主はじめ、いろいろな人に話す時には、それなりに理由を付して説明しているつもり。単に「決まりです」としか答えられないようではつまらない。