慢性的な膝の痛みに苦しむ変形性膝関節症(膝OA)の患者数は、世界中で2億5000万人以上に上ると推定されている。
高齢者や肥満傾向の人は膝OAになりやすいとされるが、新たな研究で、過体重や肥満の膝OA患者は体重が減少するほど膝の痛みが軽減し、健康関連のQOL(生活の質)も向上することが明らかになった。
詳細は「Arthritis Care & Research」オンライン版に掲載された。
米ウェイクフォレスト大学健康運動科学部門のStephen Messier氏らの研究グループは既に、肥満を伴う膝OA患者を対象に、食事療法と運動療法の有効性を検証するランダム化比較試験であるIDEA(Intensive Diet and Exercise for Arthritis)試験を実施。
その結果、18カ月にわたって10%以上減量すると膝の痛みが50%程度軽減し、関節の可動域も大きく改善したと報告している。
同氏らは今回、IDEA試験のデータを用いて、膝の痛みを伴う過体重または肥満の膝OA患者240人を対象に、減量の程度が痛みの軽減や健康関連QOLの改善に及ぼす影響を調べた。
対象患者を体重減少率で4つの群(5%未満、5%以上10%未満、10%以上20%未満、20%以上)に分けて解析したところ、体重が減少するほど痛みが軽減するだけでなく、関節機能が向上し、6分間歩行距離や身体機能も有意に改善することが分かった。
20%以上の減量に成功した患者では、10%以上20%未満だった患者と比べても痛みが25%軽減し、身体機能も向上し続けたという。
さらに、減量するほど身体的および精神的な健康関連QOLスコアも改善し、膝関節にかかる負荷の程度や炎症マーカーの血中濃度も有意に改善した。
米国立衛生研究所は、過体重や肥満の成人の減量目標として、まずは現在の体重を10%減らすことを推奨している。しかし、Messier氏は「今回の結果から、NIHの推奨基準を超える20%以上の減量に成功すると、膝OA患者は外科治療や薬物治療を行うことなく良好な臨床転帰が得られることが分かった」と強調している。
専門家の一人で米レノックス・ヒル病院のMatthew Hepinstall氏は、日々の診療で過体重は膝OA患者の転帰に大きな影響を及ぼす因子であることを実感していると話す。
今回の結果を受けて、「膝OAを抱える過体重や肥満の患者において、減量は外科手術を行わずに痛みを軽減し、QOLを向上させる数少ない手段の一つだとする新たなエビデンスが加わった。減量は簡単なことではないが、その有益性からも患者が努力するに値することを強く裏づけるデータだ」と評価している。