エリアか速度か・・・
ケータイWatchの記事に、 ソフトバンクの700MHz帯と3.4GHz帯の転用計画、総務省が認可 てのがありました。
総務省は、ソフトバンクが申請していた特定基地局の開設計画の変更を認定したそうです。記事によると・・・
変更されるものは、第3.9世代および第4世代向け周波数の特定基地局の開設計画。
ソフトバンクによれば、これは700MHz帯と3.4GH帯のこと。従来の携帯電話向けに割り当てられた帯域だが、5G方式でも使えるよう申請していた。
KDDI(au)も同様の計画変更を申請し、2週間前に認められていた。
だそうです。普通の方にとっては「なんこっちゃ?」というような記事ですが、これは来る5G時代において結構重要な問題ですので、ここで分かりやすく解説しておきたいと思います。
まず、巷で盛んに言われている「5G」とは何かですが、現在のケータイの第4世代通信(4th Generation)の次の世代、つまり第5世代の通信が5G(5th Generation)です。4Gと具体的に何が違うかというと、利用する電波の周波数帯が違います。
電波は国民の共有財産ですので、総務省により各ケータイキャリアに割り当てられています。5Gの周波数割当は以下のようになっています。
ドコモとauはそれぞれ3つの周波数帯を、ソフトバンクと楽天モバイルはそれぞれ2つの周波数帯を割り当てられました。この割当の経緯についてはここでは触れませんが、気になる方はググってください。
で、この3つの周波数帯のうち28GHz帯は「ミリ波」と呼ばれている周波数帯で、広範囲をカバーする周波数帯ではなく、空港やスタジアムなどの人が多く集まる場所で局所的に利用するものだと思ってください。
ですので、通常利用には3.7GHz帯と4.5GHz帯のSub6(サブシックス)と呼ばれている周波数帯でカバーします。
このうち3.7GHz帯については、衛星通信や衛星放送などに用いられる固定衛星通信、下りの通信に利用している帯域と重なっていることから、単に基地局を設置して電波を射出してしまうと、電波干渉によって衛星通信が利用できなくなるなど大きな影響を与えてしまう可能性があります。
そのため、3.7GHz帯での基地局に関しては、電波干渉を引き起こさないよう衛星通信の地上局の利用者と調整をし、そこから離れた場所に基地局を設置するなどの慎重な対応が求められており、それが容易にエリアを広げられない要因となっています。
こういった事情があるために、5Gのエリアが圧倒的に広がっていないのです。今後もその状況は変わらないでしょう。
ですから、auとソフトバンクは遅々として進まない基地局整備に業を煮やして、4Gの周波数帯をダイナミックスペクトラムシェアリング(以下DSS)という方法を用いて、5Gに転用することを決定しました。
これが今回、総務省から認められたということです。
本来は5G用の周波数を利用してこそ、本来の5Gの特徴である「高速・大容量」「低遅延」「多接続」という利点が享受されるはずですが、DSSを用いた方法では所詮4Gの電波ですから本来の5Gの特徴は出るはずもありません。
これが「なんちゃって5G」と呼ばれている所以です。
そのため、ドコモはこのDSSの活用に反対しています。ただ、ドコモは他のキャリアと違い、唯一4.5GHz帯の周波数を割り当てられています。この周波数帯は前述の衛星通信の影響を受けないので、他のキャリアより有利に基地局整備ができます。なので、DSSの利用には消極的ということもあるでしょう。
今後はauとソフトバンクはDSSを用いて、5Gの対応エリアをどんどん増やしていくでしょう。ただ、それは本来の5Gではないということは理解していただきたいところです。もちろん、各社とも本来の5Gの基地局整備も行っていますが、「なんちゃって5G」のように爆発的にエリアは広がりませんので、暫くは4Gのままでもいいでしょう。
本来の5Gの利用にはそれなりの時間がかかるであろうことを、認識しておきたいものです。