中の人もクラウドをかなり積極的に使ってるけど・・・

INTERNET Watchの記事に、 簿記を知らなくても使える会計ソフト「freee」、グーグル卒業生が開発 てのがありました。

銀行やクレジットカードのウェブアカウントと同期し、会計帳簿を自動的に作成するクラウド型会計サービス「freee(フリー)」が公開されたそうです。

会計ソフト大手の弥生や勘定奉行を扱うOBCなんかも続々とクラウドに参入してますが、今回のサービスは銀行やクレジットカードのウェブアカウントと同期して会計帳簿を自動的に作成するのがミソみたいですね。それと共に、無料プランも用意されていて、クラウドのフリーミアムモデルを踏襲したサービスになってるようです。

中の人も非常に興味あるサービスだったので、早速サイトに行って内容の詳細を見に行ったわけですが、良く言えばサイトがシンプル、悪く言えば情報不足という感じでなんとも知りたい情報がつかめず消化不良のような感覚でした。

料金プランは、「無料プラン」、「個人事業主プラン(有料980円/月)」、「法人プラン(有料1,980円/月)」となっているんですが、それぞれの違いが詳しく書かれていません。分かるのはデータの保存期間が違うのと、決算書の作成機能の違いのようですが、違いはそれだけなのでしょうか?「無料プラン」の保存期間は3ヶ月となっているんですが、それ以降は消去されるということなのでしょうか?サイトの中を探したのですが、見つけられませんでした。

利用規約に付いてもやはり気になったので、普段はあまり読まないんですが、読んでみました w 

まず気になったのは第11条のバックアップの部分。以下内容をサイトより転載します。

第11条 (バックアップ)
会員は、本サービスを通じて当社が提供し、または会員が取得した情報の全てについて、自己の責任において記録し、保存・管理します。
2 当社は、本サービスのために当社が管理するサーバーに保存された各種情報や通信記録その他の会員の一切の情報(以下「会員情報」といいます。)をバックアップとして記録することがありますが、記録の義務を負うものではなく、会員による会員情報の開示請求に応じる義務を負いません。

クラウドにありがちな条項ですね。サイトのトップページでは、「安心のセキュリティ」として、

バックアップで安心
データは自動バックアップ。分散化により、災害時なども安心。

と書いてあるんですが、「自己の責任において記録し、保存・管理します。」との必要があるようです。無論、クラウドの利用規約としてこう書かざるを得ないことは十分に理解できるのですが、では「自己の責任において記録し、保存・管理」する方法がサイトに掲載されているかというと残念ながら見つけることはできませんでした。ただ、トップページの小さなテキストリンクにある「ビデオを見る」のリンク内動画にはデータをCSVで保存できることが謳われていました。ただ、ビデオを見ないと「自己の責任において記録し、保存・管理」する方法が分からないのは、大事な会計データを預けるクラウドとしてはいかがなものかと・・・

GoogleにもGoogle TakeoutというGoogle サービスに保存されている自分のデータのコピーをダウンロードするサービスがありますが、同等の機能があるのであれば、サイト上で丁寧に説明する方がいいのではと思いました。

次に「5章 サービスの停止、変更及び終了」の15条と16条の部分。以下サイトより転載します。

第15条 (サービスの停止)
当社は、次の各号のいずれかの事由が生じた場合には、本サービスの一部または全部を停止することができます。
(1) 本サービス提供にあたり必要なシステム、設備等に障害が発生し、またはメンテナンス、保守もしくは工事等が必要となった場合
(2) 電気通信事業者が電気通信サービスの提供を中止するなど、当社以外の第三者の行為に起因して、本サービスの提供を行うことが困難になった場合
(3) 非常事態(天災、戦争、テロ、暴動、騒乱、官の処分、労働争議等)の発生により、本サービスの提供が困難になった場合、または困難になる可能性のある場合
(4) 同期可能サイトの事情により、同期可能サイトが利用できなくなった場合
(5) 法令規制、行政命令等により、本サービスの提供が困難になった場合
(6) その他、当社の責めに帰することができない事由により、当社が必要やむを得ないと判断した場合
2 当社は、前項に基づいて本サービスを停止したことにより会員または第三者に損害が発生した場合でも、一切の責任を負いません。

第16条 (サービスの変更、中止及び終了)
当社は、事前に会員に通知をしたうえで、本サービスの一部もしくは全部の内容を変更、中止または終了することができます。但し、変更、中止または終了の内容が重大でない場合には、通知をすることなくこれらを実施することができます。
2 当社は、前項に基づいて本サービスを変更、中止または終了したことにより会員に損害が発生した場合でも、一切の責任を負いません。

これもクラウドとしては、実にありがちな条項ですね。これもクラウドのサービスとしてこう書かざるを得ないのは十分に理解出来ます。ただ、これを読んだ「経理/簿記の知識はいりません。」というような個人事業主や経営者が積極的に利用しますかね?これとローカルのアプリを比べた場合、どちらを選ぶのでしょうか?「会計データが見たいときに見られない可能性がある」サービスを積極的に選ぶ意味を考えたいところです。

次に第19条の(損賠賠償及び免責)の部分。以下サイトより転載します。

第19条 (損賠賠償及び免責)
当社は、本サービスに関して会員に生じた損害について、当社に故意または重過失が認められる場合には、当該会員から1か月前までの間に受領した利用料金の1か月分に相当する額を上限としてその損害を賠償し、それ以外の損害については一切その責任を負いません。
2 本サービスに関して会員と第三者との間に紛争が生じた場合、会員は自己の責任と費用で解決するものとし、当社に何ら迷惑をかけず、またこれにより当社が被った損害(弁護士費用を含む。)を補償します。

これも同じようにありがちがクラウドにありがちな規約です。正にファーストサーバ事件の教訓を生かしたような規約ですが、これを謳うのであればなおのことバックアップについて、詳細な方法の開示を行う必要があるのではないかと思いました。

そして一番怖いと思ったのは次の第21条 (情報管理)の部分。以下サイトより転載します。

第21条 (情報管理)
当社は、会員情報について、会員の事前の同意を得ずに第三者に開示しません。但し、次の各号の場合はこの限りではありません。
(1) 法令により、会員の同意を得ずに第三者に提供することが禁じられない場合
(2) 人の生命、身体または財産の保護のために必要があり、かつ会員の同意を得ることが困難である場合
(3) サービス提供のために必要な受託者、または代理人
2 前項にかかわらず、当社は、会員情報の属性集計・分析を行い、会員が識別・特定できないように加工したもの(以下「統計資料」といいます。)を作成し、本サービス及び当社のその他のサービスのために利用することがあります。また、統計資料を第三者に開示することがあります。
3 当社は、会員情報の紛失、破壊、改鼠、漏洩等の危険に対して、合理的な最大限の安全対策を講じます。

この第21条の2項にある、「会員が識別・特定できないように加工したもの」とは、どのような方法によるものなのでしょうか?こと内容が企業において重要な会計情報であることを考えれば、この内容は容易には看過できない条項であるように思います。

利用規約についてはこんなとこなんですが、利用条件でかなり気になったところがあったんですよ。以下サイトより転載します。

インストール不要ですぐ始められる
登録するだけであなたのブラウザから、すぐに利用できます。(Chrome, FireFox, Safari に対応)

えーと、IEに対応してないってことですよね?IEに対応しないのはHTML5絡みだからなのかな?ただ、このサービスを利用する人ってのは、「経理/簿記の知識はいりません。」のような個人事業主や中小零細企業の経営者をターゲットとしてるんでしょ。中小企業のみをターゲットして営業させていただいている弊社からすれば、余程ITリテラシーの高い方以外は

ブラウザ=IE ですよ。

その人達がChrome, FireFox, Safari をあえてインストールしてまで使うかどうかというとチョット疑問です。そもそも中には「ブラウザって何?美味しいの?」レベルの方も結構いらっしゃいますから、IE以外の選択肢がある事自体を知らない方も多いんですよね。これはサービスとして結構ハードルがあがる感じではあります。

まぁ本ブログとして過去最長くらいに長々と書いて来ましたが、期待するサービスだけに如何せんサイト上の情報不足が否めません。企業の根幹をなす会計データを扱うのであれば、更なる詳細な情報提供を臨みたいところです。