この時期になると、我が母・キヨコさんがソワソワし始めます。キヨコさんがソワソワし始めると、春が来たなぁ、と思う私です。
彼女をソワソワさせるもの、それはイカナゴです。
「イカナゴのくぎ煮」は関西地方の春の風物詩。
イカナゴの稚魚を醤油とザラメ、生姜や山椒を入れて甘辛く煮たもので、ごはんがどんどんどんどん果てしなく進む一品です。
キヨコさんはこの時期、イカナゴのくぎ煮を作っては、あちらこちらへと配り、お届け先からの「今年もおいしい!」との賞賛を頂戴しています。
この賞賛こそが彼女の無上の喜び、そして来年への原動力なのです。
私も一昨年までは「おいし~い!」とパクパク食べていた側だったのですが、昨年からは作る側にも参加する羽目になりました。
そのきっかけは、ご近所のH田さん家の若奥さまです。
若奥さまが言うには、「いろいろな所からくぎ煮をいただくけれど、キヨコさんのくぎ煮がH田家で一番早くなくなる」らしく、とうとう旦那さまから「キヨコさんに教えてもらってこい」とのお達しまで出されたそうで、何と弟子入りをお願いしてきたのです。
このことを鼻高々で私に話すキヨコさん。
私は「そうかぁ・・・・・。キヨコさんがある日突然、ポックリ逝ってしまったら、この味が途絶えるってことやもんなぁ」と呟くと、ポックリ死を想定されたキヨコさんは怒るどころか、大真面目に
「そぉよぉ! 私が逝ったら、この味が途絶えてしまうのよ。アンタも師匠が元気な内に弟子入りしときなさい」
と、いつの間にか、私が一番弟子として強制入門させられていました。
そういうわけで、昨年の今頃、一番弟子は本来の仕事を後回しにして、午前中は師匠の鞄持ちならぬイカナゴ持ちとしてスーパーまで同行。
そして、昼ごはんもそこそこに午後からはくぎ煮づくりです。
お腹が空いた・・・などと呟こうものなら、キヨコ師匠から「イカナゴは鮮度が命!買ってきたらすぐに調理する!」と檄が飛んできます。
グツグツと煮込んでいる最中のイカナゴは、あまり引っかき回さないのがコツ。
引っかき回さずに、かと言って鍋からは離れられないので、一見楽なように見えて案外難しいです。
鍋を見つめているだけでは退屈なので、甘辛い匂いの中で、おいしくな~れおいしくな~れ、と呪文を唱えておきましょう。
煮汁が少なくなってきたら、鍋のまわりにへばりついているイカナゴを、菜箸でちょんちょんとつつきながら優しく煮汁の中へと落としてやります。
ガッシガッシと引っかき回さずに、ここぞというときには菜箸でチョチョッとつついてやる、これってばまるで、子の成長を見守る親みたいだなぁ。
過保護にするのではなく、必要なときにそっと手をさしのべてやる・・・・・、くぎ煮づくりは子育てと同じだ!(ってワタクシ、子育てしたことないんスけど)
そんなことも思いつつ、キヨコ師匠に教わりながら作った一番弟子の記念すべきくぎ煮デビュー作です。(2007年3月3日製作)
記念にと、ケータイのカメラで撮っておいたものが、まさか一年後にこうしてブログで公開することになるとは・・・・。
消さずに残しておいてよかった♪(´0ノ`*) アラ、ヤダ~
今年もキヨコ師匠は大張りきりで、すでにイカナゴのくぎ煮づくりはスタートしております。
一番弟子も、スケジュールの何日かをくぎ煮づくりに確保済みなので、今年もキヨコさんの一大イベントにつき合うとするか~。(´ー`)