月のきれいな夜と、髪を切ったどしゃ降りの夜。-キミオイ勝手考察②- | 山田裕貴について色々喋るma.naのブログ

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※ネタバレ含みますのでご注意ねがいます。




浩介と真愛───言葉にできないもどかしい二人。
初見でも俳優たちの表現力で伝わるものがすごくあるんですが、二度め以降はそれに加えて演出が効いてきて、更に泣ける箇所が増えてきています。
もちろん台詞のまま、あるいは内部からうっかり零れ出ちゃったような心の動きから素直に受け取って沁みる作品で、ごちゃごちゃ言うこともないんでしょうけど、ヲタクなのでいろいろ深読みしたがるんですよね。
台詞が婉曲になっている部分がところどころあって、果たしてそこで本当はどんな心のやり取りがされているのかな? と思わせる・探らせる作品でもあるように感じるというか。
台湾版から比べると、ストレートに気持ちを表すような台詞を徹底的に少なくした(※)と思うんです。
その代わり、人物がどうしてそうするのかという描写を丁寧に重ねたり、 あとは文学的な話とか月の話したりしてる。
※お国柄ということと、そもそも台詞自体少なくしてる気がしますね。

パッと見ると
いまこの人たち何の話してるんだ?
みたいなところがそこそこあったりします。
そこに観客が各々自分の思い出を当てはめて浸ることができる、ということでもあるんですが。

で、そういうシーンの代表格かなと個人的に思うのが『浩介と詩子のシーン』『同じ月を見る電話のシーン』『点描からのシーン』なので、今回は『電話のシーン』『点描からのシーン』について長々と空想など書いてみます。

一応、出てくるキーワードだったり台詞で表されてるもの、画面に映るもの、演者が表現するもので構成してるつもりなんですけど、勝手考察なのでお許しを…。
「あーそうだそんなのあったー」とか「そうは思わないなー」などいろいろ思い返していただける機会になったら嬉しいし、烏滸がましくも、もう一回映画館で観ようという切っ掛けの一つにでもなったらいいな、なんて思ったり。
※『浩介と詩子のシーン』についてはこちらを読んでみてくださればうれしいです ⇒『浩介と詩子と、そして猫。-キミオイ勝手考察①-』



『月のきれいな夜』
別れから二年半後に、とある出来事から二人は同じ月を眺めながら電話で話をします。
真愛から「浩介ほどわたしを好いてくれる人はもういないかも」と言われ、笑ってみせたりする浩介。

「もしも髪を切った夜が月のきれいな夜で、その髪を切ったのがわたしだったら、今頃わたしたち付き合ってたんじゃないかって。なぜだかわからないけど」

浩介から「月がきれいだよ。そっちでも見える?」と聞かれ、高校時代にも二人で見た月の話などをしながら、真愛がそう打ち明けました。
そして浩介は、なにかを覚ったかのような表情を浮かべ『パラレルワールド』の話を切り出します。

「そこでは俺たち、付き合ってるんだ。きっとデートしてる」

浩介から電話が掛かってきたとき、真愛の隣には別の男性がいました。
一見、浩介がだいぶロマンチストというか未練がましいというか、少々哀れにも映るシーンなんですが、ラストまで観ていくとこの時の浩介には夢想などではなく『パラレルワールド』を主張できるだけの確信と理由があったんじゃないかな、と思えます。


I love you を『愛してる』と訳すくらいなら『月がきれいですね』とでも訳しなさいというのは夏目漱石のエピソード(出典不明)
日本的な奥ゆかしい愛情表現として、よく目にします。
※とはいえ、ほんとにこれを愛の告白として使う作品はそんなにない気がしますが…(笑)

浩介と真愛のあいだには、たびたび『月』が登場していました。

・高校時代、夜の教室で浩介が月を眺め、その背中越しに真愛が「きれい」と呟く
・真愛が上京するときの別れの駅で、真愛は「昼間の月もいいね」と浩介に話す

いずれも浩介は言葉を返しません。
しかし、髪型をずっとポニーテールにしていたり、「りんごの意味、調べたよ」と浩介に伝えたり、点描シーンで詩子に耳打ちする通り、月というキーワードを通して見ても真愛は浩介からの告白をいつも待っていたことが感じられます。

この別れの駅で浩介は『You Are the Apple of My Eye』と書いたTシャツを真愛に贈り、真愛は浩介に借りたTシャツを返すんですけど、再会デートするとき二人ともちゃんとそのTシャツを着てくるのがめちゃめちゃかわいいです。
かわいくて床をゴロゴロ転がりたい。

ここまで通じあってたら言葉なんかなくても付き合うだろと思うんですが、そうはならなかった。
真愛がたびたび『月』の話をした一方、テスト勝負に負けた浩介がおもむろに教室を飛び出し、ずぶ濡れになりながら坊主頭にした夜、そして二人が喧嘩から別れてしまった格闘技大会の夜も『どしゃ降り』でした。


『どしゃ降りの夜』
わたしが(勝手に)『月のきれいな夜』に『どしゃ降りの夜』を対立項とさせている部分がここです。

・どしゃ降りの夜に浩介が髪を切った床屋のことを「異世界への入口だったんじゃないか?」と言っていたこと
・真愛も浩介が髪を切った夜について、月のきれいな夜に自分が切っていたら結果は違ったかもと想像していたこと

テスト勝負に負けた浩介が坊主頭にしたとき、嵐の夜に真愛を置いて出ていってしまうんですね。
そもそも、真愛が居残り自習に浩介を付き合わせていた最初の理由は説明がありません。
しかし浩介がのんびりカップスター食べたりりんご齧ったりしているのを見ると、スパルタで勉強させるためでなく、浩介が言った通りでっち上げのオカルト話を真愛が信じて怖がっていると思えます。
そんな女の子をひとり残し、浩介は出ていってしまった。
※約束を果たすためなんですけどね。

そして、狂気的な高揚感の表現が多彩なことに定評ある山田裕貴演ずる浩介が、本作では1ヶ所だけゾッとさせる表情をする場面があり、それが『格闘技大会』のとあるシーンでした。
もはや殴り合いがどうだの、試合に勝とうが負けようが、真愛からしたら浩介が恐怖でしかなかったと思われます。実際ドン引きしてましたし。
※浩介としては真愛が来てくれて嬉しいだけなんですが、切ないですね…

浩介が真愛に向けることができたのは、衝動的で気まぐれで突然の雷雨のような激しさを伴う恋心。
こうして見ていくと、真愛にとって『どしゃ降りの夜』は浩介の衝動的な行動とリンクして、自分をドキドキさせるもの、怯えさせる『犯罪者的な面』になってるのかな…ということが浮かんできます。

浩介って未分化な状態というか、こういう性格の人だって印象は実は強くはなくて、ただ体内に爆発的なエネルギーを生み出す機関があり、それがどっちに向かうか分からない危うさがあるんですよね。
何のせいでとか何のためにではない、まだ何からも否定されていない無目的な万能感が、これから大人になる過程で反発や挫折を経験し、どっちに向かうのか分からない。
憧れるけど、ちょっと怖い、というような。
※「すごい人間になりたい」と浩介の言葉を聞いた真愛は、期待と不安のないまぜになった表情に見えるんですよね。

そんな浩介も別れの後、真愛の望むようにしてやれなかったことを一生の『過ち』と悔やみ、心に十字架を負ってしまいます。
磔にされるのは『罪人』ですから、やはり『どしゃ降りの夜』の出来事は若かりし浩介の『犯罪者の面』を表しているように感じました。

ここですこし、彼らがすれ違う最初の切っ掛けとなった部分を書き出してみます。


初デート
真愛は実は自分に自信がなく、初デートの最中にわたしのどんなところが好きなの?と浩介に訊ねます。
マドンナという偶像を求められてきた真愛にとって『わたしの偶像を好きなだけではないか?』という不安は、非常に根深いように見えました。
※おそらく勉強できて当然の家庭なんじゃないかと。兄のエピソードを聞いてもそんな印象ですし、学校でも『頭がよくてかわいい』偶像的な人気だから、ちゃんと自分を見てほしいという思いはわかる気がします。

そこで浩介は自信満々に「ただ、好きだ!」と言い放ってしまって、なんとも微妙な空気に。
浩介からしたら最上級の言葉が「ただ、好きだ!」以外にないのはわかるし、実際最高の言葉なんですけどね。
浩介専用青ペンでシャツにシミを作ってくれちゃったとことか、ずっとポニーテールにしてくれてるとことか笑顔とか泣き顔とかいろいろあるんでしょうに、好きが溢れすぎて輪をかけて『語彙力のないヲタク』状態です。
ちゃんとわたしを見て考えて!と真愛は言いたいんですが、その怒った様子から、浩介は『俺はフラれたのか?』と心配になってしまう。
※『幼稚!』『ばか!』も好きのうち…

その後、浩介からの告白をずっと待ち続けた真愛が自分から伝えてもいいと切り出すわけですが、ランタンに真愛が浩介への想いを書いているとは知らずに、自分への自信のなさからこう言ってしまいました。

「いまは言わなくていい。これからも好きでいさせてくれ

正直、あーーー><ってなりました。
※そしてあの光を失ったみたいな真愛の表情…

さっきの浩介と真愛の逆です。
心に決めた相手に対する愛を確信してもらえないことは、結局お互いにとってショックだったのではないでしょうか。
自分が相手を好きなことを相手にも知ってもらいたい、信じてもらいたい、というのは自然な感情とおもうんですよ。
※これをどう見ても両想いの人たちがやってるのがもどかしすぎるんですよね。でもあるよなぁ…っていう。

浩介の気持ちもすごくわかります。
聞きたいけど、今度こそきっぱり拒否されてしまうのではと怖くて怖くて、もういっぱいいっぱい。
はっきり否定されるくらいなら、片想いのまま、好きでいつづけたい。
ランタンを持ったまま思い詰める瞳の迷いや、強張った声から緊張が伝わってきて、こちらも緊張してしまう。
※ほんとここの浩介よかった。

結局同じなんですよね、相手に愛されると思える自信がない、そういう意味でこの二人はめちゃめちゃ似ていると感じます。

といいますか、みんなそんなもんだよなーと。
言われたら言われたで「じゃあどれくらい好き?」とかめんどくさいこと聞いちゃったり、『好き』以外にもう表しようがなくて子供みたいに黙っちゃうとか。
いずれも『そのままの自分を受け入れてほしい』という要求に基づいているのですが、真愛のほうが引いてだめなら押すぶんやはりすこし大人ですかね。
不器用な浩介は、自分のやり方が通じなかったあとは真愛が歩み寄ってくれても、手も足も出ませんでした。

でも、真愛がシンパシーを感じたほど『似た者同士』なだけであれば、時間は掛かるけどいずれうまく行っただろうなー、とも思えるんですよね。

「あなたの中には二人の人がいる。いったいどっちを見てればいいの?」
「どっちも俺だよ。ぜんぶ俺なんだ!」

真愛はどうしても不安を拭えなかったんだろうなあ。
浩介も、涙を拭ってあげたり、抱き締めて安心させてあげることができなかったなあ。

真愛と浩介のパラレルシーンはいずれも真愛が泣いています
学校で泣いてるのを「見ないでよ…」と言って、差し出されたティッシュを拒否していた真愛が、泣きながら浩介を呼び出す、弱味を見せるようになる変化はわかりみしかない。
掛ける言葉も見つからず、挙げ句手も触れられない、結局どうしようもなくて自分のTシャツを脱いで渡すしかなかった浩介。
そのTシャツを初デートに着てくる浩介ももちろんですが、真愛にとってもそれらの思い出がとても大切なんだなと感じます。
※この喧嘩別れの夜、真愛の涙を拭いに真愛のパラレル世界の浩介が戻ってきたとき雨が止んでいる気が…
↑日本版は止んでませんでした(浩介が泣いている時は止んでましたが)

こうなってくると、どっちが悪い、どっちが愚かというんではなく、真愛が選んだ相手が医者で年上、自分が育った環境に近いお相手だったのがすごく頷けるんですよね。
※新郎、めちゃめちゃ余裕あるいい人だしな…いい人アワード2018。

初デートの場面は若くて青い、子供の喧嘩みたいに見せて、この時期にはこの時期なりの悩みやこれまでの人生経験も将来への不安もあることが見え、リアルに伝わってくるシーンでした。


浩介の確信
月の夜の電話シーンに話を戻すと、この時の浩介は表情も口調もずいぶん落ち着き、自分へのダメ出しを冷静に聞いたり、会話も年相応に大人びた印象です。
「殴り合いは最近はしてない」わけですし、若さゆえの激情って過ぎ去って振り返ると、ほんとにそんなものが自分の中に在ったのか不思議に思ったりするものでもありますね。

「月がきれいだよ。そっちでも見える?」
「見える! …いつか二人で見たね。───」

浩介は『現在』の月の話をして
真愛は『過去』の月の話をして…

『女は先に大人になり、男はそれに気づくことがない』のモノローグが浮かびます。
そして気づいた時にはもう遅いんだな、とも…。

ただ、真愛がずうっと『月のきれいな夜』を望んでいたこと、そしてそれがもう遅いということを浩介は悟ったものの、パラレルの話を切り出す前の浩介の表情には何かを覚ったようなニュアンスを含んでいる気がします。
浩介の記憶には真愛が(そしてこの時点では観客も)知らないことがひとつだけあるはず。
それは、予告で誰もが目にしたにも関わらずラストの点描までまったく出てこない、髪を切ったどしゃ降りの夜、自転車を漕ぎながら理髪店に向かう途中で叫んだ言葉です。


「お前が好きだーーーっ!!!」


どしゃ降りの中で、告白、してたんですよね。
※だからこそ、浩介は髪を切った夜を『月のきれいな夜』と勘違いしていたのでは? と思ったり。

人間っていろんな選択肢によって世界が変わりますが
浩介にとって真愛は
どの世界にいても『いちばん大切な人』に違いないんです。

俺、君には言えなかったけど、
あのとき確かに君が好きだったよ。

と…。
世界がどうあれ二人は両想いだったことを、ようやく浩介は覚ったんじゃないでしょうか。
失恋に変わりはないけど、もしわたしならそれってめちゃめちゃ嬉しい。
なにせ初デートの時にお互い踏み出せなかった部分ですから。
嬉しいけど、そんなことを打ち明けるのはもっと時間が経ってからにしようと思う。
あるいは、『もしも』の世界の話としてであれば…

  互いの近況を報告し合って
  でも僕は一つだけ嘘をついたんだ
  (Thinking Dogs『言えなかったこと』より抜粋)

浩介、焼け木杭に火を点けるようなことは口にしませんでした。

よくやった浩介。
ありがとう浩介。

ここの二人の、戻れないことを知りながらも、過去の未成熟な恋を肯定して、いとおしむような会話がとてもすきです。

「うらやましいな…。恋してくれて、ありがとう」

浩介が胸にそっと秘めることにした想いを、真愛も受け止めてくれたように思います。
※台湾版だとそんなに何度も月は出てきませんし漱石的要素が入らず、台詞も違い、コートンとチアイーの見ている『月(の形)』が違うためちょっと別の感じかたをしたんですけど、日本版の二人は『同じ月』を見ているため、通じ合えたんだろうなという気がします。


「これからも幼稚だ」
結果的に、真愛に改めて交際を申し込むことはせず、人生についてもくすぶっているような状態の浩介ですが、真愛のウェディングドレス姿を見て彼女を祝福できるまでの境地に至ります。
ここの浩介の表情も、ほんとにいいですね。
浩介の中に残っていた想いが、相手の幸せを願う大人の深い愛情へと昇華されていく様子が、溢れ出すように伝わってきます。

そしてその後、真愛へのありったけの愛を込めて……濃厚な口づけをしたのでした(新郎に)

アホスwww と思う一方で切ないし、気持ちわからんでもないな…乙…という感じでしたね。
自分がいかに真愛を愛していたか新郎に分からせた上で、ぜったいに幸せにしてやってくれよ!というエールなのか?
単純にアホな方向へ向かってしまったヤキモチなのか?
この段階では謎生物なラインのところが笑えて泣けて最高なんですが、浩介は違うことも考えていて、真愛にもそれがわかったのでしょう。

いくつもの記憶と、してほしかったこと、してあげたかったこと、『なぜだかわからなかった』パラレルの世界が浮かんできます。

どしゃ降りの中で叫んだ『好き』
ランタンに書いた『好き』

伝えられなかったたったふたつはお互いの胸にしまいこんで。
そして真愛の元へ戻った浩介は、こう宣言しました。
※いつかの、どこかの返事…

「これからも、幼稚だ」

浩介が新郎の唇を奪いに行っている間、真愛がとってもすてきな笑顔を見せるんです。
浩介は(新郎相手に絶賛取り込み中のため)見ていないんですが、その幼稚さを笑う顔はほんとうに楽しそうで、きれいで、きっと浩介もそんなふうに笑う真愛が大好きなんだろうなあと思います。
それほどの、最高の笑顔です。
※ちなみに笑い出す前のギャグみたいなキョトン顔もすきです。かわいい。


たとえ自分には涙を拭うことができなくても
たとえその笑顔を自分は見ることがなくても
どこかで真愛が笑っていてくれるなら
俺は『これからも幼稚』でいるぞ!


この人生で真愛が笑顔で前に進めるように。
そのために浩介は、自分の幼稚さを証明してみせたんですね。

こんなにかっこいい男
他にちょっといないでしょ
というくらい
かっこいいです
浩介ブラボー!!!!!

そんな浩介に真愛は、テスト勝負を挑まれたあの頃のように嬉しそうに答えます。

「約束よ」

※浩介は約束を果たす男。


池袋シネマ・ロサ舞台挨拶で言っていたのですが、
『バッピー・エンド』(※)という表現はほんとにぴったりだと思います。
※お言葉通り3週目に入ったので解禁です。

結ばれこそしなかったけど、『あの頃』が浩介と真愛の二人にとってかけがえのないものだった
切なくも清々しい、とてもすてきなエンディングでした。


日本版ならではの表現
『あなたにさよならを言うたび』もなんですが、隠喩の裏にある意味を俳優の演技や演出で探っていくというのは、日本版ならではの要素になっているなとおもいます。
特にパラレルワールドを切り出す前の浩介の表情がすごく好きでして、一秒どころかコンマ何秒で変わって浩介のさまざまな気持ちを表していると思えました。
※この表情がなかったら『こんな時にパラレルの話するなんて、やっぱり浩介は幼稚だわウフフ』と思って終わるとこだった

個人的に、真愛にとっての浩介が、浩介にとっての真愛くらい深く人生に影響していると思えることがリメイクでいちばんいいなと思う部分でした。
追いかけられたいチアイーが新郎を前にキスを承諾しても、おぅチアイーだな、って感じなんですが、真愛が承諾するのって、浩介が少しだけ彼女の世界も変えたんだなーと思えるんですよね。

こんだけ『月』に拘るならエンディングも、と思いきや、満天の星空にひとすじの流れ星。
きれいな月もどしゃ降りも、過ぎ去っていった『あの頃』なんだなぁ…とか妄想し出すとあれもこれもになりますが、「こういうのも映画の面白さ」という長谷川監督の言葉に甘んじたいと思います。
あと序盤に、浩介関係なく『月』が映るシーンがあったかと思うんですけど、そこの部分いつもちょっと笑ってます。乙。


だいぶ長くなってしまいましたが
お読みいただきありがとうございました!



※山田裕貴氏は「浩介は詩子に『浩介の中には芸術家と犯罪者がいる』と言われるんですが、ここをどう出すか重要視した」というようなことを言っているのですが、結論から言うとこれめちゃくちゃ成功してると思います。
実は、この水島浩介で久しぶりにポジションはっきりさせない役を観たなと思ったんですよ。
短時間でもキャラ立てすることやポジション立てすることが上手いのが山田氏ですが、浩介は一見表に出ている性格と真逆の性質を持ってるようなとこがいくつもあり『浩介なら言いそうだし、言わなそうでもあるし、浩介に聞いてみないとわかんないな』ってくらい、未分化で、不揃いで、あの内に秘めてる奔放なエネルギーだけが凄い。
それが何のせいでとか何のためにではない、まだ何からも否定されず無目的な万能感があるのが浩介(=愛しくもおバカな男子)なんですね。
だから、これから大人になる過程でどっちに向かうのか分からない、憧れるけどちょっと怖い。
そもそも体格の変わらない(むしろ女子より発育遅い)子供時代ならともかく、20cm前後も身長の高い成人男性と遜色ないのがふざけて暴れたりするの単純に怖い。なんでそんな大騒ぎすんの。声もデカイし。早よ大人になって。ってなるじゃん。
ここが成立しているから、真愛が浩介を好きな理由も許容できない理由もわかります。
山田裕貴氏はやはり、その時その時の感覚や感情や都合で多面的に生きてるけど、いろんな出来事からそれが集約していって方向性が決まるとまっしぐら…みたいな主人公をめちゃくちゃ高精細にリアル絵で描き込める俳優だなと改めて感じました