国内にはいったい何個の研究室(ラボ)があるのかわからないが、ほとんどのラボは高い理想を掲げて、サイエンスを駆使することによって、未知の物を解明したり、発見したりと、目的を達成しようとする。しかし、一部のラボでは、純粋にサイエンスを行っていないところもある。
真理の追究よりも、研究員を巧みに騙して雇用し、ボスが人間支配欲を満たす事が重要なのである。ボスの無知、能力不足のために議論は週刊誌レベルで、冷静で建設的なサイエンスの議論ができない。部下をマインドコントロールするために、徹底的に研究員の人格否定をし、無価値化する。自分の仮説が間違っていても修正せず、人のせいにして自分は決して責任は取らない。自分の思うとおりの結果が出ないと、まるで人を物のように取っ替え引っ替え、解雇する。
こういうラボをブラック企業にちなんで、私はブラックラボと呼んでいる。この言葉をネットで検索すると、実は既に使われているようだが、あまり普及はしていない。おそらく、そういう事例がまだ国内には少ないことの現れだろう。自分の所属しているラボは紛れもなくブラックラボである。
ブラックラボが存在できるのは、理由がある。今から20年ぐらい前の日本人研究者たちの中には、海外に留学して自分の力ではなくボスの力で3大誌に載った人たちも多かった。その人たちが帰国すると当時は比較的簡単にボスになることができた。さらに終身雇用制があるため定年までは誰からも辞めさせられない。特に国公立のラボでは支持母体の文系の役人は簡単に騙せるので、研究費もつきやすい。ボスがサイエンスの能力が無いのに、研究費だけが潤沢にある場合、どのようになるか想像がつくだろう。サイエンスの精神から逸脱し、個人の空想的、博打的興味だけでラボを私物化することになる。一般的には、プロフェッショナルの研究には博打的要素もある程度必要なのであるが、エビデンスが皆無では小学生の妄想と何ら変わらない。将来、上を目指そうとしている研究員にとっては、そこでの経歴は無意味と言うよりデメリットとなる。早くこのようなラボからは退散しなければならないが、生活もあるので簡単には決断できない事情もある。その辺の弱みもボスは知り尽くしているので、やりたい放題となる。ブラックラボを見分ける方法もネットには書かれているが、そもそもポスドクなどにとっては職の選択の余地が少ないうえ、ボスは巧妙に騙すので、現実には事前に見分けるのは相当難しい。
有能な研究者は例えどんな環境のラボでも必ず頭角を現してくるというふうにおっしゃっていた先輩がいたが、果たしてブラックラボでも言える事なのだろうか?