老後資金が年金だけでは足りなくて2000万円必要、ととらわれかねない金融庁の金融審議会のワーキンググループの報告書の問題は論点を整理する必要がある。


まず、100年安心の年金制度だが、年金受給者が100歳まで年金で安心して暮らせるということではなく、5年ごとに行われる年金の財政再計算からその都度100年安心の年金制度を維持するという意味。


政府は第一にそのことをもっと世に知らせる必要がある。


つまり、国が年金制度を持続可能なものとするために、保険料と税金で賄うのに世代間の支え合いをどう展開するのか、マクロ経済スライドで所得代替率50%を維持し、そのために5年ごとに計算して年金額や保険料を決めていく制度設計であることももっと流布させることだ。


マクロ経済スライドで計算しているゆえに、年金が増えるときも減るときもあることや年金運用で運用益の累積がここ10年間では過去最高となっていることも。


そして、今回のワーキンググループの報告書の算式は、収入が年金を主に21万円入る65歳と60歳の夫婦がいて、この夫婦は月に26万円支出し、そのなかには遊興費や旅行に使う費用が3万円とか食費が6万円とかとなっている。


さらに2480万円の預貯金があり、それを資産運用して95歳まで暮らすことを前提としている。


つまり、貯蓄から投資へ振り向ける意図をもっている。


ワーキンググループのメンバーも信託銀行や証券会社関係者が複数いることからも頷ける。


しかし、このような夫婦のモデルケースは年金受給者のなかでは少し裕福なクラスであり、そこをモデルケースとして世間に提示した点が不適切である。


それをやるなら、モデルケースA、B、Cというように、国民年金をもらいながら、商売している世帯や株で当てて○億円も預貯金がある世帯とか、いくつかのモデルケースを出すべきである。


確かに金融庁や大臣が受け取らないとしたことは丁寧さに欠くが、金融審議会の総会を経てないで世の中に出たゆえに、そのあたりも混乱要因となっている。


本来なら、この報告書を受けとる受け取らないについては、これは金融審議会の総会も通ってないものであり、生煮えで、もっといくつかのパターンを示すべきで、資産運用をすることが前提でNISAや投資信託ありきではないか?と突き返すべきだった。


それを木で鼻をくくるように見えることは誤解をさらに招く結果となっている。


これらの論点を整理しながら冷静に国民に対し、説明することだ。


そして、平均寿命が毎年延びていることや投資や貯蓄などについても、それぞれが真剣に考える契機になったことは間違いない。