ムサシ2021その2(ネタバレあり) | ボクの奥さん

ボクの奥さん

ボクの奥さんは、半世紀に渡る甲斐よしひろさんファン。このブログは、主に彼女の『甲斐活』について綴っております。

「演劇は複製が出来ない。その日、たった1ヵ所、その劇場でしかやってない
しかし、どんなに評判になっても利益が出ない(笑)
お客様に劇場の外からは観て頂けませんからという井上ひさしさんの言葉は
甲斐さんとのトークショーで、上岡龍太郎さんが、お笑いも含め、あらゆる芸術・芸能の中で
一度の機会で最も多くの人を感動させることが出来るのは音楽だとおっしゃったことや

藤井フミヤさんが、ある作家の方から、小説は読み終えるまで数時間かかるのに
音楽は数分で感動を与えることが出来るし、しかもすぐに繰り返して聴くことが出来る
…と言われたという話に通じるような気がすると奥さん
観劇に出かけるたびに、豪華なキャストの皆さんの顔ぶれだけでも
「こんなチケット料金でいいんですか?」と採算性を心配してしまうみたいだけど(苦笑)

「喜劇から強いメッセージ性を持つ骨太な作品」を多々生み出された井上さんが
吉川英治さんの「宮本武蔵」の巌流島のシーンでは、武蔵が小次郎にトドメを刺さず
手当てによっては助かる…との設定になっていたことにインスパイアされてお書きになったという
この作品についても、やはりその思いは強かったらしく
「3時間が、あっという間だった!」んだとか…(笑)

ともあれ、プログラムに掲載されている「あらすじ」には…
「慶長17年4月13日、豊前国小倉沖の舟島
真昼の太陽が照りつける中、武蔵と小次郎が睨み合っている
小次郎は愛刀『物干し竿』を抜き放ち、武蔵は背に隠した木刀を深く構える
武蔵がふいに『この勝負、おぬしの負けと決まった!』と声を上げる
約束の刻限から半日近くも待たされた小次郎の苛立ちは、すでに頂点に達していた

勝負は一撃で決まった。勝ったのは武蔵。
検死役の藩医に『お手当てを!』と叫び、疾風のごとく舟島を立ち去る
佐々木小次郎の『巌流』をとって、後に『巌流島の決闘』と呼ばれることになる世紀の大一番は
こうして一瞬の内に終わり、そして…物語はここから始まる」…と記されてますが

実際の舞台も開演するなり、下手側から武蔵役の藤原竜也さんと
小次郎役の溝端淳平さんが走り出て来られたかと思ったら
上手側奥と下手側ステージ近くで睨み合われ
「遅いぞ、武蔵!」「この勝負、おぬしの負けと決まった!」等の短いやり取りのあと
勝負は、武蔵の鉢巻が切れ、小次郎が倒れるという形で決まり

武蔵が手で小次郎の息を確かめ、下手側の袖奥に向かって
「お立ち合いの細川様の御家中へ申し上げる!そちらにお医者は、藩医殿はおいでか?
おお…お手当てを!早くお手当てを!」と叫んで去って行く
というホンの数分で、第1幕1場は呆気なく終了でした(笑)

もっとも、奥さんは、共に長身のお二人がそれぞれの役柄に合ったお姿で登場され
いきなり高いテンションで対峙なさっているのを目の当たりにして
「一幅の絵」のような眺めにポーッとなってしまったみたいだけど…(笑)

その藤原さんは、2018年の蜷川さんの3回忌追悼公演の際には、その不在の寂しさが大きく
「演劇との向き合い方がよく判らなくなって」いらしたそうですが
今回は「演劇が時代を作る、変えて行くんだ!」という蜷川さんや井上さんの思いを
「僕らが背負って、客席に届けられたらと思います」と話され

溝端さんは「今、この作品を世に放つ意味を考えなさい」という蜷川さんの言葉を胸に
小次郎の武蔵に対する憎しみが強烈に出ていなければ始まらないこの「完成された作品を
壊してはいけないという怖さは抜け切らない」ものの
「一生に一度しか、この芝居を観ないかも知れないお客様のためにも
今の自分が出せる最高の小次郎を毎回出せれば…」という思いで舞台に立っておられるようです

今回の追悼公演をご覧になった方々が、一番多くツイートなさっていたのは
コロナ禍で、公演が中止になったり、なかなか劇場に足を運べなかったこともあり
「やっぱり生の舞台は良い!」「生に勝るものはない!」といった呟きでしたけど
溝端さんや甲斐さん等、演者側の方が、1つ1つのステージを大切になさって
真摯に務めていらっしゃるこそ「ベスト」な公演を味わうことが出来るんですよね?

そして舞台は暗転となり、宮川彬良さんの手による音楽が流れる中
巨大な竹の群れが「サワサワ」という感じで舞台に登場
でも、所定の位置に留まる様子はなく、前後左右に移動したかと思ったら
今度は、この公演の舞台となる鎌倉・宝蓮寺のセット…
「橋懸かり式」屋根付き廊下と八畳の客間…も登場し

…って、配信映像では暗くて判らなかったけど
奥さんによれば、黒子の皆さんが、それぞれ担当なさっている「竹」や「廊下」「客間」を
静かにステージの床の上で移動させておられる様子は
プログラム化されているかのような滑らかさで
ちょっとでもタイミングがズレたら、セット同士がぶつかってしまうんじゃないかというくらい
際どい入れ替わりが何度も行われていたらしい

もっとも、蜷川さんは「身毒丸」でも、あの家族の家を、玄関や茶の間、寝室と分割して登場させ
最後に一軒の家の形が整う…といった演出をなさっていたし
この禅寺のセットが完成するまでの間、奥さんが頭に浮かべていたのもそのことだったんだとか…

やがて、照明が点くと…上手側に客間、そこから下手側に伸びる屋根付き廊下がステージ奥にあり
その廊下には、上手から順に沢庵(塚本幸男さん)、柳生宗矩(吉田鋼太郎さん)
木屋まい(白石加代子さん)、筆屋乙女(鈴木杏さん)、宮本武蔵が座っていて
平心(大石継太さん)だけが庭に立ち…って、この時点で、奥さんの視線は吉田さんに釘付け(笑)
相変わらず「そこに居るだけで、空気が変わる」と申しておりました♪

ちなみに、竹は竹林となり、ステージ最奥で風に揺れ…って
この大阪の会場では、ステージ前方の天井に触れるほどだったのが
北九州・小倉公演では、のびのびと揺れていたみたいです(笑)