萩原健太さんいわく…いつまでも少年の瞳を持っているとか
そういう文言が褒め言葉として流通している
もちろん自らが理想とする表現活動のために、本当に子供のような純粋さを
維持しようと懸命に感性を研ぎ澄まし続ける天才もいるが
大方は、そこまでの覚悟もなく
中途半端に子供と大人、両方のおいしいとこ取りをするばかり
今の世の中、ちゃんと成長すること
ちゃんと大人になることは大変だし辛い
甲斐よしひろは、そんな本当の意味での成長を
80年代を通して、僕達に見せてくれた
奥さんが、しょっちゅう甲斐さんのことを
「お茶目♪」だとか「子供みたいで可愛い♪」と言ってるのはさておき(笑)
甲斐さんご自身は、というと…甲斐バンド時代
(「リピート&フェイド」の頃)には
「今、僕、好きか嫌いか、面白いか面白くないか
はっきり言ってそれだけしかないんだ
それでいいと思う、少なくともこの先3年くらいは」
…とおっしゃってたんだけど
アルバム「カオス」のキーワードを
「大人のラジカル」になさったことについて訊かれて…
「タテノリでジャンプしてシャウトしてさぁ
好きか嫌いかっていうだけのテンションで言葉を投げつけるっていう(笑)
年齢じゃない訳じゃない?
僕もそういう道を通って来てるから
今、若い人達がそうやってることはよく判るし、肯定するけどね
人それぞれ違う価値観を持って作ってるから面白いと思う
ピュアに何かを求めているのがいい
でも、ピュアと言っても
いつまでも感情的に大声出してるだけじゃ、ただの子供
飲み込むところは飲み込んで
言うところはそれなりの言葉を選んで、的確に伝えなければ…
これは、年をとったということじゃなくて
人生を構築してるってことだと思う」
…と答えておられました(笑)
ちょうど3年目に、こう変化されたことがスゴイですね(笑)
その「若い人達」については
「3年後の自分達の音楽まで考えてやる余裕がないんじゃないかと思う
でも音楽って、ちゃんと金を掴んどいてさ
当てたんだったら、そこで3年後まで考えるようなストロークでやらないと
すぐにポシャッちゃうんだよね
だから、勢いがある内に金を掴めよな、お前ら
貧しいだけがロックじゃねえぞって感じがするよね
3年後の自分の音を想定して、今の音を出して行くことが
アーティストの一番いい形なんだよね」と話されてますが
実際に「虜」を作られるのに
「レコーディングで2500万くらいかけて
ニューヨークでボブとやって1500万って感じだったから
今の貨幣価値に直すと間違いなく億は超えてる」そうだし
「BIGGIG」もヒモ付きなしだったんですもんね
「そのコントロールをバンドがやっていたんだよね
自分達でリスクを実感して、ビジネスして行く
それが一番大事なことだと思う」と甲斐さん
「ニューヨーク三部作」の頃には
「別にレコード会社を潰そうとまでは思ってなかったけど(笑)
作り手ってのは、いくら興業的にコケて大批判されても
自分の中で最高に満足にやり遂げているって自負さえあれば
もう何ともないんだよね」とか
「ストレート・ライフ」を作られるために
「時間と金をかけすぎて、事務所が傾きかけた(笑)
でも、事務所潰すくらい苦しい所に行かないと
本当の喜びはないよね」と話されてます
そういえば、昔の音源や映像など
「未発表」のお宝(笑)を蔵出しされる際に
「音楽は文化じゃない、経済だ(笑)」とおっしゃってましたね(笑)
その「カオス」に収録されている「ミッドナイト・プラスワン」は
D.W.グリフィス監督の「イントレランス」に捧げられたものだけど
リリアン・ギッシュが揺りかごを揺する写真に「一目で魅せられてしまって
それ以来、ずっと部屋に飾ってあるんですよ
実に様々なイメージがほとばしり出て来るんです」と
「愛」と「寛容」にインスパイアされたことを明かされてますが
「ミュージシャンって、基本的にみんな映画好きなんだよ
ただ、僕は作品が素晴らしいということを前提にして
作った人間に興味が向いてしまうという傾向があるからね(笑)
グリフィスはさ[国民の創生]で大当たりして
その収益も何もかも注ぎ込んで[イントレランス]を作った
で、それが不幸にも興業的に失敗してしまって
その失敗が尾を引いて、その後の人生も不遇なものだった
言ってみれば[偉大なるヤマ師]だからね」と
同じ作り手としての姿勢に強く共感を覚えたとおっしゃってました
「ピンナップス・アイドル」に関するツッコミ(笑)や
グリフィス監督が今の映画界に及ぼした影響など掘り下げてみたいんだけど(笑)「カオス」に戻りますと…
アメリカのご友人が、エイズで亡くなられたり
ベトナム戦争の後遺症で、おそらく一生幽閉されることになったりと
「アルバムを作ってる時に起こった現実と
自分が書きたいと思ってたことが、心情的に重なった
僕にとっては相当生々しくて、リアルなアルバムになったね」と甲斐さん
「世の中は危なくなってる、これはもう間違いない訳で
環境汚染とかも明確にそうなんだけど
それをどういう風に受け止めてるかっていう
人の気持ちの方がずっと危なくなって来てる感じがするんだよね」
このアルバムの歌詞は、全て短期間で書かれたらしく
「曲を作るってことは、いつも自分の体の中で
核爆発してるようなものなんだよね
だから、自分で変化してるって意識しながら書いてることはまずないんだ
書き終わって、歌って、レコーディングして、ミックスして
出来上がったものを冷静に聴いてる時に
その変化に気づくわけ、いつもそう
レコーディングしてる最中に分析することって難しいんだよね」
…と、説明されてましたけど
セルフ・プロデュースをなさっているミュージシャンの方って
まず生身のご自分がいらして
そのご自身の中から沸き上がるものを作品にするソングライターになられ
シンガーとして、演奏者としてプレイされながら
アルバム制作者の仕事もこなされて
最後にリスナーとして分析なさる…といった
個人メドレーの選手の方や「ひとり舞台」の役者さんみたいな存在ですね
ともあれ「ある面で[命]を歌ってる
でも、そういう大仰な言い方じゃなくて、もっと生々しいところでね
ヤツは死んで、俺は生きてるっていう距離感でもあった」そうですが
「エゴイスト」を作られた際には
「[カオス]は家族というものが単位だった
そこから世界に放つという内容だったんだけど
今は、世界とか社会とか愛情とか
全てが脆くなっていて、切ないでしょう
だから今、はっきりした自意識が非常に必要だと思うのね
日本って、そういう強力な自意識は、とても嫌がられるけど
ノーはノーと言えなきゃダメだと思うし
ノーと言うからには何を明快に言うか
自分の意識をはっきりさせないと…
それが一番大事だと思う」と話され
「家族に事故があってね、その事故がこのアルバムに色んな形で影響している
一生涯背負い込んで行かなくちゃいけないというような出来事だった」と…
その「エゴイスト」と連動して行われた「AGライブ」について
甲斐さんいわく…あのライブは、練習しちゃダメだと思ったの
あれは「生」を撮らないと…俺が緊張しているということ
つまり「俺はもう武道館を10年やってるんだぜ」ということが
何なんだよっていう…そういうことを言う虚しさは俺が一番よく知ってる
俺達が生きてる今のこの90年って年はさ
生の自分の体験を同時期にメッセージして行かないとダメなんだよね
本格的な「アコギ・ライブ」の最初が
こんなにヒリヒリした動機付けに基づいておられたことにビックリです
「とにかく浮かれたバブルの混沌(カオス)を押しつけるな
僕の人生に誰も触れないでって感じでした」とか
かつて「(リスナーとしての)俺にとって、80年代というのは
かなり面白くない時代だったんだよね」という感慨を洩らされたことも含め
「濃密なディケイド」楽しませて頂きます♪