古田新太さんいわく…劇場というのは
わざわざお金を払って足を運んで観に行く所だから
やっぱり「ハレ」の場であるべきだと思う
オイラはそこで非日常を観たい
舞台でも映画でも、日常をどう描こうと
表現した時点でもう日常ではない訳で
本当の日常には決して勝てない
ふだん生きていく方が大変なんだから…
「いるいる」「あるある」と共感するより
「ないない」と逸脱している方を観たい
有り得ないものを観た時の方がドキドキするじゃない
共感は感情の揺れが小さいと思うんだよ
奧さんが3回も足を運んだのは、そういうことだったのかなあと…
もちろん、映画館で映画を観たり
甲斐さんや甲斐バンドのライブに参戦した後にも
気分が高揚したり、心が揺さぶられたりするんだけど
この舞台は、その内容…長塚圭史さんによれば
終末を予感させる3日間、そういう時に人間の心は流れが細かくて
瞬間瞬間に変わっていくと思うんです
何故?と考える時間もなくて、どんどん進んでいくだけ
冷たい絶望の波に呑まれるのを待つばかり
達観するか、慌てふためくか、恐れも憐れみも押し隠して生きるか
熱烈な情念は、むしろ絶望を引き寄せてしまう
それなら、現実ではなく幻想に、現在ではなく過去に、あるいは忘却に
身を浸して生きる他ないのか
と作られたご本人が「胸苦しい」とおっしゃる…だけに
劇場の外に出ると、その日常的な光景に違和感を覚えたというか
シュールレアリズム展を観た後に
少し世界が変わって見えるのと同じような感じがしたらしく
その感覚はソワレよりもマチネの時の方がより強かったそうだ
まあ、ボクが想像するに、真っ昼間にプラネタリウムに入って
暗闇で星空を眺めた後に外へ出たら
まだ陽が高くて「あれっ?」みたいな…?(笑)
ちなみに、長塚さんが「LAST SHOW」では登場人物に語らせた思いを
ツインズで語らせるのを止められたのもやはり
「僕が書いても、皆が持っている
家族の問題の方が大変でしょうと思ったから」だそうですが
奧さんは「イヤイヤ、こんな大変な家族は物語の中だけ(笑)」という思いと
「もしかしたら、明日にでもこんな話が本当に起こるかも知れない」という
漠然とした不安が同時に湧いたんだとか…
ともあれ、ハルキ以外の大変な家族はというと…
ハルキに「素直で良い子」と思わせていた娘・イラは
海辺の家の血縁者たちと生活する内に柔軟になり
変化に対応していくものの
死臭が漂う「おじいちゃん」と「こんな時に生まれて来た」双子の間で
何かが弾け飛んでしまうみたいだし(汗)
その双子を抱こうともしない年下の夫と先の見えない生活に
不安に押し潰されそうな妻・ユキも
ナゼかこの家の水や料理は安心して口にするし
何の問題もなさそうに会話や食事を進めていくトムは
この状況で、ブレずにフツーにしていられることこそが「ねじれ」ていて
そのフツーにすればするほど、頭のオカシイ人に見えるという
「真っ直ぐに間違える役」を演じられた中山祐一朗さんについて
吉田鋼太郎さんいわく…感情がないような役なのに
ちゃんと喜怒哀楽が伝わる
自然体というのとも違う独特のかわし方、あれは僕には出来ないね
ご自身の役・リュウゾウについては「汲み取りきれない」と話され
「穏やかな精神状態でいるように見えてるけど
内側では、とてつもないことを考えている
こういう堂々としていて、ちょっとオカシイ人を演じるのは大好き(笑)」
…と、おっしゃってるんですが
リュウゾウの目標は「人魚になること」らしく(苦笑)
毎日、トムが汲んで来てくれる「海水」
(実は、塩を入れたブルーハワイ)を飲むことで
その海水が身体の中を循環し、いつか泳げない自分が海に入れるようになる
そして「海に消えた」妹・エリコと
海に溶けた細胞同士になっても再会する
と、本気で?信じているんだとか…(汗)
もっとも、そのエリコの息子・タクトと話す場面では
「たとえ、着色料が入った水でも
俺が海水だと信じている限りはそうなんだ」という台詞があったそうで
そう思い込むことが生き甲斐…
この状況にあっての唯一の心の支え
なっているみたいです
「出て行く者はあっても、入って来ようとは思わない」
この海辺の町が嫌いで「母さんは街に行ったんだ」と言うタクトに
リュウゾウは「お前はそう思っていればいい」と答え
「外は危険なのに、ナンでみんな僕に散歩に行けって言うんだ?」と
開演してから何度もタクトが口にしていた台詞が登場し
「じゃあ、お前は今日、何をする?」
「お前はどうするんだ?」と問いかけるリュウゾウの言葉は
おそらく、この舞台をご覧になった方の大多数が
ご自分への問いかけとして受け取られんじゃないかと…?
「書かれている台詞の通りに喋ると90%くらい彼の気持ちが伝わり
そのシーン自体が成立するほど強い台詞を与えられています
ただ、文学性の高い台詞だから
お客様にちゃんと伝わるところにまで
しっかり持っていかなければ…」と吉田さん
ファンとしての贔屓目を差し引いても(笑)
しっかり受けとめた者がちゃんとおりますよ♪