嗚呼…風邪で朦朧とするアタマの隅から、なにか議論しあっている2人の声が聞こえてきた…何だろう…迷惑な話だ、眠りたいのに…
◇市民の力で買えるなら…
A/B 突然の刀購入話にビックラこいた!
A 降って湧いた話だけど、四百何十年ぶりのふるさと帰還ってんだろ?ロマンがあるよな!
B ロマンだけに3億2千万円も使うか?上越市の財政状況をみたら、ポンとそんな額出すなんてあり得んだろ。
A 違うよ。市民に広く募金や寄付をお願いしてるし、ふるさと納税でも呼びかけている。募金活動を目的とした市民会議も作られた。そこが行ったフォーラムも、「市民の力で購入しよう」とすごく盛り上がったな。
B でもこれまでいくら集まった?たしか1月中旬の市からの報告では、この4ヶ月で5百万円ちょぼちょぼだって聞いたよ。こんなペースでいつ買えるんだ?本気でやってるとは見えない。
A 市長は議会で「募金の金額の多寡ではない、市民からはお気持ちだけでもいただけたら」とおっしゃった。出したくても出せない年金生活の皆さんも多いよ。出せる人は出す、出せない人は気持ちを、それで良いじゃないか。
◇購入と募金の危ういバランス
B それじゃあ、集まらなかったら買わないの?
A いや、3月にある市議会で、平成29年度予算に刀購入費用総額3億2千万円が計上されることになる。新年度に入ったらすぐに購入するためにね。
B なんだ結局市の金、つまり俺らの税金で買うんじゃないか!デキレースだ!カタチだけ、市民の力で購入とかしながら、結局市が出すなんて。
A いや違うよ。先ず市の所有を確実にするために、どんっと総額払ってしまう必要があるからだよ。その後も、平成30年度いっぱいまで募金活動、寄付金募集、ふるさと納税個人版、それに加えて強力な助っ人企業版ふるさと納税が29年度から適用されることになっている。
B なるほど、いろんな手段で世間から金を集めようとしているのは分かった。しかし決定的な間違いがある。募金を募りながら、先ず市が出してしまったら、「なんだ、私が出すまでもないな、だってもう手に入っているんだから」と、だれも出す気にならないということだ。自分の懐痛める必要ないからね。
A そこは市民や企業、各種団体に、これからも強く寄付や募金、ふるさと納税をお願いするさ。そのために、市民の皆さんに刀の価値を分かっていただく会をもう数十回行って来たし、これからもやっていくと、市は言っている。
◇議会の対応は…
B 3月議会で諮られるが、議員のいまの趨勢を見れば、悔しいが、この刀購入の予算はすんなり通りそうだな。議会は存在意義あるのかね。市長に追随しているとしか見えん。
A さきの9月議会で共産党議員団4名以外が、募金活動団体への活動補助金10万円に賛成した。圧倒的多数が刀の購入に前向きなのが分かった。購入もすんなりいきそうで目出度いかぎり。
B たしかにそう見えるは見える。しかし、こうも考えられるのではないかと、ほんの少し希望を持っているんだ。
A へ、どんな希望だい?
B その9月の補助金は、市民が自ら募金を集めようとしていることに対して、「では頑張ってください、バックアップします」という性格の金で、その補正予算に賛同したからといって、3月議会での3億2千万円を圧倒的多数で認めるとは思わない。
A なぜ?同じ議員だぜ。
B 市民のなかのいわゆる購入反対派にも、「市の税金で買うのは反対、しかし市民の募金などで買えるなら賛成しても良い」という人が一定数いる。募金活動への10万円補正に賛成した議員の中にも、「市民の力で買えるなら、その募金活動に10万円つけても良い」と考え、賛成した議員が複数いるのではないかな。その議員たちが、今回どう行動するかだ。
A 市長に逆らわない議員が圧倒的だから、無理だね。第一、上越市で予算が否決されたことなんか、一度もない。多分これからも、ないね。
B たしかに議会では予算案を否決しないと、刀購入も止められない。数千の事業の予算案を一括採決するときに、言い方は悪いが、たかだか1本の刀購入に反対だからと言って、予算案全体を否認することは、めちゃくちゃハードルは高いし、まずあり得ない。
A 結局なし崩しさ。刀購入費用だけを予算案から外す動議をだすことも、戦術としてはあり得るが、極めて難しい。ムダな抵抗は、議会を、ひいては市政を混乱させるだけだ。
B いや、そうとも言えない。まだ手はある。
◇予算案否決可決しかできないのか…
A 市長や議員のリコールとか言うんじゃないだろうね。聞くところでは、税金で買うことに反対する電子署名板での人数がなかなか集まらないと言うじゃないか。リコールなんて、あり得ない。
B いや違うよ。予算案には反対せず、しかし刀の購入に一定の条件を付けることができる。付帯意見といって、予算は認めるが執行にあたって条件をつけるというものだ。
A 付帯意見は知っている。付帯決議もほぼ同義だ。しかし上越市議会ではとんと聞かないね。
B いやかつてあった。例えば、もう7年も前だが、西城町の附属小学校脇の市有地を民間に売却する提案があった。その土地は、文教地区にとってとても大切な場所だと市民はじめ大騒ぎになった。民間に売ったらすぐに商業ビルになるのは目に見えていたからね。そこで議会は、付帯決議をした。「売却方針は認めるが、民間には売らず、あくまで公共的な目的に即した場合に限る」というものだ。付帯決議は、執行部(行政)に対し法的拘束力はない。しかし無視はできない。結局この売却話は流れたね。
A では、この刀購入にどう付帯意見をつける?
B 購入には反対しないという前提になる。しかし条件付けをするのさ。例えば「購入のため先ず市が出すのは認めるが、その後全額を寄付金等でまかなうこと。集まらない場合は、所有しない」とかね。
A それはあり得んだろう!30年度までの2ケ年で3億2千万円なんて、無理さ!
B じゃあなぜ当初、市民の力で、なんて言ったのだ?始めから無理と思う寄付活動なんて偽善だろう…と言いたいが、その話は蒸し返しになるからしない。2年じゃ無理と…よかろう。それでは、「募金活動寄付活動などは2年に限定しない、集まるまで続けること」あるいは「しばらく続けること」とかね、付帯決議したらどうかな?
A 企業版ふるさと納税は国に2ケ年度内という条件をつけられている。
B では、それは抜けば良い。また、3億2千万円というからハードルが高い。例えば1億円なら何とか集められるんじゃないかとするならば、「1億円集まるまで購入しない」とか付けることもできる。
A 相手方もいることだし、購入を引き延ばしすることは難しい。
B たしかにそうかも。しかしそういった付帯決議の可能性を含めた議論を議会もすべきだし、市民もただ反対、ただ賛成を言うのではなく、どういうカタチなら、大方の市民が賛成できる「義」があるのか話し合っていくべきじゃないかな。
A 刀で市民が分断されたんじゃあシャレにもならないわな、確かに。これからも、話し合って行きますか。
B そうだね。
…やっと二人は黙ってくれた。