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VOiCE (54)

by KAZUKI

 

 

 

それから暫くは大学構内にもシュージたちのアパート界隈にも、ミカリの姿はなかった。彼女の壊れやすい心は、おババの説得で鎮められたのだろうか?珂怜には内緒で一度、スナック『ミカリ』を覗いてみる必要がある。シュージはそう思った。

『ミカリ』のスナック類メニューことに看板の印度カレーの仕込みなどは、ケンジの担当である。彼はミカリの幼馴染みということもあり、過去の飲食店でのバイト経験を買われて一年前から調理場を任されていた。顧客のほとんどは、階上の商社の社員である。時間帯により店内は満席状態がつづくが、そういった時間には数名のアルバイト契約者が用意されていた。詰まるところミカリが店長であり、ケンジが料理長ということだ。そしておババは、オーナーということになる。

その夕刻シュージが『ミカリ』に顔を出した時、店内には二十名ほどの客と女子学生のバイト二名がいた。しかし、ミカリの姿がない。気にかかってカウンター内のケンジに、それとなく尋ねる。すると彼は、渋い顔で頭を抱える仕種を見せた。

「あいつ。もう二週間も塞ぎ込んでいるんだ。この忙しい時間帯に、オレひとりに店を仕切らせてさぁ。どうなっちゃったんだろうな、ミカリの奴」

 

つづく