ハイボーラーの備忘録 -8ページ目

ハイボーラーの備忘録

呑むと記憶を無くすので

好きな作曲家を一人だけ挙げるとするならば、私はプーランクを挙げるでしょう。
彼のピアノ曲は、親しさにあふれ、ウィットに富み、しゃれていて華やか。
一方で内省的だったりアイロニーが感じられたり、たまに自嘲的な笑いまで聞こえてきたりします。
けれど、実はこの人は溢れんばかりの感情を覆い隠すために、ワザとそうしているのではないか?と思っております。
そう。「道化」です。
ハ長調の曲に代表される化粧っ気の無い素朴なメロディーの美しさを聞いていると、ふとそんな気がして。
短い曲が多いのですが、彼は多くを語る必要は無かったのでしょう。

★15の即興曲
 プーランク自身は歌曲の伴奏におけるピアノ書法が最高の成果である、と主張していますが、 自作のピアノ曲の中ではこの「即興曲」が一番のお気に入りだったそうです。全15曲。

・第7番 ハ長調
 曲は偽りの冷淡さで始まりますが、仮面は「きわめて表情豊か」な中間部で見捨てられます。 まさに道化。

・第13番 イ短調
 ビタースイート。悲しくも肉感的な曲で、素面で泣けてきます。

・第15番 ハ短調 「エディット・ピアフ讃」
 エディット・ピアフという偉大なシャンソン歌手の思い出に捧げられました。
 やるせないメロディーが印象的なこの曲は、表情豊かで親しみやすく、ピアノによるシャンソ ンと言えるでしょう。

タッキーノ(1966)    
ロジェ(1989)    
カザール(1995)    
Le sage(1998)  

★8つの夜想曲

・第1番 ハ長調
 非常に魅惑的なメロディーは、転調を重ねるたびに甘く切ない幸福感をもたらしてくれます。
 静かなコーダで曲が結ばれると、聴き手は心地良い安心感に包まれるでしょう。
 これは癒されます。

タッキーノ(1966)    
ロジェ(1989)
Le sage(1989)    
カザール(?)
   
・第4番 ハ短調「幻の舞踏会」
 舞踏会らしく3/4拍子です。しかし、浮き立つような気分は見られません。むしろ何やら寒々と した雰囲気が漂ってます。
 「自分をもう独りの自分が冷静に見つめてる…」
 まさにそんな曲です。
 何とも癒えない鬱な気分に浸れること間違いなしで、このジャンルの最右翼と言えそうです。

タッキーノ(1966)    
ロジェ(1989)    
Le sage(1998)    

★3つのノヴェレッテ

・第1番 ハ長調
 3部形式。
 素直で優しいメロディーに挟まれた中間部は気取りが無く、いわば「いじらしい」曲です。
 ところで、プーランクのハ長調の曲って何か似てる!などと思うのは私だけでしょうか?

タッキーノ(1966)    
ロジェ(1986)
カザール(1995)    
Le sage(1998)
   
・第3番 ホ短調
 マヌエル・デ・ファリャのバレエ「恋は魔術師」の主題による。
 これまた、夜の淋しさや孤独を正当化したような曲です。内省的な問答が繰り返されますが、 答えは夢の中…。

タッキーノ(1966)    
ロジェ(1986
 丹念なルバートと深い音を駆使して曲を表現しています。
カザール(1995)
Le sage(1998)    

★メランコリー
 プーランクって誰よ?の頃はまったのがこの曲です。
 色つきの夢みたいなもののなかを漂っているかのような感覚を味わえます。
 巧みな転調は万華鏡を覗くかのよう。ハ長調で主題が再現されると、もうメロメロ。
 しかし、この穏やかで優しいメロディーの裏には第二次世界大戦が影を落としているのです。
 プーランクのため息と言えそうなこの曲、実はエレジーなんです。

プレヴィン(1963)
 この人の演奏には独創性を感じます。
 即興性があるというかなんというか、流れが自然で好きです。
 と思ってたら、なるほど、もともとジャズもやる人だったんですね。
タッキーノ(1980)    
Le sage(1998)    
ロジェ(1998)
 甘~いメランコリーです。深い音がとても印象的。
カザール(?)    

★間奏曲 第2番 変ニ長調
 やさしくはかない主題が変容されていく様は、滅びゆくものの美しさ(夏の暗闇の中に最期の 輝きを残しながら消えて逝く線香花火のよう…)を感じずにはいられません。
 そして、そのやさしさは全然窮屈ではありません。何の打算も無い。
 ただ「薔薇色のため息」が幽かに香るのみです。

タッキーノ(1982)    
ロジェ(1989)
 絶妙。切なくなってきます。
Le sage(1998)    

★バディナージュ
 バディナージュ(冗談)には、プーランクの友人の詩が添えられています。
「グラスの中でオレンジエードは生ぬるくなり、8月の夜なら構わない…」。
正直な「やさしさ」を然り気なく包んだこの曲は、どこか浮遊した捉えどころの無さが魅力的で、耳を擽ります。

タッキーノ(1984)    
ロジェ(1998)    
Le sage(1998)    

★トッカータ(3つの小品 より第3曲) 
 プーランクにはまるきっかけとなった曲です。
 最初と最後の音のインパクトに、いよいよ弾きたくなり、初めて輸入楽譜を買った程です。
 ホロヴィッツのお気に入りで有名になった曲らしく、目の眩むようなヴィルトゥオジテの中  に、美しい抒情性が隠されています。
 アンコール・ピースとしての効果は絶大でしょう。弾きこなせるならば。
 私は当然のごとく酔っ払いな演奏になり、ろれつが回らなくて事件でした。

ホロヴィッツ(1932)
 なるほど凄まじい…。
 速さの限界に達している上、叙情的な部分ではさっと表情が変わります。
 古のヴィルトーソといった風情です。
プレヴィン(1963)
 他のピアニストには無い遊び心を感じてオシャレ☆
チェルカスキー(1963)    
タッキーノ(1980)    
ロジェ(1986)    
カザール(1995)    
Le sage(1998)