終戦後の幼少時から中学1年まで祖父母の世話になったという家庭事情で、祖父が現役時代の偉大さは祖母から聞かされてました。終戦後、ずっと体調不良の祖父はその中ででも、がんばって医師業に努めた3年間の苦行の時期がありました。診察室兼家族の寝室には、消毒薬の匂いがプンプンしてましたね。
祖父が亡くなったのは私が中2で父のもとへ行った数か月後…北九州から祖父母の居る徳島へ継母と共に駆けつけた日の事が鮮やかに蘇ります。
医療ルネサンスから
お尻を知る
痔の症状や治療について、診療指針の作成委員長を務めた
地域医療機能推進機構(JCHO)東京山手メディカルセンター副院長の山名哲郎氏(シリーズ5) 他 医師等に聞く。
(シリーズ 1~5)
痔はどんな病気か。
肛門とその周辺に起きる病気の総称で、代表的なもの
「痔核(いぼ痔)」「裂肛(切れ痔」「痔瘻(あな痔)」
原因は。& 患者の傾向は。
肛門は、お尻の穴から3㌢位奥行きがあり、
出口側半分の上皮は皮膚、腹側半分の上皮は直腸粘膜で、そのつなぎ目を歯状線と呼ぶ。
①上皮の下は毛細血管が集まっていて、これがうっ血して
上皮がいぼ状に腫れる。これが「痔核」。男女とも痔の約
半分を占める。
②硬い便が出る時に上皮が傷つき裂けるのが「裂肛」。
女性ホルモンなどの影響で便秘になりやすい人が多いため
女性は痔核の次に多い。勢いよく出る下痢によっても肛門
近くの皮膚が傷つき、裂けて起こる。
③下痢などが原因で歯状態のくぼみから菌が入り、腫れた後
にできた膿の管がお尻の周りの皮膚に貫通するのが
「痔瘻(ろう)(あな痔)」。男性は下痢をしやすいため多い
傾向に。
治療法は。
生活習慣を改善し、①便秘を予防する食生活。②長時間座り続けない。③腰回りを冷やさない。
症状の緩和に有効な座薬や塗り薬もある。
痔核は手で押し戻すのが煩わしくなったら、注射薬で硬くする「硬化療法」や、切除する根治手術をする。
慢性化して薬で改善しない裂肛は、肛門括約筋に小さな切れ目を入れて肛門を広げる手術をする。
痔ろうは自然に治るのが稀で、手術が必要なことが殆ど。
腫れが生じたら、まず応急処置で膿を出し、1,2か月して炎症が治まったら、膿の管部分を切除する手術を行う。
その際、肛門括約筋は出来る限り残し、便漏れなどの後遺症に繋がらないようにする。
気をつけることは。
野菜類や穀物を含め、栄養バランスの良い食事。椅子などに座り続けないよう適度に立ち上がる。
▲妊娠出産時に痔を経験する場合がある。一過性が多いが続
く場合は受診する。
▲高齢になり運動量が減るなどで便秘になりやすく痔が悪化
するなどあり、予防を心がける。
他の病気が隠れている?
便に血がつくときは、大腸がんの可能性もある。便潜血が確認されたら、必ず内視鏡などの精密検査を受ける。
クローン病や潰瘍性大腸炎によっても、痔の症状が出ることがある。これらには効果的な治療薬があるので、早めに医師に相談しよう。
シリーズ①から
亀田総合病院・消化器外科部長;高橋知子氏&
管理栄養士;中野かおる氏
便は、水と食物繊維、腸内細菌の死骸などでできている。適切な軟らかさの便を1回に150~200b㌘排泄するのが理想。穀類、野菜類をしっかり摂る。特に白米は水分も多く安定して含んでいる。
シリーズ②から 同じく高橋医師
肛門の出口近くが傷つく「裂肛(切れ痔)」などが治った後、肛門の皮膚がたるんでシワになる「皮垂(ひすい)」。
痔核と間違われやすい。皮垂の腫れには、原因となる行動の改善が必要。
皮垂の腫れは炎症によって起こるが、特に出産後は、直腸や膀胱、子宮を支えている骨盤底筋が緩むため、体の重さが全てお尻にかかる。①立っている時間が少し長くなる。
②よくない姿勢を取る。 ③何度もトイレに行く。など、
普段は負担にならないことでも腫れてしまう。
シリーズ③から
大腸がんは患者数が増加傾向で、がんによる死者数で2番目に多くなっている。早期にはほとんど自覚症状がないが、早く見つかれば予後が良く、便潜血検査や内視鏡検査が重要.「健康な人ほど病院から遠のきがちになる。多くの人が体の異変を見逃さず済むように呼びかけていきたい」
(栃木市・江田クリニック院長;江田 証氏)
シリーズ④から
直腸から入った菌による膿(うみ)が、肛門周辺の皮膚に達してできものとなり、その通り道がトンネルのように残る「痔瘻(あな痔)」。
消化管に慢性的な炎症が起こる難病「クローン病」が原因となるケースもある。
最初の異変は小学6年。肛門周辺が腫れ、下痢の頻度も増え始め徐々に症状が進んだ。中学3年になると生活に支障が出てきた。ひどい腹痛に悩まされ、しばしばトイレにこもった。学校を休むまいと耐えてきたが、肛門の腫れと痛みで、とうとう歩けなくなった。井上医師を紹介された。
「一目でクローン病を疑う所見で、これまで診た中で最もつらそうなお尻だった」
痔瘻のできものが両脚の付け根付近2か所に出来て真っ赤に腫れ、肛門は皮膚がたるんでシワになる「皮垂」がむくんでボコボコになっていた。クローン病に特徴的な病変だった。
膿が出やすいよう手術をし、クローン病の薬で腸の炎症を落ち着かせた。2回目の手術後、痔瘻は治まった状態を維持している。
クローン病にも痔瘻にもなかなか気づかれない患者は一定数いるとみられる「こうした患者を早く治療に結びつけるためにも、講演などを通じて啓発していきたい」
(愛知県豊明市・藤田医科大病院小児外科;井上幹大氏)
(2024・6 おしりを知る1~5シリーズ から)
もし心当たりのある方は初期の内に恥ずかしがらずに
診てもらいましょうね! 家族にも相談しましょう。