皆様よ~くご存知の松下幸之助氏
2017年4月撮影 横浜・金沢八景
新型コロナ
”アビガン”
新型コロナウイルスの治療薬として期待される「アビガン」
厚生労働省;鈴木康裕医務技監
は慎重。「明確な副作用がある。効果もはっきりしていない」
医務技官 厚生労働省で、次官、厚生労働審議官に次ぐ
次官級のポスト。約300人いる医師免許や歯科医師免許を
有する「医系技官」のトップ。2017年7月に塩崎恭久厚労相が主導して創設し、保険局長だった鈴木康裕氏が初代医務技監に就いた。
日本の製薬会社「富士フイルム富山化学」(東京都)が製造した新型インフルエンザ治療薬「アビガン」に今、世界の注目が集まっている。
中国は臨床試験で新型コロナウイルスへの有効性を確認したと発表。50を超える国が日本にアビガンの提供を求めている。
安倍首相はアビガンの国際的な臨床研究拡大や治験開始を表明した(3・28)
ただ、アビガンは動物実験で胎児に奇形が生じる副作用
が確認されている。かつて胃腸薬などとして市販されたサリドマイド
は、妊娠中の女性が飲んで胎児の奇形につながった。
数々の薬害が苦い記憶として刻み込まれている厚労省では、医師免許などを持つ医系技官を中心に慎重論が根強い。
アビガンチームーーー。
厚労省の懸念をよそに3月下旬、経済産業省で、約10人のチームが発足した。2月から3人程で活動してきたが、官邸の指示で拡大した。
チームは中国に頼るアビガンの原料を国内で調達するため、2017年に休止した新潟県糸魚川市の工場に働きかけ、5月から生産を再開することが決まった。
「観察研究の仕組みのもと、希望する患者への使用を出来る限り拡大していく」(4・7 安倍首相)
先走る官邸や経産省に医系技官 「国際的なお墨付きもない中国のデータは信用できない。医学的なエビデンス(根拠)をしっかり積み上げる必要がある」
加藤厚生労働相も「効能、効果が分からない薬だということを認識しないといけない」とくぎを刺す。
「政治主導ばかり優先して科学的根拠をないがしろにすると判断はゆがむ」
前例のない新型コロナウイルス感染拡大を前に、かつてなく政治の力が問われている。
(2020・4・9 「政治の現場」から抜粋転記)
人類生態学者
ジャレド・ダイアモンド氏(82)に聞く
米カリフォルニア大学ロサンゼルス校地理学教授。
生理学を究めつつ、趣味の鳥の観察でニューギニア島に
通ううちに人類生態学に興味を持ち、転身。
1997年刊の著書「銃・病原菌・鉄」でピュリツァー賞を
得る。
主著に「若い読者のための第三のチンパンジー」「文明崩壊」など。近著 「危機と人類」
スペイン風邪
スペイン風邪は第1次大戦末の1918年から翌年に流行し、致死率は2㌫台。新型コロナの致死率も2㌫台と見なしているが、感染規模は拡大するだろう。グローバル化で現代人は国を超えて広く旅をしている。また1世紀前に比べ世界の総人口は4倍。死者はスペイン風邪より増える恐れがある。
新型コロナがいつまで続くか予測は難しい。通常、感染には波があり、
今は第1波。それを乗り切った人々が戸外に出て、人々と接触を再開する中で
第2波が起こる。波が幾重になるか分からないが、一つの波が半年続くとすれば、流行は1年以上、2年続くかもしれない。
新型コロナは中国湖北省武漢市が感染源
歴史的に見て、私たちの知る大抵の疫病は野生動物、あるいは家畜に寄生したウイルスが人間に感染し発症したもの。
天然痘は主にラクダ、
結核やはしかは主に家畜に由来する。
新型コロナの発生は昨年末、武漢市の野生動物を扱う市場だった。
2002年のSARS(重症急性呼吸器症候群)も発生源は中国の野生動物市場。コウモリに宿ったウイルスが市場で食用に売られたハクビシンを経て人間に感染したのは間違いない。中国当局は02年に野生動物市場を閉鎖すべきだった。閉鎖しなかったことが今の事態を招いた。
今回の疫病発生を受けて野生動物市場は閉鎖された。だが、まだ不十分。食用とは別に、
生薬の材料として野生動物の取引が横行している。座視すれば、再び中国で疫病が発生する。中国当局は生薬絡みの感染経路を絶つべき。
天然痘といえば
16世紀にスペインの探検家ピサロが約170人の兵で
8万の兵を擁する南米のインカ帝国を征服した史実を想起する。
鉄則のスペイン兵は
こん棒のインカ兵に武器で勝った。それ以上に、
免疫のあるスペイン兵が、
免疫のないインカ兵に感染して病を起こし、おそらくは半数を死に至らしめた。思いもよらない生物兵器だった。
「危機と人類」で 21世紀の四つの脅威を挙げている
第一は核の脅威。
日本は1945年の被爆体験に加え、中国と北朝鮮という核を持つ隣国がある。
核を持つ二つの国が敵対する場合、相手の報復を封じ得ると確信すれば、核攻撃を仕掛ける恐れはある。より可能性が高いのはテロリストが北朝鮮やパキスタンなどから核を入手する事。
2001年の米同時テロに際し、犯人らは核の入手を試みていた。
更に懸念すべきはテロリストが放射線治療など病院で使われる放射性物質を入手し、放射能爆弾を製造する事態。
第二は気候変動。
短期的地域的な寒冷化はあるが、長期的総体的に地球は温暖化している。氷山が解けて海面が上昇し、国土の大半が低地のバングラデシュなど存亡の危機に直面している国がある。
第三は資源の枯渇。
石油・天然ガスなどエネルギー資源は無論だが、再生可能な資源の魚介類、木材、表土、真水も乱獲や乱開発で減少、衰弱している。資源を消費する世界人口は今、1900年迄に生存した全人類の総和よりも多いとの学説もある。昔に比べて1人当たりの資源消費も増えている。資源の再生は難しくなっている。
第四は
先進諸国と
それ以外の国々との経済格差。
先進諸国の計12億人の生活水準の平均値は、残る
65億人の30倍以上。この不平等は先進諸国にとって脅威でもある。
豊かさを求める移民の大量流入はその一つ。また、先進諸国に対する不満が全く意図しない形で表れることもある。中国発の新型コロナが米欧で猛威を振るっている現象にそうした不満の影を見てしまう。
四つの脅威は喫緊の課題で、今世紀半ばまでに解決する必要がある。
人類の直面する脅威が地球に衝突する大惑星であるのであれば、人類は対処できない。しかし、地球の最大の脅威は人類です。四つの脅威は全て人間の作為です。人類が本気になれば解決できるはずです。
環境保護活動に長年取り組んできた。石油大手など大企業は敵だった。ところが、この15年来、資源に限りがあることに正対し、自然環境に配慮する大企業が現れてきた。米国で言えば、石油大手のシェブロンや小売り大手のウォルマートなど。危機を危機と認める誠実さは、克服に向かう一歩。
私は今、人類が脅威の排除に成功する確率を52㌫、
失敗する確率を48㌫とみなしている。慎重な楽観主義者であるゆえんです。
(2020・4・10 読売新聞 解説 から転記)
♡♡♡ ありがとうございました ♡♡♡