最近の芥川賞受賞作のパターンとして、細身で清楚な美人作家が、ギャップのあるサイコホラー小説を書くのが流行っているのか。そんな印象を受けた作品です。

 

最初の数ページを読み始めたときは「むらさきのスカートの女」「ピクニック」の今村夏子の作風に似ていると思った。しかし今村作品がどこかファンタジックで時代も地域もあいまい、そのぶんエグさが半端なく展開されるのに比べ、本作はずっと写実的だ。そこそこの規模を持つパッケージ会社の一支店、虚弱で家庭的で皆の庇護を受ける女子社員、そのカバーに入る仕事が出来る強気の女子社員、とりあえずモテる立ち位置だが醒めてる若手男性社員、情報通のパートさん、年配社員に支店長…の小さい世界で、表面上は和やかに過ごしながら行われる嫌がらせ。これは大人のイジメ小説か。しかしいじめられる側にも十分に理由がある…というエピソードがリアルに綴られて行く。

“いじめられる側にも理由がある”は今どき禁句だが、小説は最後の表現の自由の場なのだろう。世の中の勧善懲悪では割り切れない現実はそこここにあるのだということを小説が教えてくれる。

最近の芥川賞にはハッピーエンドが少なく、この小説も、ストーリー展開の色濃さに引き込まれるものの、(後味が悪い)という読後感でした。

二作目、三作目もブラック度数をパワーアップしていくんだろうな。

 

書評によれば直木賞はまだ希望が持てる内容のようなので、間を置かず読んでみたいと思います。