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仔猫のちま ありがとうが一杯 第一章 絵本ver.1.1完成 (仮)
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仔猫のちま ありがとうが一杯 text版 完結
第二章 森は暗いけど明るい
ゴローリゴロゴロ ガタンゴトン
ゴローリゴロゴロ ガタンゴトン
ラルクおばあさんと別れてから、ちまはさらに森の奥へ進んで行きます。
気分が変わると景色の見え方が変わります。
あ、あそこに白い花が咲いてるな、あっちには赤い小さな花。
さっきまで気がつかなかったけど、森にはきれいなものや可愛いものがたくさんあるな。ウフフフ、アハハハ。
自然と笑顔になり、笑い声も出てきます。
ちまが進む細い道にはキラキラと木漏れ日が落ち、まるでちまの進む方向を教えてくれているようです。
わあ、キラキラだ。風が吹いたり木が揺れたりするともっとキラキラになるんだな。
ボクはもう、ずっとこのキラキラの下を歩いて行こう!

ちまは楽しくなりスキップしてしまいました。
ガタタン、ゴットン
ああ、いけない。スキップしたら荷車が傾いちゃうよ。失敗、失敗。
失敗したちまですが、なぜか顔はニコニコと笑っています。
そんな時、キラキラの奥から、なにかがすぅーっと飛んで近づいて来ました。
「やあ仔猫ちゃん、こんにちは」
「こ、こんにちは」

ちょっと前までニコニコしていたちまですが、途端に緊張してしまいます。
「オイラはとんぼのトム。キミはこの辺ではあまり見かけない顔だけど、何をしてるんだい?」
「ボクはちまです。パンを売りに来ました」
「ふーん、そうなの、、」
トンボのトムは荷台の上のパンを眺めています。
トンボさん、青や緑に光っててキレイだな。目も大きいし、透明な羽でスイスイ飛んでるよ。
ちまは初めて見るトンボの姿に目を輝かせました。
「パン屋さん、パンを売りに来たのなら、もっと宣伝しなきゃ」
「せんでん?」
ちまは意味が良く判らず、首をかしげます。
「そうさ、宣伝さ。宣伝しなきゃダメに決まってる」
ちまはもっと大きく首をかしげてしまいました。
「キミはどこから来たの?」
「町から来ました」
「誰?」
「クマのパン屋です」
「何を積んでるの?」
「おいしいパンがたくさんあります」
「そう、それ全部続けて言ってみて」
「え、、えーと、町から来ました、クマのパン屋です、おいしいパンがたくさんあります」
「そうだよ、それが宣伝だよ。それを大きな声で言いながら歩かなきゃ」

「いや、そ、それはちょっと恥ずかしいです…」
「はぁー、、キミは何を言ってるんだい?」
トムは緑の目をクリクリ動かしながら、ちょっと呆れた様子でちまを見ます。
「森にパン屋さんが来てるなんて知ったら、みんな喜ぶよ。オイラちょっと先回りして皆に知らせておくから」
トンボのトムはいったんキラキラの中へすぅーっと飛んで行きましたが、くるっと向きを変えて戻って来ました。
「いいかい?宣伝だよ、大きな声で宣伝しながら歩くんだよ、いいね?じゃ
またね、バイバイ!」
「あ、トムさん、教えてくれてありがとう」
トムは念を押すようにそう言うと、今度こそキラキラの中に消えて行きました。
さあ、困ったぞ。ボクに宣伝なんて出来ないよ。大きな声を出しながら歩くなんて、ムリムリ、絶対ムリ!
ちまは首を横に振りながら歩いていましたが、一度立ち止まって深呼吸しました。涼しい風が顔にあたり、花のいい匂いがして来ます。

ちまはハッと気が付きました。思い切って森に入った時、やはり同じようにいい匂いがしていたことを。
そういえば、、少し怖かったけど森に入ることができたんだ。それからおばあちゃんと話も出来たし、パンも売れた。ハサミも使えたし、木苺もたくさん摘めたっけ。
初めて森へ来てからたくさんあった楽しい出来事を思い出すと、少し勇気が湧いてきました。
よし、やってみよう。宣伝してみよう。
「え、えー森から来た、、いや、町から来たクマのパン屋、、、」
ぶつぶつと小さな声でつぶやきながら歩いていると、道端から何かがぴょんと飛び出してきました。
「ストップよ!ストップなのよ!」

ちまはまたしても飛び跳ねそうになりましたが、なんとかこらえます。
目の前には頭に赤いリボンをつけた仔狐がいて、通せんぼをするように両手を広げています。
「トンボのトム君から聞いたんだけど、パン屋さんが来ているらしいの。アナタ何か知ってて?」
「ボ、ボクは、その、町から来たクマのパン屋で、、あの、それで、、」
「へぇー、あれあれあれーーーっ、これはひょっとして、、」
仔狐は、ぐるっと荷車の周りを回りました。
「アナタ!パン屋さんね。アナタがパン屋さんなのね!キャー」
仔狐はちまに抱き着くと、顔をスリスリして来ます。
「らんらんらん、ずんちゃちゃちゃ、るんるんるん!!」
仔狐はちまを抱いたまま、くるくる回ったり飛び跳ねたりしながら踊り始めました。
「さぁさぁ、アナタも踊りなさい!踊るのよ!!」

「にゃ、にゃーー」
ちまはとうとう悲鳴をあげました。すると仔狐は踊るのをやめて、
「あら、アナタ、踊れないのかしら?」
「はい、ボクは、そ、そういうのは良く知らなくて、、」
ちまはゲホゲホと咳き込みながら、やっとの思いでそう答えます。
「踊りを知らない子供がいるなんて!そんな子は森にいないわよ」
「そ、それからボクは子供じゃなくて、もう大人です」
「え?アナタ、私よりずいぶん小さくてよ?」
「カ、カラダは小さいけど大人なんです」
「そうかしら? それにアナタ、女の子なのにどうしてボクって言うの?」
そうなのです。男の子のような話し方をしますが、ちまは女の子なのです。
「それはちょっとボクにもわからくて、、おかしいですか?」
仔狐は一瞬考えると、
「ううん。ちっともおかしくないわ。ちょっと不思議な気がしただけよ」
ちまはクマの親方としか話しをしたことが無いので、自然と男の子のような話し方になったのです。
「そういえば自己紹介をしていなかったわね。私はマリヤ、アナタは?」
「ボクはちまです。町から来たクマのパン屋です」
マリヤはドレスの端をつまむような仕草をして、軽くお辞儀をしました。
「ちょっとマリヤ、一人で急に家を飛び出して、いったい何をしているの?」
「あ、お母さん、パン屋さんよ。パン屋さんが森に来たのよ。この子はパン屋さんで名前はちまちゃん。それで今日から私の妹になったのよ」

狐のお母さんは眉間に指をあて、やれやれと首を振りました。
「マリヤったら。ついこのあいだも野兎のリルちゃんを妹にしたばかりじゃないの」
「いいのよ、妹はたくさんいたほうが楽しいわ。」
「ごめんなさいね、ちまちゃん。この子はいつもこんな調子なのよ」
狐のお母さんは申し訳なさそうにちまに言いました。
妹?ボクのこと?何?なんで?
ちまはあまりの急展開にまったく理解が追いつきません。
「見て。ちまちゃんと私はそっくりでしょ。身体は明るい茶色で尻尾の先とおなかと手足の先が白いの。おそろいだわ」
ちまは自分とマリヤの身体を見比べました。たしかにおそろいに見えます。
「それよりお母さん、パンよ。美味しそうなパンがたくさんあるわ。何か買うのよ!」
「そうねぇ、、今日の晩御飯はシチューだから、なにかシチューに合うパンを選びましょう」
「シチュー!今日はシチューなの!? やったー、シチューよ!」
マリヤはその場でぴょんと跳ねると、バレリーナのようにクルクル廻ります。

「シチュー、シチュー、シチューに合うパン、らんらららん」
マリヤは歌を唄いながら、おかしな振り付けで踊っています。
ちまはそれを見て、ぷぷっと笑いそうになりましたが、ほっぺたにチカラを入れて我慢しました。
すると、マリヤは踊るのをやめてちまに近づいてきます。
「あれ?ちまちゃん、アナタ、笑いたいの我慢してない?」
「そんなことありません」
ちまは口をすぼめてやっと答えます。
マリヤはじとっとした目でちまの顔を覗き込むと、
「そうかしら?どう見ても我慢してるようだけど」
えい、えい、えいとマリヤがちまのほっぺたをいじり始めました。つねったり揉んだりムニュムニュしたり、やりたい放題です。
「ほらほら、どう、これでどう?そんなお面をかぶったような顔をしちゃダメ!」

とうとうちまは、ぷはーっと笑ってしまいました。
「あははは、笑ったわね。ちまちゃん、笑いたいときは笑うのよ。我慢なんてしちゃダメよ。あはははは」
「あはは、あははは」
ちまも一緒に笑います。
狐のお母さんも口に手をあててクスクス笑っています。

「子供は誰だって、可愛い花を見たら笑いたくなるし、キラキラした道を歩く時はスキップしたくなるのよ。アナタだってそうにちがいないわ」
マリヤはビシッとちまを指差し、そう言いました。
その瞬間、ちまの身体はピキッと固まり動けなくなります。顔がかぁーっと熱くなり胸もドキドキしてしまいます。
「…ひょ、ひょっとして、見てた?」
「え? 何を? なんのことかしら?」
一瞬、二人の間に沈黙が訪れました。
「はははは、図星ね!大当たりなのよ!! 」
マリヤは腰に手をあて、胸をそらして勝ち誇っています。
「町の人達はみんなお面をかぶったような顔をしているわ。ちまちゃん、アナタは私の妹になったんだから、そんなのはダメ。お面をかぶったような顔をしてちゃいけないのよ」
ちまはどうやら、マリヤの妹から逃れられない運命のようです。
「町は明るいけど暗いの。でも、森は暗いけど明るいのよ」

「森は暗いけど、、明るい、、ですか、、」
マリヤはとても不思議なことを言ってるとちまは思いました。
「ちょっとマリヤ、パンは選ばなくていいのかしら?」
お母さんの言葉に二人とも我に返りました。
「そうよ、パンを選ぶんだったわ。シチューに合いそうなパン、、」
うーん困った困ったとマリヤは言いながらニコニコしています。ちっとも困ったようには見えません。
ちまもシチューが大好きです。クマの親方がたまに作ってくれるシチューには大きな野菜がたくさん入っていて、そこに少し固めのライ麦パンをひたして食べるのです。

「シチューにはライ麦パンが良く合います。シチューにひたして食べると美味しいですよ」
ちまの言葉に、マリヤの耳と尻尾がピンと立ちました。
「お母さん、ライ麦パンよ。ライ麦パンで決定よ」
「はいはい。それじゃちまちゃん、ライ麦パンをいただくわ」
「はい。ライ麦パンは銅貨三枚です」
ちまは狐のお母さんにライ麦パンを渡しました。
「どうもありがとう。ちまちゃん」
ちまは銅貨を受け取ると
「ありがとうございます」
大きな声でしっかりお辞儀をしながら言いました。
「ちまちゃん、ありがとう。次は私の家に遊びに来てね。あそこが私の家よ」
マリヤが指さす方を見ると、たくさんの可愛い花に囲まれた家が見えました。

「あのお花は私が育てているの。可愛いでしょ」
マリヤが少し得意そうな顔をして言いました。
ああ、あんなお家に住めたら楽しそうだな。気持ちが明るくなるな。
そう思った時、ちまは気がつきました。
そうか、森は暗いけど明るいんだ。ボクは今日、森でたくさん明るくなれたのに、どうしてマリヤちゃんの言うことがわからなかったんだろう。
「ほら、ね。森は暗いけど明るいでしょ?」
「本当だ。森は暗いけど明るいです」
二人は顔を見合わせるとニッコリ笑いました。
「さぁ、マリヤ、そろそろ帰るわよ」
「そうね、早く帰ってシチューを食べなくちゃだわ」
「まだ夜には早いわよ。その前にお母さんのお手伝いをしてね」
「わかったわ。妹のちまちゃんが頑張っているのだから、お姉ちゃんの私も負けていられないわ。ちまちゃん、今日はありがとう」
マリヤとお母さんは二人で手をふりながら帰っていきました。
「マリヤちゃん、お母さん、どうもありがとう」
ちまも大きく手をふって見送りました。

マリヤちゃんはまたしてもへんな振りで踊りながら帰っていきます。
ちまは今度こそ我慢せずに、ぷぷっと笑うことが出来ました。
第三章に続く
やっと第三章に進めます。
絵本化作業の折り返し地点に到達しました。
絵も文章も少しづつ手直ししながら完成させたいと思います。
でも年内完成はとても無理。
いやはや、なんという壮大な計画に着手してしまったんだ>自分