
コタツでお雑煮を食べる
「あけましておめでとう、ちま」
「あけましておめでとうございます、親方」
今日は1月1日、ちまにとって初めてのお正月です。
「今、お雑煮の鍋を持ってくるから、ちまはコタツに入ってなさい」
「はい、親方」
ここは親方の部屋。親方の部屋にはコタツがあって、ちまは親方の部屋で過ごすことが多いのです。
座布団が3枚重なっている方がちまの席。ちまは小さくて座布団3枚ないと顔がコタツの上に出ないので、親方が座布団を増やしてくれました。
わぁ、いろんなお料理があるな。赤や黄色、ピンク、黒、オレンジ、綺麗だし見てるだけで楽しいな。
「さぁ、ちま、食べようか」
親方がなにやら鍋を持ってきて脇にある火鉢に乗せました。
「はい!」
ちまは初めて見る綺麗なおせち料理にドキドキワクワクしています。
親方が卓の上にある小さな火鉢に網を乗せ、その上に何か白くて平べったいモノを乗せました。
「親方、それは何?」
「これはお餅だよ」
「何をしてるの?」
「お餅を焼いてるんだよ」
「お餅は焼いて食べるの?」
「そうだよ。焼くと柔らかくなるんだ」
ちまはお餅を指でつついてみました。
「固い、固いですよ」
「しばらくすると柔らかくなるんだよ」

ちまは卓の上のあっちこっちをキョロキョロ眺めています。
「親方、このピンクと白いのは何?」
「それは蒲鉾」
「この黒いのは?」
「それは黒豆」
「この黄色いのは?」
「それは栗きんとん」
ちまはとうとう座布団3枚の上に立ち上がりました。
「これ、この丸まってとんがってるオレンジの生き物みたいなのは?」
「ん? それは海老だな」
「えび?」
「うむ。それは海にいる生き物だよ」
「うみ? うみって何?」
「ああ、ちまは海を見たこと無かったな」
「はい、それはどんな場所?」
「川が行き着くと海になるんだよ」
「えー、それじゃ水があふれて大変なことになるでしょ」
「あふれないんだよ。海はそりゃぁもう大きな水たまりだからね」
「えーーーー、だって川にはたくさんの水が流れているのに?」
ちまには海の大きさがまったく想像できません。
「暖かくなったら、海を見に行こうか」
「はい、ボクは海を見てみたいです!」
その後もちまの質問は止まりません。これは何、あれは何?と料理を食べるのを忘れて親方に質問を続けています。
そうこうしているうちに、火鉢の上のお餅がプーっとふくれました。
「あ、親方、お餅が大変、プーってふくれちゃってます!」
「ああ、焼けたな」
親方は箸でお餅を一つ摘まむと、ちまのお椀に入れました。親方のお椀には二つ。
それから鍋に入っていた熱々のスープをお椀に注ぎます。
「これはお雑煮だよ、熱いから気をつけて食べるんだよ」
「はい、いただきます!」

まずは、このスープから飲んでみて、、ああ、美味しい、いつものスープと全然ちがう味がする。
次はこのお餅を、、
ちまは箸でお餅をつついてみました。
お、なんかプニュプニュして柔らかいな。ちょっと引っ張ってみよう、、
あれ?お餅が箸にくっついて離れないな。
あれ、あれ、どうしよう、お餅がどんどん伸びて来るよ。
「親方、どうしよう、お餅が箸からはなれませんよ!」
お餅はどんどん伸びて、とうとうちまの顔の前まで来てしまいました。
「親方、これ、どうしよう」
親方はププッと笑うと、
「そのまま食べてごらんよ」
ちまは伸びきったお餅を食べてみました。
「美味しい! 美味しいですよ。」
お餅にはスープの味がしみ込んでいて、暖かくて柔らかくてとても美味しく感じられました。
「そうか、そりゃ良かった」
親方は笑いながら、また二つお餅を焼いています。
ちまはチラチラとお餅を気にしながらおせち料理を食べ始めました。
いつまたお餅がプーっとふくれるか、気になって仕方ないのです。
あ、栗きんとんって甘いんだ、おいしい。
これはかまぼこって言ってたな、お醤油つけて食べるのか。
次から次へとちまはおせち料理を食べていきます。
どれを食べても美味しくて、自然にニコニコしてしまいます。
すべての種類を食べ終わったところで、ちまの箸がピタッと止まりました。
なにやらしかめ面をして悩んでいるようです。
「ん?どうしたんだ、ちま」
親方が声をかけます。
「そろそろお腹一杯になりそうで、、、、最後にどれを食べるか、、 どれも美味しくて」
「なんだ、そんなことか。明日また食べるといいさ」
「え?明日も食べられるの?」
「おせち料理はお正月中食べられるんだよ」
「そうなの!やったー! お餅も食べられる?」
「ああ、もちろん。でもその勢いじゃ明日で品切れかもな」
二人は顔を見合わせて笑います。
ちょうどその時、お餅がプーっとふくれました。
「ちまはどうする?お雑煮か?おせちか?」
「ボクは栗きんとんをもう一つ食べます」
「じゃぁお餅は私が食べるよ」
「はい。でもまだ明日の分もありますよね?」
「ああ、お餅はまだまだたくさんあるし、お雑煮以外の食べ方がたくさんあるから試してみるといい」
「それは楽しみ! ボク、明日はお餅三つ食べますよ!」
「ああ、それじゃ私は五つ食べよう」
「あはははは」
おばあちゃんにご挨拶
「パンが焼けたよ、ちま」
「親方、ありがとう」
親方が焼きたてのパンを二つと木苺のジャムの瓶を二つカゴに入れました。
ちまはこれから森のマリヤちゃんに会いに行きますが、その前にラルクおばあちゃんの家に寄って挨拶をする予定です。
「それじゃ行ってきますね」
「ああ、暖かい格好をして行くんだよ」
「大丈夫ですよ、ほら」
ちまはその場でくるっと回ってみせます。
「羊のお姉さんが編んでくれたセーターと半ズボン、マフラーまであるんだから」

「そうだな、それなら大丈夫そうだ」
「ボクはもう小さい子供じゃないんだから、そんなに心配しないで」
「う、うむ。そうか」
「そうですよ」
いや、どこからどう見ても小さい子供だろ!と親方は思いましたが、黙っておくことにしました。
「暗くなる前に帰って来るんだよ」
「はーい」
ちまは大きく手を振って森へ向かう道を歩いていきました。
さて、ちまが出かけているうちに一仕事するかな。
親方は大工道具を持って物置に入っていきました。
カサカサ ザクザク
ザクザク カサカサ
ちまは森の道を進んでいきます。
わざと枯れ葉の上を選んで歩いているようです。
うふふふ。カサカサザクザク、枯れ葉を踏んで歩くのは楽しいな。
もう少しでおばあちゃんの家に着くぞ。おばあちゃん元気かな?

ああ、今日はいいお天気。毎日こんな日ばかりならいいのに。
アライグマのラルクおばあちゃんは、いつものように窓際の長椅子に座って空を見上げました。
青い空、白い雲、お日様は明るくてポカポカと暖かい日差しを届けてくれています。
「おばあちゃーーん、ラルクおばあちゃーーん」
どこからか聞きなれた声が聞こえて来ます。
あら、ちまちゃんの声だわ。
可愛い仔猫ちゃんが来てくれたみたい。
声のする方を見ると、ちまが手を振って近づいてくるのが見えました。
「ちまちゃん、あけましておめでとう」
「あけましておめでとうございます、あばあちゃん」
ちまがペコリとお辞儀しました。
まぁ可愛い。毛糸の服を着ているのね。
「ちまちゃん、暖かそうな服着てるわね」
「はい。羊のお姉さんが編んでくれたんです」
ちまは嬉しそうにニコニコ笑っています。
「おばあちゃん、コレ、親方が焼いてくれたパンと木苺のジャムです」
「あら、ご丁寧にどうもありがとう。お部屋でお茶でもどうかしら?」
「そうしたいんですけど、ボク、これからマリヤちゃんの家に行くんです」
「狐のマリヤちゃんかしら?」
「はい。遅くなると、、マリヤちゃんに怒られちゃうから、、」
「ふふふ。そうね。じゃ、少しだけ待ってて」
おばあちゃんは部屋の奥に行って何か探して戻って来ました。
「はい、コレ、かるたよ」

「かるた?」
「私の娘とマリヤちゃんのお母さんは友達だったの。よく二人でこのかるたで遊んでいたわ」
おばあちゃんはちまにかるたを渡してくれました。
「それからコレ、自家製のハチミツ。マリヤちゃんにも差し上げて」
「おばあちゃん、ハチミツも作れるの?」
「ミツバチを飼っているのよ」
「すごいや!ありがとう、おばあちゃん」
「どういたしまして。また来てね、ちまちゃん」
「はい、それじゃ、さようなら」
ちまはハチミツの瓶二つとかるたをカゴに入れて歩き始めました。
振り返って見ると、おばあちゃんが小さく手を振ってくれています。
「ありがとう、おばあちゃん。また来るねーー」
ちまはブンブン大きく手を振って返しました。
かるた取りをする
急がなきゃ 早く行かなきゃ。
マリヤちゃん待たせちゃってるから。
ラルクおばあちゃんに挨拶した後、ちまはマリヤちゃんの家に向かっています。
手に持っているカゴには焼きたてのパンやジャムの瓶が入っているので、走ることは出来ません。
それでもできるだけ急いで歩いています。
「ちまちゃーん」
あ、マリヤちゃん、おうちの外で飛び跳ねてる!
マリヤちゃんが家の外に出てぴょんぴょん飛び跳ねているのが見えます。
「マリヤちゃーーん」
ちまが大きな声で返事をすると、マリヤちゃんはいっそう大きく飛び跳ねました。
「あけましておめでとう、ちまちゃん」
「あけましておめでとう、マリヤちゃん」
ふたりは挨拶をすると、顔を見合わせてにっこりしました。
「あけましておめでとう、ちまちゃん。今年もうちの娘と仲良くしてね」
隣でマリヤちゃんのお母さんもニコニコしています。
「あけましておめでとうございます。マリヤちゃんのお母さん」
「さぁ、ちまちゃん、早くおうちに入るのよ!」
ちまはマリヤちゃんに引っ張られて家に入って行きました。
あれ?マリヤちゃん、赤い服着ててサンタさんみたいだな。
「ちまちゃん、アナタ、可愛い服着てるわね」
「これ、羊のお姉さんが編んでくれたんです」
「ふーーん。いいわ、なかなか似合ってるわよ」
マリヤちゃんがちまの周りをぐるっと一周しました。
「ところでちまちゃん、アタシのことサンタさんみたいって思ったわね?」
「え? いや、それは、そんなことは、、」
「いいのよ、これはサンタさんの格好なの。アタシ、クリスマスにはサンタさんの格好をして、みんなにお花を配りに行くんだから」
マリヤちゃんは一年中、たくさんのお花を育てているのです。
「ちまちゃん、アタシの服可愛いかしら?」
「はい。とっても可愛いです」
「ふふふ。そうでしょ、そうに決まっているわ」
マリヤちゃんの目が一瞬キラッと光ったように見えて、ちまは何か嫌な予感がしました。

「さぁ、二人とも、お茶がはいったわよ。テーブルへどうぞ、ちまちゃん」
お母さんがお茶とお菓子を持って来てくれました。
「ありがとう御座います。これ、くまの親方から、パンと木苺のジャムです。」
ちまはカゴからパンとジャムを出してお母さんに渡しました」
「それからこれ、ラルクおばあちゃんからいただいたハチミツです」
「まぁ、ご丁寧にどうもありがとう。親方によろしくね」
「はい」
しばらくの間、二人はお茶を飲みお菓子を食べていましたが、どうやらマリヤちゃんがそわそわし始めたようです。
「さぁ、ちまちゃん、遊ぶわよ! 早く遊ぶのよ! さぁさぁ、何をする?」
マリヤちゃん、ちまのマフラーをつまんで左右にゆすっています。
「あ、それは、首が、、」
ちまは首がしまってしまい、咳き込みそうになりました。
「ちまちゃん、マフラーは預かっておくわね」
お母さんがマリヤちゃんの手をぴしゃっとはたき、ちまのマフラーをそっと外しました。
「ラルクおばあちゃんから、こんなのをいただいて来ましたよ」
ちまはカゴからかるたを取り出して見せました。
「何かしらこれ、かるたって書いてあるわね」
マリヤちゃんが早速かるたの箱を開けています。
「あら、懐かしい、これでカミルちゃんと良く遊んだわ」
「お母さん、カミルちゃんって誰?」
「ラルクおばあちゃんの娘さんよ。私とお友達だったの」
お母さんは懐かしそうにかるたの札を一枚手にとりました。
「猫に小判、ふふふ、これ、ちまちゃんに良く似てるわ」
「あら、ホント。ちまちゃん、これアナタによく似ててよ!」

「ええー、そうかなぁ」
「似てるわ、そっくりなのよ」
お母さんは笑いながら絵札をテーブルに広げています。
「さぁ、二人でかるた取りをやってごらんなさい」
「えー。どうするの?」
「私が字の札を読むから、二人は絵の札を探して先に取るのよ」
「先に取るのね!」
「あ、あのー、ボクはこのままじゃ手が届かないので、椅子の上に立ってもいいですか?」
「どうぞ、ちまちゃん」
マリヤちゃんはちまを見てふふっと笑いました。
「負けないわよ、ちまちゃん」
「は、はい、よろしくお願いします」
「じゃ、読むわよ。 かっぱのかわながれー」
二人はキョロキョロと絵札を探しています。
「あ、これだ!」
見つけたのは二人同時でしたが、ちまが先に札をとりました。
ちまは力ではマリヤちゃんにかないませんが、素早さでは負けていません。
「な、なかなか早いわね、ちまちゃん」
ちまは取った札を眺めて不思議そうな顔をしています。
「なんだろう、かっぱ? 川にはかっぱさんが住んでいるの?」
「アタシはそんな生き物見たことないわ。頭にお皿みたいなの乗っけてるし」
二人はお母さんの方を見ました。
「ふふふ。どうかしらね? じゃ、次よ。 へそでちゃをわかすー」
「これよ!」
今度はマリヤちゃんが先に取りました。
「ふふふ、どお、ちまちゃん、今度はアタシが取ったわよ!妹に負けるわけにはいかないのよ」
マリヤちゃんが取った札をちまに見せつけました。
「ぷ。なんだろ、その絵。でべその上にやかんが乗ってるよ」
「あらホント、お母さん何よコレ?」
マリヤちゃんのお母さん、ぷぷーっと大きく笑ってしまいました。
「さ、さぁ何かしらね? ぷ、ぷぷーー」
二人もお母さんにつられて笑ってしまいます。
その後も、えびでたいをつる、とか、いしのうえにもさんねん、とか、ひょうたんからこま、とか良くわからない言葉や意味不明なへんてこな絵が続きます。
その度に二人はお母さんに聞きますが、お母さんは笑うばかりで答えてくれません。
それどころか笑いすぎて字の札が読めなくなったりしています。
そうこうしているうちに、全部の札を取り終わりました。
結果はちまが二枚多く取ったようです。
「ま、負けたわ、お姉ちゃんのアタシが妹のちまちゃんに負けるなんて、、」
マリヤちゃん、がっくりと肩を落としています。
「そ、そんなにがっかりしなくても、、」
ちまは心配になってしまいました。
「そうね、そうよ。がっかりなんてしていられないわ。 次はお外よ。ちまちゃん次はお外で勝負なのよ。アタシ、準備してくるわ」
さすがはマリヤちゃん、あっさり立ち直るとどこかへ走って行きました。
「え?マリヤちゃん、勝負って何?」
ちまはまたしても嫌な予感がしましたが、とりあえずかるたを片付けることにしました。
「はい、このかるたはお母さんが預かってください」
「あら、ちまちゃん、どうして?」
「ボクが持っているよりいいですよ。お母さん、楽しそうだったし」
「ちまちゃん、ほんとにいい子ねぇ。うちの暴走娘に見習わせたいわ」
二人は顔を見合わせてニッコリ笑いました。
その時、マリヤちゃんが現れました。
手には赤い服となにやら板のようなものを持っています。
「さぁちまちゃん、次はお外で勝負するのよ!」
羽根つきをする
「ちまちゃん、お外に行く前にこれに着替えて!」
マリヤちゃんがちまの目の前に赤い服を差し出しています。
「え、なんで? なんで着替えるの?」
「お母さんにお願いして、ちまちゃんに合うようにお直ししておいたの。だから早く着替えるのよ!」
「マリヤ、それはクリスマスに着てもらう予定でしょ」
マリヤちゃんのお母さんも予想外だったようで、困った顔をしています。
「お外で勝負するのに、そんな綺麗な毛糸の服じゃダメよ。汚したら洗濯だって出来ないわ」
「そういえばそうね。ちまちゃん、洗える服に着替えた方がいいかも」
おかあさんもその意見に納得したようです。
ちまも羊のお姉さんに編んでもらった服を汚したくなかったので着替えることにしました。
「いいわ。ちょっと大きいけどクリスマスの頃にはちょうど良くなってると思うわ」
「あのー、クリスマスってどうして?」
「今年のクリスマスは、アタシとちまちゃんの二人でお花を配るのよ!」
「ええー、いつのまに、、そんなことになってたなんて」
「その服は前に私が着ていた服なの。今年のクリスマスはお揃いのサンタさんよ」
なるほど、さっきマリヤちゃんの目がキラリと光ったのはそういうことか。
これはもう断れないな。
でも、それはそれで楽しそうかも。
ちまはちょっと困りながらもそう思いました。
「さぁ、ちまちゃん、お外で勝負よ!」
「い、いや、だから、その、勝負って、、、何?」

「ちまちゃん、私がこの羽根を打つから、それを打ち返すのよ。用意はいいかしら?そーれ!」
マリヤちゃんが羽根を高く打ち上げました。
わー、羽根がクルクル回ってる。
ん、落ちてくるぞ。
アレを打ち返せばいいのか。
「はいっ!」
コツーンと音がしてちまが打ち返した羽根がマリヤちゃんに向かいます。
「それっ」
マリヤちゃんは全力で打ち返してきます。
「あははは、はいっ」
ちまはすぐに夢中になりました。
仔猫は動くものを追いかけると楽しくなるのです。
「やるわね、ちまちゃん、ソーレ」
マリヤちゃん、思いっきり高く打ち上げます。
「はは、はははは、それ」
ちまは簡単に追いついて打ち返します。
「むむむ、なかなか、やるわね、えーい」
しばらく打ち合いが続きましたが、マリヤちゃんは常に全力で打つので息がはぁはぁして来ました。
「こ、これでどうだ! やぁーーー」
マリヤちゃん、とうとうオーバーハンドでおもいきり打ち返しました。
「にゃ!」

こつーーん、ちまのおでこに羽根が命中し、ちまはしりもちを着いてしまいました。
「どう、ちまちゃん、これが私の実力よ!ほほほほほ」
魔王が高笑いをしているようです。
ゴツン
「きゃっ」
その時、お母さんがマリヤちゃんの頭にげんこつを落としました。
「なんてことするの、この暴走娘は!」
お母さん、急いでちまに駆け寄りました。
「大丈夫、ちまちゃん、ケガしてない?」
「だ、大丈夫です」
「おでこが赤くなってるわ、おうちで手当てしましょう」
お母さんがちまを立たせて家に向かいました。
「え、ちまちゃんケガしちゃったの、アタシ、そんなつもりじゃなかったの」
マリヤちゃん、オロオロしながら後を追って来ます。
「ごめんね、ちまちゃん、ごめんね、どうしよう、ごめんね」
「大丈夫だよ、たいしたことないから」
お母さんが手当てをしている間、マリヤちゃんはずっとションボリしています。
「アタシ、いけないことをしちゃったわ。どうしよう、、、」
「マリヤちゃん、そんなに心配しないで。平気だから」
「マリヤ、ちまちゃんに謝りなさい」
「はい。ちまちゃん、ごめんなさい」
マリヤちゃん、涙目になって謝りました。
「許してくれる? ちまちゃん」
「許すも何も、羽根つき楽しかった、ボク、すごく楽しかったよ」
「うわーん、ちまちゃーーん」
マリヤちゃん、ちまに抱きついてしまいました。
「ちまちゃん、ずっとお友達でいてね」
マリヤちゃんのお母さん、そんな二人を置いてどこかへ行きました。
「マリヤ、ちまちゃんにコレあげるんじゃなかったの?」
お母さんの手には小さな鉢植えがあります。
「そう、そうだったわ。ちまちゃん、コレどうぞ」
マリヤちゃん、お母さんから受け取った鉢植えを、ちまの目の前に差し出しました。

「わぁ、可愛い。小さくて黄色いお花だ」
「コレは福寿草っていうの。お正月に咲くお花よ」
マリヤちゃん、少しモジモジしながら言いました。
「喜んでもらえるかしら」
「はい。すごく可愛くて、すごく嬉しいです」
涙目だったマリヤちゃん、やっといつもの元気が出てきたようです。
「今年のクリスマスはお揃いのサンタさんでお花を配るのよ!」
「はい。楽しみです」
「私、たくさんお花を咲かせるわ!」
「はい。ボクも手伝いますね」
「ははは」「あははは!」
二人が笑う姿をマリヤちゃんのお母さんが優しく見守っていました。
ミニコタツでお餅を焼く
「ただいまー。親方、今帰りましたよ」
ちまはお店の裏口から声をかけました。でもお店の中には誰もいないみたいで静かです。
あれ? 誰もいないのかな。親方、出かけちゃったのかな?
「おや、ちま、早かったな」
ちまが振り返ると、大工道具を持った親方が物置の前に立っていました。
親方、物置で何してたんだろ?
「ちょうど良いところに帰って来たな。ちょっと来てごらん」
ちまは親方に続いて物置のなかに入って行きました。
「今日からここがちまの部屋だ」
物置の奥のドアを開けると、小さな部屋が出来ていました。
「うわー、ここが僕の部屋? 親方が作ってくれたの?」
「そうだよ。少しスペースがあったからね」
ちまは部屋に入ると、嬉しそうにあちこち見回っています。
「これ、ちいさなコタツ!」
「うむ。ちま専用のミニコタツだな」
「これも親方が作ったの?」
「古いコタツを改造したんだよ」
「これなら座布団三枚無くても平気!一枚で十分だ!」
「ははは、そうだな一枚でいいな」
「カゴのベッドも新しくなってるし、大きくなってる!」
「そうだよ。寝るときはコタツじゃなくてベッドで寝なきゃダメだぞ」
「はい!」
ちまはニコニコしながらコタツに入ってみました。
「ちょうどいい。ボクにぴったりのコタツだ」
「良かったな、ちま」
親方もニコニコ笑っています。
「親方、ボクこのコタツでやってみたいことがあります」
「なんだい?ちま」
「ボク、コタツでお餅を焼いてみたい」
「そうか、そろそろおやつの時間か。じゃぁ用意するから待ってなさい」
なんだかんだ言って親方はちまに甘いし、少し過保護のようです。
「わーい」
「ちま、炭を使うときは窓を少し開けて換気をしなきゃダメだよ」
「はい。親方」
「お餅が焼けたら、この砂糖醤油をつけて食べてごらん」
親方が火鉢の網の上にお餅を乗せてくれました。
「じゃぁ、暗くなったら晩御飯だからね。お餅を食べ過ぎないように」
「はーい」
親方はそう言うと自分の部屋に帰って行きました。
ちまはお餅をつついたりひっくり返したりしながらお餅が焼けるのを待っています。
お餅、突然プーって膨らむからな。ドキドキするな。
ちまはいつお餅が膨れるか気が気じゃありません。
あ、膨れた、プーって膨れたよ。
アツ、熱々だよ。ここにお醤油をつけて、、、伸びる伸びる、ピザのチーズみたいだ!

ははは、美味しい、美味しいや。
お正月は楽しいな。
仔猫のちま 楽しいお正月 のお話でした。
おわり
とりあえずお正月のお話は完結しました。
なんとなく描いた1月のカレンダーでしたが、そこにはこんなエピソードがたくさんあったんですね。
暇な時に絵を何枚か描き足したり入れ替えたりしたいと思っています。
さぁ2月のカレンダー完成させなきゃ。