瀬戸内海に浮かぶ小さな離島・六島にあるマイクロブルワリー「六島浜醸造所」のビール作りに密着取材!
2日目の朝を迎えました。これから長い長い1日がはじまります!
早朝6時前。
あたりはまだ真っ暗ですが、醸造所内ではもう仕込み作業が始まっていました。
僕が工房内に入ると、井関さんが少し慌てているご様子。
聞けば、なんとガスコンロの火が消えてしまうトラブル発生中とのこと!
ビールの仕込みには大量の火力を使用します。
給湯器に加えて、業務用コンロをフル稼働させると、プロパンガスの流量オーバーで止まってしまうことがしばしばあるそうです。
急いで工房の裏手にあるプロパンの元栓をいじって復旧を試みます。
なんとか火が付いて一安心。
…と思いきや、数分後、またもや火が止まってしまう事態に!
これじゃ今日は仕込みできないのでは…と不安になる僕を尻目に、淡々と復旧を試みる井関さん。再々点火に成功し、その後は安定して燃えてくれました。
オープンから約半年の六島浜醸造所において、冬の仕込みは初めてのこと。井関さんにとっても想定外のトラブルだったようですが、非常に淡々としているのが印象的でした。
離島でのビール作りは困難の連続。
これまでに数多の困難を乗り越えてきたのでしょう。
この程度で動じていたら離島でビールは作れないのであります!!
さて、手前の大鍋でお湯を沸かしながら、奥の大鍋では麦汁づくりを進めます。
(手前の大鍋のお湯は、後ほど別の用途に使います。)
昨日の作業で破砕した麦芽を、約60℃約50℃のお湯に投入していきます。(補足:約60℃のお湯を給湯器から注いだので、冬の気温との兼ね合いで鍋の中のお湯の温度は約50℃の適温になっています)
麦芽を投入しては、ゆっくりかき混ぜる。この作業をバケツ6杯分繰り返します。
白々と夜が明けてくる中、麦汁づくりを続行します。
しきりに温度を気にしている井関さん。
現在、この大鍋の中では「プロテインレスト」が進行中です。約60℃約50℃を保つことで麦芽自身が持つ酵素が活性化され、麦芽のタンパク質がアミノ酸へと分解されるのです。(注:赤字部分を訂正しました)
アミノ酸は、この後の発酵工程で酵母の栄養源となり、ふくよかな香味を生み出す役割も果たします。「六島麦のはじまり」の味わいを作り出す重要なポイントです。
一定時間プロテインレストさせたら、大鍋の温度を上げ、今度は麦芽のデンプンを「糖化」する工程に移ります。
麦汁全体の温度が均一になるように、鍋の下部から上部へとポンプで循環させながら加熱していきます。
この段階の麦汁は、まだ糖化が進んでいないため、強く白濁しています。
要するにドロッドロのおかゆ状態。混ぜるのにも非常に力がいります。
ときどき、糖度計で麦汁の糖度を計測してやります。
いまの糖度は5くらい。まだまだ糖度が足りません。
麦芽を糖化させる酵素は約65℃で最も活発になります。
この温度を維持して、どんどん麦芽のデンプンを糖に変えていきます。
麦汁の色がだんだん透き通ってきました。糖化が進んだ証拠です。
このくらいになると、麦汁もサラサラになり、鍋をかき混ぜる力もいらなくなります。
まだ糖化途上ですが、味見させていただきました!
自然で優しい甘みが口に広がります。これは美味しいビールになりそう!
十分に糖化させたら、さらに鍋の温度を上げて酵素を失活させ、糖化を止めます。
これで麦汁づくりは完了ですが、ビール作りはまだまだこれから!
この後は、ろ過、ホップ添加、煮沸…と続きます。
次回もお楽しみに!