今日で「東日本大震災」から13年。

 

災害医療では常識となっているこの言葉も過去には全く認知されていませんでした。

 

 

 

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【トリアージ】(とりあーじ)

 

トリアージとは、多くの傷病者が発生している状況において、傷病の緊急度や重症度に応じた優先度を決める医療用語。

 

救急事故現場において、患者の治療順位、救急搬送の順位、搬送先施設の決定などにおいて用いられる。識別救急とも呼ぶ。

 

トリアージは病院の救命救急部門(ER)受付や、救急通報電話サービスでも行われている。

 

ある意味、死亡確認に近い判断がなされるため、非常に重大で繊細な仕事となる。

 

近年の医療現場ではトリアージには「トリアージタグ」と呼ばれる識別カードが使われる。

 

「トリアージタグ」は患者の緊急性を色で識別する。

 

・黒(black tag)・カテゴリー0(無呼吸群)

死亡、または生命徴候がなく、直ちに処置を行っても明らかに救命が不可能なもの。

 

・赤(red tag)・カテゴリー2(最優先治療群)

生命に関わる重篤な状態で一刻も早い処置をすべきもの。

 

・黄(yellow tag)・カテゴリーII(待機的治療群)

基本的にバイタルサインが安定しているものの、早期に処置をすべきもの。

一般に、今すぐ生命に関わる重篤な状態ではないが処置が必要であり、場合によって赤に変化する可能性があるもの。

 

・緑(green tag)・カテゴリーIII(保留群)

歩行可能で、今すぐの処置や搬送の必要ないもの。完全に治療が不要なものも含む。

 

 

 

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今ではトリアージは一般人でも聞いたことがある概念・言葉になりました。

 

しかし30年前まではトリアージを医師や看護師など医療従事者でも認知していませんでした。

 

日本でトリアージという概念・言葉が広く認知されたのは1995年だといわれています。

 

1995年には「阪神淡路大震災」「地下鉄サリン事件」が起きました。

 

それまで日本社会が経験してこなかった、短時間で大量の患者が発生する事態です。

 

特に1月17日の「阪神淡路大震災」はトリアージの瞬間を映した、貴重な映像が残されました。

 

「Youtube」でも公開されているこのトリアージの映像は、ドクター夫人を目指す皆さんも必見ですよ!

 

なお動画は長いので、必要な部分から始まるよう設定しました。

 

ドクターの伴侶になる皆さんは絶対に見ておいてください!

 

 

 

【「Youtube」より:「震災当日のトリアージ・若い世代へ映像で伝える医師・阪神淡路大震災から27年」】

https://bit.ly/49X4yP2

 

 

 

 

 

 

撮影されたのは震災発生直後の淡路市民病院。

 

トリアージを行ったのが当時外科部長だった松田昌三先生でした。

 

松田先生は「阪神淡路大震災」発生後、自宅と家族の無事を確認すると淡路市民病院へ直行。

 

救急体制を整えた上で部下だった外科医の先生に自分をビデオ撮影するよう指示します。

 

先生は冒頭で「患者がさばききれない事態になれば、助けられる患者を優先する」と解説します。

 

そしてしばらくすると、救急車が地震で倒壊した家屋の下敷きになり助け出された患者を搬送してきます。

 

上記の動画リンクはこの時点から開始されます。

 

トリアージの概念がない淡路市民病院では、搬送されてきた患者を到着順に治療を開始。

 

そのためベッドが足らなくなり、患者の救命措置をストレッチャーに載せた状態で行う事態に陥いってしまいました。

 

当然ですが心肺停止状態で搬送されてきた患者には、蘇生のために心臓マッサージが行われます。

 

しかしその最中にも新しい患者が搬送されてくるという半ばパニック状態に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

松田先生は心臓マッサージが行われた時間を確認し、助からないと判断すると「ストップ!やめなさい!」と心肺蘇生措置を中止させます。

 

蘇生措置にあたっていた医師や看護師はトリアージの概念がないので一瞬亜然となった様子が記録されていました。

 

当然です。松田先生は「助けられるかもしれない命を見捨てよ」と指示したのですから。

 

しかし松田先生は全く躊躇することなく、次々に助からないと判断した患者の蘇生措置の中止を指示。

 

その冷静かつ果断な言動が、日本の災害医療におけるトリアージの出発点となったのです。

 

病院が持つ医師や看護師などの医療スタッフ・医療器具・薬剤といった医療リソースは限られます。

 

その限られた医療リソースで、運び込まれた患者を順番に対応していったら破綻してしまう。

 

まず助けられる命から優先して助ける、という合理的な判断で限られた医療リソースを最大限有効に活用する!

 

今では当たり前のトリアージを松田先生は勇気をもって実践されたわけですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後救急医療・災害医療は進化し、トリアージタグも普及しました。

 

トリアージという概念・言葉も大きな災害のたびに喧伝され社会に定着しています。

 

13年前の「東日本大震災」では、被災者の治療に当たった各病院でトリアージが行われました。

 

トリアージの実際はかなりシビアな判断となりますが、医療現場では幾度も本番さながらの訓練が行われています。

 

医師だけでなく看護師から医療秘書に至るまでトリアージの概念を理解し、その実施を補助する認識が日ごろからいきわたるようになりました。

 

懸念される「南海トラフ巨大地震」でも、被災者の治療にあたる多くの病院でトリアージが行われるでしょう。

 

しかし1995年当時ではトリアージという言葉さえ知らない医師が大半だったんですからね。

 

その中で決然とトリアージを実行した松田先生は、皆さんの伴侶にしたいドクターの理想像ではないでしょうか。