意思決定支援の5ステップ
Step1 現状の整理・選択肢の検討
1、現状の整理
・まずは判断に必要な患者さんの医学的情報
を収集します。
・緊急度(急いで決めるべきか?待てるか?
むしろ待つべきか?)を判断します。
・意思決定に関わる患者背景についても、
可能な限り情報収集します。
意思決定に関わる患者背景の例
・ご本人について:事前意思の有無、性格
価値観
・ご家族について:家族構成、ご家族各々
の居住地や患者さん
ご本人との関係性
・生活状況について:居住環境、経済状況
現在の就業状況
2、選択肢の検討
・収集した情報を基に、治療やケアの選択肢と
各選択肢の医学的妥当性
メリット・デメリットなどを医療者間で十分
検討します。
・意思決定の難易度をざっくり判定します。
Step2 患者さんの意思決定能力の評価
・意思決定能力とは、自分の価値観と情報を
基に物事を決める能力、細かく分類すると、
「理解力」「認識力」「論理的思考力」
「意思表明する力」の4つからなります。
ポイント
「意思決定能力があるかないか」ではなく
「意思決定の難しさに対して、意思決定能力
は十分か不十分か」を考える。➡︎「知的障害
や認知症がある=意思決定能力なし」とは
限らない。
ポイント
意思決定能力が不十分だと思われても、
補う方法はないか、明確な意向でなくても
参考になる情報はないか慎重に検討する。
➡︎意思決定能力は、0か100ではない!
理解力が不十分
・絵や図を用いて説明する。
・説明内容を紙に書いて渡す。
・説明後に理解度を看護師等が確認する。
挿管中で話せない
・鎮静薬などは必要最小限にする。
・筆談や文字盤を利用する。
・処置時の反応から何が不快かを推測する
Step3 説明・話し合い
1、意思決定能力が十分な場合
➡︎患者さん自身による意思決定を支援
ポイント
意思決定をするには、医師からの病状説明
が必要不可欠!
客観的な情報だけでなく、必要に応じて
専門家としての推奨・助言を行う。
ポイント
患者さんの価値観や意向、気がかり、悲嘆
や苦悩といった感情など、患者さんしか
知りえない情報をしっかり聞き取ることも
重要。
1、意思決定能力が不十分な
場合➡︎代理意思決定を検討
・代理意思決定においては、以下の3点が
重要となります。
❶あくまで「患者さんご本人にとっての最善」
が重視されるべきで、「ご家族や医療者に
とっての最善」になってしまわないように
注意する。
※意思決定の内容によっては、患者さんの心身
に害を与えうるため
❷一人で決めない(決めさせない)、複数の関係
者で協議する。
※主観による偏りを避け、誰かに責任が集中
することも避ける
❸一度で決めない 状況や気持ちの変化に
配慮し、いったん結論が出たとしても、
必要に応じて繰り返し検討する。
・代理意思決定者は誰でも良いわけでなく、
以下のような条件が必要です。
❶医師からの十分な説明を受けて、病状等を
理解している。
❷患者さんご本人にとっての最善を考えて
意思決定することができる。
❸患者さんの人間性や考え方をよく知って
いる。➡︎たとえば、何十年も会っていない
親戚や、仕方なく最低限の手伝いをして
くれている知人などは、代理意思決定者と
して適切とはいえない。
➡︎適切な代理意思決定者がいない場合は
複数の医療者で対応を協議、そのプロセスや
結論をカルテに記載し、ご家族や関係者が
いれば説明する。
Step4 方針決定
・話し合いで結論が出た!…と油断しては
いけない。
1、認識のズレや疑問が
ないか確認
ポイント
医療者が「説明した」「決めた」と思っても
患者さんやご家族が誤解していることは
本当によくある。➡︎確認例)話し合いの最後
に決定事項を要約して伝え、誤解がないか
確認、看護師らが説明後に患者さんやご家族
の理解・認識を改めて確認する。
2、必ず記録を残す
ポイント
いくら時間をかけて話し合っても、
記録がなければ客観的には「やっていない」
と見なされる。
面倒でも必ずカルテに記録を残す。
最低限カルテ記載すべき事項
・説明内容(誰と誰が、いつ、何について
話したのか)
・患者さんやご家族の発言(認識、意向、
説明への反応、質問)
・結論(何が決まったのか、何が決まって
いないのか)
3、重要な決定事項は
関係者に直接伝える
・話し合いの結果を関係各所に迅速・確実に
伝えるには、電話などで直接伝えるのが
一番だし丁寧です。
・カルテ記載だけだと読まれないことが
あります。
Step5 事前意思
・患者さんが意思決定困難となった場合の
対応を事前に話し合う意義は…
❶患者さん:もし意思決定を行えなくなっても
自分の意向を示せる
❷ご家族など:代理意思決定で患者さんの意向
を推定する根拠となる
❸医療者:たとえば、主治医らが不在のときに
患者さんが急変しても、当直医らが
治療の経緯や患者さんの意向に
沿った対応ができる
・事前意思の示し方には、大きく分けて
二つの方法がある。
❶具体的な事前意思:医療行為などについて
具体的な意向を示して
おく
❷包括的な事前意思:大まかな方針や価値観
好みだけを共有しておく
具体的な事前意思の代表例
・リビングウィル:医療行為などに関する
患者さんご本人の意向
・DNAR:心肺蘇生を行わないという指示
・AD(事前指示):医療行為全般に関する
指示、
代理意思決定者の指名
・POLST:生命維持治療に関する具体的
な指示
参考資料
次回は、