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⭐️認知症plus緩和ケア
❶多職種共通の基本的事項
・認知症の緩和ケアとは、重度から終末期の
身体的な苦痛への対応だけでなく、肺炎や
骨折、心不全などの併存症・合併症発症時
へのケア・行動・心理症状やせん妄などの
精神的・心理的な苦痛のケア、さらには
軽度の時期から始まるスピリチュアルな
痛みに至るまで幅広い概念としてとらえ
ます。
・認知症ケア全体の中で、緩和ケアの視点と
緩和ケア的アプローチが貫かれていなければ
なりません。
・したがって、認知症ケアにかかわるあらゆる
専門職は、緩和ケアアプローチについて
十分に理解する必要があります。
⑴診断前後のスピリチュアルな
苦悩へのアプローチ
・認知症になることは、高齢者本人にとって
多大な精神的身体的社会的負担をもたらして
います。
・特に、診断初期においての苦悩は多く、
その適応は困難をきたします。
・診断前後の認知症の緩和ケアには、
発症後の葛藤や診断後のスピリチュアルな
苦悩に対する心理的ケアや教育的支援、
リハビリテーションの場の確保などの
環境整備、アドバンス・ケア・プラン
ニング※に向けた取り組みを開始すること
などが含まれます。
※アドバンス・ケア・プランニングとは
万が一のときに備えて、どのような医療や
ケアを望んでいるかについて、本人による
意思決定を基本として家族や信頼のおける人
医療・介護従事者たちがあらかじめ話し合う
プロセスのことです。
厚生労働省がアドバンス・ケア・プラン
ニング(ACP)の愛称を「人生会議」と
決定しました。
⑵行動・心理症状を理解する
・行動・心理症状(BPSD)※は、認知症高齢者
の深刻な苦痛であると捉えることが重要
です。
・さらに、行動・心理症状は疾患の増悪や
身体的苦痛のサインであり、心身の苦痛を
発見する手がかりとなります。
※行動・心理症状(BPSD)とは
記憶障害や見当識障害といった認知症の
中核症状に随伴して見られる行動や心理症状
を指しており、強い不安・混乱・自尊心の
低下をもたらします。
なお、本人に悪気はなく「その場の環境に
適応しよう」と模索した結果、様々な問題が
起こってしまっています。
ご本人の症状を理解し、適切なケアを行う
ことで行動・心理症状が軽減したり消失する
可能性があるので、ケア方法について知って
おくことは非常に重要です。
・認知症の緩和ケアは、伴走者であるご家族も
ケアの対象となります。
・行動・心理症状は、ご本人の苦しみであると
同時に、人生をともに生きてきたご家族の
苦しみとして捉えることも大切です。
・行動・心理症状に対しては、丁寧な観察に
よって原因や誘因をアセスメントし、適切な
非薬物的ケアや環境の調整を行ったうえで
必要に応じて薬剤の使用も含めた医学的
アプローチを行うなどして苦痛を和らげ
ます。
・行動・心理症状の兆候を早期に捉え、
チームで迅速で適切な対応を行うことが大切
です。
・認知症ケアに携わる多職種は、
行動・心理症状を正しく理解するための視点
を身につける必要があります。
・そのためには、認知症の人が、周りを
どのように見て、感じているかを理解する
ことが重要です。
⑶併存症・合併症への対応
・認知症高齢者のほとんどは、
嚥下障害、失禁などの老年症候群※を中心に
心不全、腎不全など多くの疾患が併存して
います。
※老年症候群とは
加齢に伴って病気または心や体の状態の
問題が複雑に関連しあうことにより生じる、
高齢者に多くみられる症状のことを
老年症候群といいます。
たとえば、ふらつく、つまずいてこけそうに
なる、だるい、眠れない、やせてくるなどの
症状がそうですが、最初はたいした問題では
ないけれど、だんだん生活の質や活動度が
落ちてしまいます。
老年症候群を放置していると、最悪の場合、
要介護など寝たきりの状態になることも
あります。
・このような状態に、肺炎や骨折などの引き金
疾患が発症すると、これらの疾患群は動的な
連鎖のなかで増悪し、やがて繰り返しのなか
で死に至ることが少なくありません。
・急性期病院での安易な身体拘束が問題と
なっていますが、尊厳に基づくケアと急性期
の苦痛に対して適正な緩和ケアが提供され
なくてはなりません。
⑷重度から末期の
身体的・心理的苦痛の緩和
・重度から末期の認知症では、
食べられないことに対する、食べる楽しみを
目的とした、その人に合った食事摂取の支援
や終末期肺炎の呼吸困難などの苦痛に対する
緩和ケア、終末期の褥瘡(じょくそう
床ずれ)に対する緩和的創傷ケア、せん妄や
行動・心理症状への対応、孤独にしないケア
といった精神・心理的な問題に対するケア
などチームで取り組むべき多くの課題があり
ます。
・これらの課題に対しては、がんや非がん疾患
とは異なり、薬剤や医療的処置よりも、
適切な看護アセスメントと、丁寧で科学的な
看護的ケアの継続によって達成される課題が
多いのが特徴です。
⑸家族支援
・認知症の緩和ケアには、ご家族の支援も
広く含まれています。
・ご家族に対しても初期の適切な教育的支援
ご家族の相談場所の確保、家族会等の紹介
適切な社会資源の活用による家族支援、
代弁者としてかかわるご家族に対する終末期
の意思決定の支援など、それぞれのステージ
で適切な支援を多職種チームで行います。
・以上のように、認知症の診断時から看取り
まで、在宅、急性期病院、施設といった場を
超えて、ご本人の尊厳と自律尊重の視点に
立ち、ご家族を含めた暮らしを支援する
立場に立った適切な緩和ケアが、多職種
チームによって切れ目なく提供されることが
大切です。




