


・人は、健康が脅かされたときや、
死や人生の終わりを意識したときに、
苦しみ(苦痛:pain、苦悩:suffering)を
感じます。
・この苦しみは、脅威がなくなるか、
健康が回復するまで、消えることはあり
ません。
・苦しみは、その人が置かれている客観的
状況とその人の主観的な想い・願い・価値観
との「ズレ」によって構成されます。
・患者さんの苦しみは、身体的なものだけで
なく、精神的、社会的、スピリチュアルな面
に及ぶため、包括的・多面的にとらえる
必要があります。
・そのため、患者さんの苦しさ・つらさは
全人的苦悩または全人的苦痛といわれて
います。
アドバイス
「目に見えるつらさは氷山の一角」と
いわれています。
患者さんごとに異なるつらさ(気がかり)に
気づけるよう、日々アンテナを磨くことが
大切です。
❸全人的苦悩の構成要素
(がん患者さんの場合)
⑴身体的なつらさ
・がん患者さんには、痛み以外にも、
多くの身体的症状(不快な症状、がん治療に
よる副作用など)が出現します。
・これらの症状は、食事・排泄・睡眠など
患者さんの日常生活に影響します。
・身体症状があっても、日常生活動作に障害
がなければ「つらい」と訴えない患者さん
もいます。
つらさの感じ方は、人それぞれです。
・また、痛みや呼吸困難などの症状が長く
続くと「病気が悪化しているのではないか」
「このまま死んでしまうのではないか」と
いった不安から精神的つらさが生じることも
あります。
・さらには、身体的症状によって
「休職しなければならない」「家庭内の役割
が果たせない」といった社会的なつらさが
生じることもあります。
・特に亡くなる前の1か月、呼吸困難、眠気、
食欲低下が急激に悪化するといわれて
います。
⑵精神的なつらさ
・がんの診断は、患者さんとそのご家族に
とって、将来への見とおしを根底から否定的
に変える悪い知らせとなります。
・がん患者さんの多くは
「これからどうなってしまうのだろう」
「治療に耐えられるのだろうか」
「いつか再発するのではないか」
「いつまで治療が続けられるのだろうか」
「あと、どのくらい生きられるのか」
という不安を抱えています。
・10〜20%のがん患者さんには、適応障害も
見られます。
・精神的なつらさが強くなると、治療などの
意思決定ができなくなる場合もあります。
・患者さんのご家族も精神的なつらさを抱え
ます。
およそ10〜50%のご家族が、うつ病や
適応障害を抱えているといわれています。
⑶社会的なつらさ
・がんと診断され、治療を開始すると、
少なからず患者さんの日常生活は変化
します。
・それまで行っていた仕事や家庭での役割が
できなくなると生きがいの喪失につながり
かねません。
・がん患者さんには、治療や入院に伴う
医療費の負担、休職などによる生活費の
ダメージなど、経済的な問題も生じます。
・親族との関係変化や遺産問題も起こり得
ます。
・また、闘病の長期化や病状の進行に伴い
療養場所の移行を余儀なくされ、住み慣れた
場所で療養できないつらさを抱える患者さん
もいます。
・このような、生活者としての社会的なつらさ
に対するアプローチも重要です。
アドバイス
患者さんの言葉、表情、動作には、
たくさんの情報が含まれています。
「今の言葉はどんな意味なのだろうか」
「なぜ、悲しそうな顔をしているの
だろうか」
「何度も寝返りをうっているが、眠れて
いないのだろうか」
など、状況から患者さんのつらさを推測する
ことも重要です。
⑷スピリチュアルなつらさ
・スピリチュアルは、実存的な問題に関係
します。
・「生きていても意味がない」
「私の人生に何の意味があったのだろう」
「人に迷惑をかけてまで生きたくない」
といった生きる意味のつらさです。
・生きる意味は、人それぞれ異なります。
・看護師は、自分の価値観を押し付けず、
最期のときまで患者さんと向き合う、
揺らぐ気持ちを受け止めるケアが大切
です。
あわせて知りたい!
非がん疾患の場合、
治療によって苦痛が緩和されるため、
最期まで治療が継続されることがあります。
予後予測も非常に難しくなります。
患者さんの病状を、看護師が把握しておく
ことが大切です。
❹全人的苦悩へのアプローチ
・緩和ケアを必要とする患者さんとそのご家族
は、身体的だけでなく、精神的、社会的、
スピリチュアルな面でつらさを抱えます。
・そのようなつらさに対応するためには、
医師や看護師だけでなく、専門性を持った
多職種でのかかわりが必要となります。
・患者さんの状態・状況によっては、
つらさの治療・緩和ができない場合も
あります。
・しかし看護師は、あきらめずに
「患者さんのつらさがやわらぐ方法は
ないか」かかわり続ける必要があります。
・適切なアセスメントと症状マネジメント、
精神的なケア、意思決定支援、家族ケア、
多職種との協働はもちろんのこと、
患者さんやご家族のそばにいる、寄り添う
ことも、看護師にできる有効なアプローチ
です。
参考資料




