【揺花草子。】[#4516] 蓋をする。 | Meister's Brief

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【揺花草子。】[#4516] 蓋をする。

Bさん「昨日は近年まれにみる奇妙なレースとなった
    F1 2024年シーズン第8戦モナコ GP のお話をしました。」
Aさん「そうだったね。」
Bさん「1週目の大クラッシュでいきなり赤旗が出て、
    殆どのドライバーがここでタイヤ交換を済ませ、
    残り周回をマネジメントで走り切る戦略にしたのよね。」
Aさん「そうでしたねえ。」
Bさん「そんな中戦術的に光っていたのは
    我らが角田選手が所属する RB であったと思います。」
Aさん「んん。」
Cさん「スタート順位の8番手をキープしながら序盤を走行する角田選手。
    後ろにはストレートの速さが厄介なウィリアムズのアルボン選手、
    そしてさらにその後ろにはオープニングラップで手負いとなった
    アルピーヌのガスリー選手と言う並びだったわ。」
Aさん「でしたね。」
Bさん「一方角田選手の前はと言うとメルセデスのハミルトン選手、
    それにレッドブルのフェルスタッペン選手。
    角田選手より前のドライバーたちはマネジメントをしつつも
    ペースはそれなりに速くって、
    7位ハミルトン選手と8位角田選手の間はどんどん広がってくる。」
Aさん「そうだったね、
    このままじゃメルセデスにフリーストップを
    許してしまう事になるぞ!とやきもきしながら観ていたよ。」
Cさん「でも実はそう言う見方自体が誤りだったのよね。
    今回の RB は前ではなく後ろを見てレースしていたわ。」
Aさん「ええ。そうでした。」
Bさん「2つ後ろの手負いのガスリー選手はなかなかペースが上がらなかった。
    ここで角田選手が前方のメルセデスについていけば、
    恐らくはすぐ後ろのアルボン選手も角田選手についてきた。
    そうなるとその後ろのガスリー選手との間には
    大きなギャップが生まれる可能性があり、
    それはつまりアルボン選手がレース終盤にフリーストップで
    フレッシュなタイヤに履き替えて角田選手を猛追してくる可能性を
    生んでしまうって言う事。
    そうさせないために、角田選手は手負いのガスリー選手が
    ついて来れるくらいのペースを守って走っていたと。」
Aさん「そうだったね。
    モナコではよほどのスピード差があっても抜く事はできない。
    角田選手が今いるポジションの前を見ても
    順位を上げるのはかなり難しいだろうから、
    だったら後ろから抜かれる可能性をできるだけ小さくすると言う
    戦略だったわけだよね。」
Cさん「終盤タイヤを替えたフェルスタッペン選手でも
    ミディアムでずっと走り続けていた5番手のラッセル選手を
    抜けなかったんだから、結果的にはアルボン選手がタイヤを替えようが
    ポジションキープはできたんじゃないかと言う意見はあるけど、
    それはそれよね。」
Aさん「ですね。
    抜かれる事はないかもですけどファステストラップで
    貴重な1ポイントを持ってかれる可能性は出るわけですしね。」
Bさん「ま、そんなわけで、あるレースではしっかりと前を見据え、
    その一方では今回のようにきちんと後ろを見て戦略を組み立てる。
    昨年までの『いやなにこのストラテジー?』みたいな
    ちんぷんかんぷんな戦略はすっかり消え失せ、
    今や展開の1歩2歩先を行く優れた戦術眼が見て取れます。」
Aさん「確かにそうかも。」
Cさん「そして『マージンは稼げたからこの先はプッシュしていいぞ』
    『その言葉を待っていたよ』のやり取りは
    グッと来るものがあったわよね。
    そして70周以上走ったハードタイヤで
    自己ベストをバンバン更新していくだけのライフを残していた
    角田選手の抜群のタイヤマネジメント能力には舌を巻いたわ。」
Aさん「そうですね。あれには驚きました。
    後ろのアルボン選手は完全に置いてきぼりでしたもんね。」
Bさん「そうだったね。
    レースの間を通じてずっと角田選手のほとんど真後ろに居て
    必死で抜こうとするけど全然抜けなくて、
    その分タイヤを酷使し続けていた。
    ずっと前が開けていて自分の意思で上げ下げできていた
    角田選手に対し常にリアクションを強いられたアルボン選手という
    恰好だったわけだ。
    そして角田選手がスパートをかけた頃にはもうアルボン選手は
    タイヤが残ってなかった。
    モナコは予選こそが決勝と言われる所以だね。」
Aさん「んん。確かに。」

Bさん「そりゃ普段温厚なアルボン選手も
    キレ散らかすわけだよね。」
Aさん「別にキレ散らかしてたわけではなくない?」

 レース後のインタビューでは珍しく苛立ってはいましたけどね。