自分を変えたい。

 

けれども、変えられない。

 

自分の中に根強くある恐怖や不安で、別の行動を取ることができない。

 

 

こうした問題を解消するために心理学を勉強したり、トラウマや感情、信念体系の調整・整理のためにプロの方の施術を受けることは一般的になりました。

 

 

でも実は、そうした感情や心の調整の後にするべき、一番大切なことがあります。

 

本当の意味で、自分を変えるために必要なこと。

 

 

それは、

 

 

行動を変えること。

 

 

 

なぜなら、行動が変わることで、はじめて現象として表れる結果が変わるからです。

 

人はいつでも、まったく新しい行動をとることができます。

ただし、それは自分の意志でそれを望んだときだけです。

 


自分の中の思い込みや感情のしこりを解消することは

自分の中の設定をゼロリセットすることですが、

 

ゼロリセットしただけでは、どこに行くべきなのか、はわかりません。

 

ゼロリセットした上で、さらに自分本来の意志を選択する。

選択された意志のもと、行動する。そして、結果が生まれる。
 

ところが、自分の本来の意志は、今までそれを隠してきた場合、とても見えにくくなっています。

 

見えない、気づけない、本当の自分の意志。

それを教えてくれるのが、感情です。

 

 

今回は、感情から自分本来の意志を見つけ、選択した方のお話をシェアさせていただきます。



「妻が自分の都合ばかりを押し付けてくる」


とクライアントさまからご相談がありました。


お話を伺うと、奥さまがクライアントさまにお仕事を休ませて、お子さんの送り迎えや行事に出席させようとするそうで、仕事の有給も残っていないために、困っているとのことでした。


奥さまにとっては、お子さんが何よりも優先されるので、そのためならお仕事は休んでいいでしょう、という感覚があるようです。奥さまは在宅の軽いお仕事をされていて、時間の融通はクライアントさま以上に自由があるそうです。


クライアントさまとしては、家計を一手に引き受けていることもあり、仕事を休むことは負担に思っておいでです。




けれども、「仕事休んで、送っていって」と言われるとそうしてしまう。



奥さまがぶりぶりと不機嫌になるので、クライアントさまはお子さんを送っていくことにしてしまうそうです。




現在のお仕事は同僚の方に協力していただければ融通が効くのですが、お仕事に遅刻するということは非常にクライアントさまにとってもストレスです。なぜなら、クライアントさまはとても真面目で、責任を強く感じる方だからです。



その結果、お願いを聞いてクライアントさまもまた不機嫌に。




ここに起きているのは、どういった問題でしょうか。




クライアントさまは、「仕事は休めない」「もう有給も残っていないので、仕事を休むのは困る」と再三奥さまにお伝えしているそう。



にも関わらず、「一生に一度のことだから、学校行事には絶対に出て」「子どもを送って」と言われると、内心文句を言いつつも、むすっとしながら黙ってしたがってしまうのです。




クライアントさまの目線からは、奥さまがこんなふうに映っておいでのようです。



「こっちが困っている、と言っているのに理解してくれない」

「こっちがどんな思いで仕事を休んでいるのか、理解してくれない」

「自分の都合のいいことばかり、要求してくる」




ここでさらに詳しくお話を聞いてみると、これまで、「仕事を休んで」という奥さまの要求を、クライアントさまは一度も断ったことがないそうです。



同僚に無理を言って都合をつけてもらい、なんとか仕事中に時間をつくったりしていたとのこと。



奥さまとしては、なんだかんだと仕事を休んでくれるので、「仕事を休みづらい」というクライアントさまの心をそこまで重要視しておいでではないのかもしれません。




ではなぜ、そこまで負担に思う奥さまのお願いを、クライアントさまは聞き続けていたのか。




クライアントさまは周囲に負担をかけて仕事を休むことにストレスを感じていましたが、それでも「仕事を休んで」という奥さまのお願いを断ることのほうが、ストレスだったのです。




2つの選択肢の間で板挟みになっている原因は、クライアントさまが他人からのお願いを断ることができない、という信念体系をお持ちであることです。




お願いを叶えることでご自身を犠牲にするから、

お願いを叶えることに、納得がいっていない。

だからお願いを叶えても、イライラする。



でも、断ることが、できない。



お願いを頑張って叶える。

叶えても、奥さまから感謝されるわけでもない。

叶えても、仕事を休んだというストレスが残るだけで、満足感がない。



そして自分にこんなお願いをしてきた奥さまを恨む。




こういった循環になっていました。



不信が育つ、悪循環です。




この悪循環の原因はどこにあるのでしょうか?



それは、クライアントさまの中の、判断基準です。




人は常に、自分が最もよいと思う選択をとっています。



厄介なのは、その「よい」が必ずしも合理的ではないことです。




この場合、クライアントさまは「奥さまのお願いを叶えるのが最もよい」と設定なさっています。



ただし、仕事を休み続けることで周囲からの評価が下がるなどのデメリットの可能性を考えれば、「仕事を休んで」という奥さまのお願いを断るほうが、結果的にご家族を守ることにつながる場合もあります。



奥さまはお仕事がないため、奥さまが幼稚園に送っていくことは十分に可能でした。



にも関わらず、「送って」というお願いを聞くことは、合理的ではないように客観的には思われます。




ところが、クライアントさまの脳内では「お願いを聞くのが最もよいこと」という設定がされているため、どんなに無理をしてでも、その設定に沿ったご自身の行動をとってしまうのです。




人は、常に、自分が最もよいと思う選択をとっています。

ただし、なにを「よい」と思うかは、脳内で設定されているだけで、その状況における最善ではない、ということも多々あります。




この設定は、過去の記憶や経験、また他人から言われた言葉によってつくられています。



特に、脳は感情と結びついた出来事を深く記憶し、学習するようにできています。



過去に叱られた、嫌だった、つらかった、寂しかった…そうした感情と一緒に起こった出来事は、深く脳内に刻み込まれます。




このクライアントさまの場合は、「人のお願いを聞かなければ、悲しいことが起こる。自分の気持ちを外に出したら、悪いことが起こる」というように、感情と行動が深く結びついて設定されていました。




「人のお願いを聞く」

「自分の気持ちを外に出さない」




こうしたほうが「よい」と判断するだけの過去のできごとがあったのだろうと思われます。



しかし、常に状況は変わるため、過去の「よい」が現在も適切であるとは限りません。




「人のお願いを常に聞く」

「自分の気持ちを外に出さない」




この行動をとることで、今、クライアントさまはかえってご自身を追い詰めておいでです。




「よい」結果をもたらすための選択が、かえってご自身の心にストレスを与えたり、ご自身の望みとは逆に仕事を休む、といった結果につながっているのです。




そしてクライアントさまは、こうした行動を迫る奥さまに対する不信感を募らせておいででした。




けれども、今回の状況では、「送って」という奥さまのお願いをクライアントさまが断ることは、可能でした。その上で、「送ること」を選択したのは、クライアントさまご自身です。




クライアントさまの苦しみの原因は、クライアントさまの中に分離した意志が存在していることです。



・奥さまの願いを聞かねばならない

・仕事を休みたくない



さらには、「奥さまの願いを聞く=送っていく=仕事を休む」ということを望んでいないのに、それを選択してしまうことへの苦しみ。



ご自身の行動に納得がいっていないからこその苦しみでした。



表面的にはクライアントさまの苦しみは「奥さまのせい」ということになります。奥さまがそのようなお願いをしなければ、クライアントさまは休まなくてよかったからです。




けれども、奥さまのお願いを「断らなかった」のは、クライアントさまご自身です。




奥さまの願いを聞いて、納得がいっていないことから、今回のクライアントさまご自身の本来の意志が「仕事に行く」であったことがわかります。



本来の意志を貫いた場合、他人を責めたり、恨むといった感情はわかないからです。




心に浮かぶ感情から、自分本来の意志がどこにあるのかが見えてきます。



自分の行動の結果、心が苦しんでいる場合、すっきりしていない場合、もやもやしている場合、その選択が、自分本来の意志からそれていることがわかります。




そして今回のできごとから、クライアントさまは「奥さまの願いを聞かねばならない」という隠れたルールに従うことが、ご自身にひどく苦痛を与えること、その結果、奥さまを恨まなければならないことを理解されました。




そして、最終的にクライアントさまが選択されたのがこちら。



「すべてのお願いを聞くことを、やめる」



「自分の気持ちにそわないお願いは、断る」




数日前に、クライアントさまの中のお願いを断ることへの罪悪感、自分の気持ちを伝えることへの抵抗感に対してワークを行い、信念ブロックをはずす処置をさせていただいておりました。




ただ、感情的なブロックを外すことと、実際に「断る」という行動を取ることは別の問題だ、という事実があります。




人間は、過去の習慣、行動パターンを繰り返します。



無意識の行動は、すべて、過去を基準に行われるからです。



体に染み付いた行動はすべて、過去に身につけたもの。



「こうしなければならない」という強迫観念を外しはしても、新しい行動を無意識レベルにまで落とし込めていない場合は、同じ行動を取ってしまうのです。




今回の場合は、「断ってはいけない」という精神的なブロックを外した後、「断る」という行動を実際にとり、それを繰り返すことが、自分の変化につながります。




クライアントさまは、肝心の「断る」場面にきていることに、お気づきではなかったようです。




そこで、今回のことをきっかけに、クライアントさまご自身に本来の意志を改めて選択していただく流れとなりました。




自分の意志で新しい行動を選択し、自分の無意識に落とし込むことで、はじめてマインドセットは完了します。




そのためには、選択が必要です。



選択すべきときに気付き、自分本来の意志を選択する。




「仕事を休んで」などの奥さまのお願いに、納得がいかない場合は今後は断る、という選択肢を宣言したクライアントさまのお声は晴れ晴れとしておいででした。




仕事を休むのが良い・悪い、という話ではありません。そのときの状況とまわりの人のことを考えて、自分も人も生かす選択をすることが、最も大切です。



奥さまのお願いを聞くことで自分を殺し、奥さまを恨むという結果につながる選択は、日々の生活を苦しみに満ちたものにしてしまいます。




ご自身が納得のいかないお願いを断る。

今回のクライアントさまの課題は、ここにあったようです。




常に、人生では課題となっていることが問題として目の前に浮上してきます。



周囲の状況や環境が変わっても、自分の中に原因がある限り、似た現象が起こるためです。




自分が変わる、というのは、自分の行動が変わる、ということです。そのために必要なのは、次の4つの流れです。



①思考・感情のブロックを外す。



②不都合な行動のパターンを自覚し、しないと決める。



③新しい行動のパターンを選択肢の中に入れる。



④必要な場面で新しい行動を選択し、実行する。



特に重要なのが④です。頭でわかっていても、行動に移せない場合、本当の意味で自分を変えることはできないからです。




クライアントさまとのセッションの後のアフターフォローでは、実際に行動に移すために必要な選択、意志の確認を行い、定着を図るのですが、今回はまさに、奥さまのお願いという必要なできごとが起きて、改めてご自身の意志を宣言する、という流れにつながりました。




決断をすることで、これまでの状況にいて、新しい選択肢が見える。



選択を行うことで、本来の意志を形にする。



自分の意志で選択し、納得して生きる。




自身の意志で、力で、今日を望ましいものに変えるために。