虚偽申告で工場に紛れ込んだゲイの方 | 石元太一のブログ

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 先日、50才過ぎのおっちゃんが作業拒否で

 

工場から去っていった。

 

とにかくわがまま全開のおっちゃんで、

 

「この作業は嫌だ。あの作業がいい」を始め、

 

悩み事があると言っては作業時間中に

 

作業をせずに一人ぼーっとしていたりする。

 

他にも、自分が好きな受刑者と同じ部屋に

 

なりたいからといってあることないことを

 

周囲に言っては部屋替えを目論む。

 

また焼きもち焼きなところもあって、

 

同じ工場にいる若い外国人受刑者が皆に

 

構われていると、突然何の脈絡もなく

 

その外国人受刑者に

 

「今俺のことを馬鹿にしただろ!

 

年下にナメられたくないんだよ!」

 

といちゃもんをつけ、絡み出したりする。

 

それは自分より弱そうな人にだけ発動する。

 

もちろん、繰り返されるそういったわがままに

 

周りも注意をするのだが、すると今度は

 

突然泣き出したり…。

 

またその涙は時に、刑務官や周りの受刑者の

 

アテンションを集める為にも使われる。

 

とにかく極度の“構ってちゃん”で

 

“困ったちゃん”でもあるのだ。

 

以前ガーシーが警察の捜査に関して、

 

「おかんだけは勘弁して下さい」

 

と涙ながらに訴えた時、

 

ひろゆきさんが

 

「困った事があった時に泣くと、周りの人が

 

解決してくれるのは子供と美人だけだと思う、

 

おいらです」

 

といった皮肉な言葉をツイートしていたが、

 

特に受刑者は泣いても解決しない

 

良い一例だろう。

 

 

ひろゆき氏がガーシー容疑者に皮肉 泣いて助けてもらえるのは「子供と美人だけ」

 

 

 悩み事なんて大なり小なり、

 

きっとどの受刑者にだってある。

 

俺だって自分の母親の病気のことを考えたり、

 

家族から最近母の体調が悪いなどと聞けば

 

落ち込むこともある。

 

でも、それはあくまで俺個人の問題であって、

 

他の受刑者には関係ないし、

 

わざわざ話すことでもない。

 

皆それぞれ更生する為に向き合わなければ

 

ならない問題があるのだから、

 

周りに余計な心配や気遣いをさせる必要は

 

全くない。

 

だから俺は気持ちの切り替えを

 

ちゃんと意識して工場に出ている。

 

皆、そうやって自分とうまく向き合いながら

 

刑務所という特殊な空間で生活を

 

しているんだ。

 

それをその構ってちゃんのおっちゃんにも

 

わかってもらいたかったが…

 

自分の都合しか考えられない人には

 

やはり最後まで理解してもらうことは

 

出来なかった…。誰が論すように言ってもだ。

 

 そんな諦めモードの中、新しく工場に来た

 

ある受刑者が驚きの一言を放った。

 

「あのおっちゃん、おかまですよね?

 

刑務所の中でホルモン注射も打てないから、

 

あのように情緒不安定なんじゃないん

 

ですか?」

 

その衝撃的な言葉に俺は思わず、

 

「何を根拠にそう言っているの?」

 

と聞き返してしまった。

 

その事実をまた、ずっと気づかなかった

 

落ち度を認めたくなかったのかもしれない。

 

そんな俺の気持ちをよそに新しく工場に来た

 

受刑者は次々とその理由を列拳していく。

 

 「まず、バラと蝶のタトゥーですよね。

 

バラだけならともかく、蝶まで入れていると

 

いうことは誰かに“飼われている”という

 

証ですよ。

 

誰かの“所有物”だということを周囲に

 

わからせる為に、バラと蝶のタトゥーを

 

掘らせたりするんですよね。

 

あと、あのおっちゃん、全身の脱毛もして

 

いますし、お尻に何か入れていますよ、

 

きっと。

 

あの体型にしては不自然な形をして

 

いますから」

 

 

薔薇(ローズ)のタトゥーが持つ意味とは?

 

 

 それらの理由を聞いていて

 

「なるほどな」と合点がいったのと

 

同時にある疑問が浮かんだので、

 

俺はすかさずその彼に尋ねてみた。

 

「そういえばそのおっちゃん、眉墨だけでなく

 

アイラインも入れているんだよね。

 

それはやっぱり…」

 

「あっはっは!もうそれはガチなやつじゃない

 

ですか、石元さん!」

 

思えば俺がそのおっちゃんがアイラインを

 

入れていることに気づき、

 

「眉墨だけじゃなく、アイラインまで

 

入れているんだ?」

 

と尋ねると、すごく気不味そうな顔をして、

 

その日から少し余所余所しくなったように

 

感じた。

 

もしかしたら気づかれたくないこと、

 

触れられたくないことだったのかも

 

しれない…。

 

でも、まだそれだけでは疑惑を

 

確定するわけにはいかない。

 

新しく工場に来た受刑者に

 

「他にも何か疑わしいところはある?」

 

と更に掘り下げるように尋ねると、

 

「座り方」と即答した。

 

 「グラウンド運動の時、私がベンチに

 

座っていたら突然隣に座って来て話し掛けて

 

きたんですけど、座る前にハンカチで

 

ベンチを軽くはたいた後、両膝を合わせて

 

足を斜めにしながら座ったんですよね。

 

それってもう、女性の座り方ですよね?」

 

確かに言われてみれば、そのおっちゃんが

 

股を広げて座っている姿を見たことが

 

なかった。歩き方もすごく小股で、

 

時にお尻を左右に振りながら

 

歩いていることもあった。

 

一度そのおっちゃんから、「よく周りの

 

人達から馬鹿にされることがあるんですけど、

 

どうすればなくなりますかね?」

 

と尋ねられたことがあったので、

 

「普段の歩き方や姿勢にも少しは原因が

 

あるんじゃないですか?いつも歩幅も狭く、

 

下を向いて歩いているでしょ。

 

あれってすごく自信がなさそうにも、

 

気が弱そうにも見えるから、

 

普段から胸を張って顔を上げる癖をつけた方が

 

いいですよ」とアドバイスをしていた。

 

だが、それでも一向に直らず。

 

もうそれは強烈な癖となっているっぽかった。

 

 新しく工場に来た受刑者は明くる日、

 

俺にこのようなことを言ってきた。

 

「なぜ皆あのおっちゃんのことを工場から

 

追い出さないんですか?他の刑務所だと

 

ゲイだとわかった瞬間工場から出されますよ。

 

だって同じ工場の仲間のことを性的な目で見て

 

食い物にするわけですから」

 

 普通は入所する時にゲイなどの方は

 

自己申告をし、そういった方達だけがいる

 

工場へと配役される。そういった工場は

 

もちろんここ横浜刑務所にもある。

 

が、中にはそういった工場に配役されるのを

 

嫌い、刑務所側に虚偽申告をして一般工場に

 

紛れ込んでくるゲイの方もいるみたいだ。

 

そういったことはとても

 

デリケートな問題なので、

 

身体をカスタムでもしていなければ

 

刑務所側も性善説、自己申告に委ね、

 

判断するしかない。

 

非常に難しい問題だ…。

 

 

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