台風がどうやら凄かったらしい。
残念なことに、中にいると天候に
少しずつ無関心になってしまう。
まぁ、晴れの方が気分はいいし、
面会に来てくれる人達のことを
考えれば、平日は毎日晴れて欲しいが。
台風と言えば１つ思い出す出来事がある。
「反証」の中で出て来た、昔コンビニの前
で俺からぶっとばされたと言っていた人間の
ことなんだけど、そいつがある時
「実は太一君達のことを見掛ける度に、陰で
台風が来たなんて逃げていました。」
と突然のカミングアウトをしてきた。
本当に余計なカミングアウトだ（笑）
彼の話曰く、
「ぶっとばされた時は自分たまたまコンビニで
立ち読みしていたんですよ。そしたら、外に
停めてあったバイクに太一君達が気付いて
取っ捕まりました。いやぁ、一生懸命
本に集中しているふりをしていたんですけどね。」
という出来事だったらしい。
彼は笑いながらその時のことを面白おかしく
語っていたが、その頃の俺達はパンチパーマや
暴走族のように改造しているバイクを見たら、
片っ端から検挙していたのだから、彼らから
台風だなんて陰口を叩かれていても、それは
仕方が無い。
ただ彼の話はこれだけでは終わらない。
俺がまだ湾岸留置場にいた頃、普段通り
運動場に行くと、他の人達が彼に
「ほら、石元さんが来たぞ！頼むんだろ！」
「石元さん、彼が何か話があるみたいですよ」
なんて笑いながら話していた。俺は気になって
「何だよ、どーしたの？」
と彼に尋ねると、突然土下座をし出し
「お金を貸して下さい！」
と。
それを見て、担当さん達も含め、皆大爆笑。
別に普通に頼めばよいものをと思ったけど、
そこまでされると何だか逆に俺が悪い事を
しているような気分だった（笑）
過去の罪滅ぼしではないけれど、返さなくて
いいからと言って、彼にお金を差し入れした。
これでもう２度と彼から台風なんて呼ばれる
ことはないだろう（笑）
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