市場で、ごく希にうなぎ(ニホンウナギ)を見かけることがあります。海で獲れた天然うなぎですが、どこで育ったのだろうかと不思議に思います。
ニホンウナギは、約2000キロ離れた太平洋のマリアナ諸島付近の海で産卵すると推定されています。その後、海流に運ばれながら成長し、日本の沿岸にたどり着きます。その稚魚が河川に遡上し、5~15年生活し、成熟すると生まれた海へ戻っていきます(ただし、河川に遡上せずに沿岸で生活する個体も少なくないそうです)。
能登半島の海で獲れるニホンウナギはどこで育ったのでしょうか。マリアナ諸島付近で生まれたのは間違いないでしょう。その後、海流に運ばれ能登半島にたどり着いたのでしょうか。
その可能性もありますが、実は西日本、特に太平洋側に多くの稚魚がたどりつくことがわかっています。
一方、加賀地区の柴山潟や大聖寺川、富山県の庄川では地元の内水面漁業協同組合がニホンウナギ幼魚の放流を行っています。これらの幼魚は養殖業者から購入したものです。
養殖業者は、天然の稚魚を購入して池で育てます。その稚魚は、主に西日本の沿岸にたどり着いたものや中国などの海外から輸入したものです。
つまり、マリアナ諸島付近で生まれ、日本や中国などの沿岸にたどりついた稚魚が、養殖業者の手にわたり、さらに内水面漁業協同組合の手にわたった後に河川へ放流され、河川で生き残ったものが海に降りて漁業者に漁獲されるという経歴を、能登のうなぎは持っているのではないでしょうか。そんな気がするんです。
ところで、ニホンウナギの稚魚採捕量は、1963年に232トンを記録して以降、減少傾向を示し、1984年以降は20トン台以下の低迷状態が続いています。2019年には4トンたらずの不漁でした。
ニホンウナギの資源が昔のように復活すれば、能登半島の河川にも稚魚が普通に見られるようになるのではないでしょうか。
私が子どもだった1960年代、生まれ育った中能登町の川にもうなぎ取り用の竹筒が仕掛けてありました(獲れたかどうかは知りませんが・・・)。そんな時代が再来することを願うばかりです。
市場のニホンウナギ(シマフグと一緒に活かしてある)
七尾市の舟尾奥原潟でも昔はニホンウナギの稚魚放流が行われ、竹筒を使った漁が行われていました。
昔、七尾市内の料理店で食べた天然うなぎの丼は、見たことのないような分厚い蒲焼でした。美味しかったなぁ。
舟尾奥原潟のうなぎ漁
七尾市内の料理店で食べたうなぎの丼