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日本音楽のなぜ?
ー 歌舞伎・能楽・雅楽が楽しくなる

著・竹内道敬
(左右社)





普段生活していて全くと言ってよいぐらいに触れる機会がないのが日本音楽である。
日本の伝統音楽と言った方がよいか。
しかし、そもそも日本の音楽ってなんだろう。

1300年以上の歴史がある「雅楽」
600年以上の歴史がある「能楽」
400年以上の歴史がある「三味線」音楽

歴史的に言えば大きくこの三種類にはなりますが、
これらは伝承という形で現在でもほぼ当時の姿のままで聴くことができます。
この他にも民謡、神楽、端歌、小唄、わらべ唄、
明治以後の学校唱歌、軍歌、、歌謡曲…様々ではありますが、どれも日本音楽であります。



「雅楽」は奈良時代に中国(唐)からやってきた(輸入した)、
「舞楽」を「舞」と「楽」を分けて、「楽」だけを「雅楽」として日本化したものだと云われています。
日本独自の特色がある「雅楽」は奈良時代から現在まで伝承されてきています。
しかし、雅楽は日本化されたものではあるが中国の音楽と言えなくもない。

1300年の歴史がある雅楽にはつい最近まで新曲がなかったそうだ。1970年代頃から新曲が創られるようになってそれらは現代雅楽と呼ばれています。
代表作は武満徹の「秋庭歌一具」でしょうか。
昨年は武満徹没後20年ということで武満作品が数多く演奏されましたが、秋庭歌一具も演奏されテレビで放送されました。
これがあまりにも圧倒的だったのです。
コンテンポラリーなダンスとの融合という異端なプログラムだったのですが、あんなに幽玄で美しく宇宙的な(あまりも抽象的ですが)「音楽」だと初めて気がついて、かなり衝撃を受けました。

これを観た(聴いた)のがきっかけになり、
日本の「伝統音楽」について、ゆっくり少しずつ聴いたり調べたりし始めたところで、この書物を見つけました。



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「日本音楽のなぜ」は、放送大学「人間の探究」コースの「日本音楽の基礎概念」の講座の参考として、
「日本音楽のなぜ」の副題で書き下ろされたものを基にして新たに書き直されたものだそうだ。

おもしろくない、つまらない、難しいと敬遠してしまう日本の音楽について、分かりやすく書いてあるので、ありがたい。
このような専門知識本は、難しいことをより難しく書かれている物が大半だと思いますが、難しいことをやさしく分かりやすく書いてある本はないものかなぁと探していたところでありました。


日本には日本音楽があるのか
なぜメロディーがないのか
なぜノリが悪いのか
なぜ何を言っているのかわからないのか
なぜ指揮者がいないのか
どのように伝承されてきたのか
どのように作曲されるのか
なぜ流儀・流派がらあるのか
なぜ立って演奏してはいけないのか
なぜ語尾を震わせるのか
なぜ金属製の楽器がないのか
なぜ調律・調弦をしながら演奏するのか
なぜ聴く機会がないのか
伝統芸能・伝統音楽とは何か
日本音楽の特色と未来


15章に分かれていて、
「あ、そうそう」と思っていた「なぜ」について、書かれている。
すべての「なぜ」に答えているわけではないし、すっきり解明というわけでもないのだが、
分かりやすい文体なのでするりと読める。


「日本の伝統音楽は演奏家育成を第一として、
聴く人(鑑賞者)を育てて来なかった。
文明開化、江戸時代からのツケが今になって回ってきている。大事なのは聴く人を増やすことです」
と、本の最後はこう締めている。