昨日、市川猿翁さん、市川段四郎さんのお別れの会
「澤瀉屋 送る会」が開かれ、
市川中車さんが取材で、猿翁さんとの思い出を聞かれ、
父親と会うことがなく育った中車さんが25歳のときに、
意を決して、公演中の猿翁さん(当時は猿之助さん)の楽屋を訪ねると、
父は怒り、「あなたは息子でもなんでもない。帰りなさい」
と告げたと。
しかし、そこで父親と入れ違うように顔を合わせた叔父の段四郎さんは
太陽のような笑顔で「よく会いにきた。よかった」と言ってくれたと。
さらにさらに続きがあって、
この後の舞台で猿翁さんは、ずっと泣きながら演じていた
ということを、中車さんは後になって一門の人から聞かされたと。
まるで一つのドラマ作品のような流れです。
楽屋を訪れたときの父の対応が冷たいものだったということは
これまでも何度か語っていたけど、
その後の
段四郎さんが優しく応対したことや、
猿翁さんが舞台で泣いていたことは
聞いたことがなく、
そういうこともあったのかと
しみじみとしてしまいました。
しかも猿翁さんが泣きながら演じたのが
「義経千本桜 四の切」だという。
鼓の皮に使われた親狐を慕う子狐が登場する話。
この日の演目がこれだったというのも
何とも言えません。
歌舞伎好きとしてはたまらない気持ちになります。
市川猿翁さん、市川段四郎さんのご冥福を心からお祈り申し上げます。