日本の尊厳と国益を護る会の台湾問題分科会にて、「台湾・日本経済の脱中国依存の可能性と限界」の勉強会が行われました。



会では日本貿易振興機構アジア経済研究所地域研究センター・上席主任調査研究員の川上桃子先生と、明星大学教授の細川昌彦先生にご講演頂きました。

川上先生には「台湾経済の脱・中国依存:展開と展望」と題して、台湾経済の中国経済の関係をお話しいただきました。
1979年から2016年までの中国は、経済交流の拡大を通じて統一促進をする「平和統一」を目指してきました。台湾の対中投資も増加し、中国に進出した台湾企業が人質に取られるような形で中国への依存度が増していったといいます。特に馬英九政権時には台湾農作物の輸入優遇や観光客の送り出しをはじめとした経済的な台湾優遇に加えて、メディアの買収など台湾世論の取り込みが行われ、台湾側は経済発展と自立性のてんびんに揺られる形となりました。
しかし、2016年以降中国は「軍事」「情報」「経済」などの組み合わせを通じた圧力行使に重点を移しており、米中貿易摩擦や香港危機、コロナ、台湾の半導体産業などの要素を通して以前より中国への経済的依存度は減少しているということでした。

細川先生には「台湾との経済関係~半導体を中心に~」と題して、半導体を通した日本と台湾の経済関係についてお話頂きました。
TSMCをはじめとした半導体産業は台湾経済を支える大きな要素であり、コロナ禍における世界的なリモート・巣ごもり需要にてより大きく広がりました。
半導体の性能は軍事に利用されるAIやIT機器の性能に直結することもあり、経済安全保障だけでなく安全保障上にまで関わる話になってきています。
ロジック半導体の生産能力シェアをみてみると、15nm以下(AIやスパコンに使用される)は92%を台湾が占める構造になっており、その製造は台湾に依存しています。しかし、エコシステムを考えると、部材の日本シェアは高く強みになります。
また、半導体はその技術水準(回路線の幅)によって用途分けがされており、車載用や家電用になる20nm~40nmの半導体は誘致したTSMC熊本工場で生産できると言います。大きな枠組みでの半導体産業に固執することなく、自国の強みを生かした経済関係を構築することが求められているとお話されていました。