ほとんど話題にはなっていませんが、今国会で銀行法の改正が予定されています。

 

地方銀行の合併・統合を促進するために、システム統合費用を交付することや出資規制の緩和が盛り込まれています。これにより、金融機関の業務範囲が拡大することになります。

ゼロ金利政策とコロナ禍で収益を挙げられなくなった金融機関を救済する名目で、金融関連の業務で収益を挙げさせようとするものです。

果たしてそれで良いのかと疑問に思います。

 

金融機関は、出資比率5%が上限と定められており、それがなければ豊富な資金力を背景として、地方経済においては支配的な存在になり得ます。そのため、業務範囲も厳密に定められています。

そもそも金融機関は、信用創造(融資)によって企業を育成し、伴走しながら利益を挙げていくことが本来の機能ではないでしょうか。それには、金融機関は事業の将来性を見極める能力が不可欠です。しかし、金融機関にその眼力が弱くなってきているのではないかと以前から指摘されてきました。日本でベンチャー企業が育たない理由の一つにさえ挙げられています。

 

金融機関が、儲かっている業界に出ていけば、確かに儲けが出るでしょう。しかし、そこで生きてきた業界にとっては死活問題です。特に不動産事業は金融機関の持つ川上情報が利益に直結するため、金融機関が自ら不動産事業を行えば莫大な利益が産み出せます。

それを以前の会議で指摘し、金融庁には釘を差してきました。その結果、今回の法改正で不動産事業は除外されました。

 

前回の改正で、Fintech事業への範囲拡大をしました。しかし、メガバンクのATMのトラブルひとつを見ても、まだその領域に達しているとは到底思えません。

 

地方銀行にとって厳しい事業環境にあるのことは重々承知しています。支店の統廃合もやむを得ないと思います。しかし今こそ「貸すも親切・貸さぬも親切」と言わしめる銀行マンの本来の姿に立ち返って欲しいのです。