この問題は非常に根深いものがあります。
キャリア官僚のキャリアパスが不透明になってきたことや、報酬に比べて過酷な労務環境も影響しているのです。
特に経産省は、他省庁に比較して民間企業と接触する機会が多いため、優秀な人材が欲しいベンチャー企業からのお誘いも多いのだと思います。生産性の高い分野に人材が流れることで、日本全体の生産性が高まるので一概に悪いことではありません。
しかし、大学の同級生が、育休や有給休暇をしっかり取れて、自分より何倍もの報酬を貰っていれば心が揺れるのも理解できます。
このままだと、中央省庁から優秀な人材の流出は止められません。長期的には国力の低迷に歯止めが掛からない一因となるでしょう。

国も地方も公務員定数を削減し、人件費を低く抑え、行財政改革に邁進してきました。緊縮財政が国民の支持を集めたからです。
そのしわ寄せで、地方分権による地方自治体の仕事が激増しています。地方分権は、国にとっては地方自治体への仕事の移転なので負担軽減につながります。しかし、地方自治体では市民や議会の手前、正規職員を簡単に増やせないので、非正規職員に仕事を任せるしかありません。地方自治体で非正規職員が増えるのもこうした構造になっているからです。

国は、国家公務員の定数削減目標を満たすために、国の出先機関の数千人もの職員を削って対応してきました。昨年の被害を受けて、ある河川事務所では実に数十年振りに新人が1名配属されたと喜んでいました。経験則が必要不可欠な現場職員が削られてしまったために、地方インフラは老朽化し、災害時には持ち堪えることが出来なくなりつつあります。

長く続いている「緊縮財政」が国も地方も疲弊させ、若者を使い捨てするような残念な国になってしまったのだと思います。