ベーシックインカム(給付制度)と軽減税率から館山市の政策を考える | 館山市議会議員「石井としひろ」のブログ

ベーシックインカム(給付制度)と軽減税率から館山市の政策を考える

海外では「ベーシックインカム」、日本では「軽減税率」という政策がニュースを賑わしています。

まず、ベーシックインカムという政策ですが、簡単な例で言うと、金持ちでも生活困窮者でも病人でも一律に、1人年間100万円(この金額は一例です。)を支給し、それで、年金・生活保護・医療費・失業手当・教育費など全てをまかないなさいというものです。

現在は、福祉にしろ、教育にしろ、1つ1つきめ細やかに、支給するしないを行政がきめているわけですが、それを全部まとめることによって、公務員の仕事がなくなるわけです。つまり、行政コストがほとんどタダになるということになります。給付を受ける方も、面倒くさい申請も不要になりますし、制度が簡単なので、本当はもらえるものを知らずにもらえないということもなくなります。

さて、結論から言うと、私はこの政策を支持しません。

理由は主に2つで、もし治療費が、年間100万円を超える大病に罹った場合、貯金がなければどうしようもならなくなります。つまり、100万円で駄目なら死ぬようなケースでも助けない、ということです。本当の意味の弱者が救済されません。

もう1つの理由が、やはり年間100万円の支給があると、勤労意欲をそぎ、働かない人が増えることが予想されます。つまり、本来、給付すべきでない人に給付するという事態が多く生じるからです。

ところが、フィンランドとオランダで、現実にベーシックインカムの導入に向け動いています。もちろん、両政府とも私が指摘している欠点は知っているはずです。だから、具体的にはどういった形で制度設計していくのか、そしてどういう結果になるのか注目です。

この政策と日本は無縁であるかというと、実はそうではありません。1回限りですが、麻生政権で平成21年に定額給付金という国民全てに12000円を支給するという政策が実施されました。これは、金額は小さく、1回限りで、若者と高齢者には金額増がありましたが、基本的にはベーシックインカムと同じ仕組みです。

「愚策」「バラマキ」と批判されたのは記憶に新しいところです。


さて、次に軽減税率を検証しましょう。

実は、この政策は、ベーシックインカムや麻生政権の定額給付金よりも、タチが悪いのです。これをやるくらいだったら、定額給付金を毎年やる方がマシです。

食料品が軽減税率の対象になるわけですが、やはり高所得者の方が、同じ食品でも高いものを買います。牛肉でも外国産の安いものより、高所得者は高い和牛を買うかも知れません。

財務省試算によると、軽減税率を導入すれば、しなかった場合と比べて、年収200万円未満の世帯だと年間約8千円のプラスがでますが、年収1500万円以上の世帯だと約1万7千円のプラスになるそうです。

消費税で8千円減税するのと、給付によって8千円を配るのは原理としては同じです。

であるならば、年収200万円未満の方々に8千円を給付し、年収1500万円以上の方々には1万7千円を給付する制度と同じになります。高所得者により多くの給付金を配るような制度に合意する国民はいるのでしょうか?

それならば、一律8千円を定額給付金で配った方がマシでしょう。現在の安倍政権がやろうとしている軽減税率より、人気のなかった麻生政権の定額給付金の方がマシなのです。


なお、軽減税率は世界的には既に否定されている制度です。ヨーロッパでは軽減税率により、税制が複雑怪奇となり、膨大な事務コストが発生し、また利権の温床となっています。とはいっても、一旦利権の温床になると、複雑怪奇な既得権益が発生し、もはや元に戻すのは不可能な状態になり、ヨーロッパ各国では後悔していますが、後の祭りです。

ゆえに、OECDでは、軽減税率を導入しないように勧告しています。

日本でもかつて物品税というのがありました。私もかつては輸入納税申告の仕事をしていた時代があり、先輩達がよく、「物品税が廃止されて良かった。あの複雑な納税申告は本当に大変だった。」と言っていたのを覚えています。

宝石・毛皮・電化製品・乗用車・ゴルフクラブなどのぜいたく品が物品税の対象とされていましたが、竹下政権が消費税3%を決めた時に、この煩雑な物品税は廃止されたわけです。

要は、日本でも、かつて物品税という軽減税率に似た制度を導入しており、それに懲りてやめているのです。だから、新たに軽減税率を始めようというのは、日本においても過去の歴史に学んでいませんし、また世界の潮流に逆行した行為です。


軽減税率よりも、定額給付金などベーシックインカム的な制度の方がマシだという結論しか出て来ないわけですが、それでもなお自公政権が、軽減税率に固執するのか?よくわかりません。

ほとんどの経済学者も軽減税率には反対しています。ほとんどの憲法学者が憲法違反として反対した安保法制を推し進めたのと同じく、学問や論理を軽視する「反知性主義」が安倍政権の特色なのでしょうか。

繰り返しますが、軽減税率と比べれば、定額給付金の方が良いのです。失敗でも制度がシンプルなので、簡単に廃止できます。


ただ、それでも私は定額給付金に反対です。

もっと、厳密に目的を限定した給付にすべきです。

となると、参議院選挙対策のバラマキと批判されている「高齢低所得者へ3万円給付」という政策にも一定の合理性が出てきます。確かに、高齢の低所得者は生活に困っています。全体的に高齢者というのは若者より圧倒的に裕福ですが、一方、格差の激しさは若者の比ではなく、高齢の低所得というのは本当に厳しいのです。

しかしながら、1回きりというのは、わけがわかりません。もし、本当に必要であれば、1回に3万円ではなく、月2500円を毎月、そして来年も再来年もずっと支給し続けるべきでしょう。社会保障政策に1回きりというのはありえません。


館山市で独自にやっている社会保障政策に1回きりはありません。

例えば、館山市でも子供の通院医療費に対して、小学6年生まで援助を行っています。さらに、時期は示されていませんが、中学校3年まで伸ばすことにしています。

また、中学生までの、スクールバスを含む遠距離通学費を、平成29年4月から無料にすることも昨年末に決定しました。これも、言い換えると遠距離通学費の給付です。

こういった必要性の高いものに目的を絞った継続的な給付が望ましいと私は考えています。

さて、館山市政でこれから争点になるのは、町内会で負担している防犯外灯の修理費や電気料金を、館山市に移管するか否か?です。LED化の推進と合わせて議論になっています。移管されれば、町内会費が安くなるか、さらに会費が上がるのを防げます。これも、言い換えると、防犯外灯費用への給付政策です。

軽減税率でもなく、ベーシックインカムでもなく、税金を使うならば、必要なところを絞り、継続的に支出すべきです。これって、当たり前のことですよね?