今年も8月15日が近づいて来たので。
今回見たのは岡本喜八版。
役所広司が阿南陸軍大臣を演じた2015年の原田眞人版は、かなり重要なシーンがバッサリ割愛されている感があり、やはりなんと言っても白黒の1967年版こそ至高。
若き黒沢年男と中丸忠雄の、血走った目が印象的な、汗みどろのまさに狂気あふれる名演。
そして日本映画の大御所俳優をずらりと揃えた鈴木貫太郎内閣の円卓会議。
軍部、特に日本陸軍中枢部の、まるで国民を顧みないナルシズム、ヒロイズム、そしてロマンチシズムによる悲劇。
そして対象的にリアリストであり、もはや現実を受け入れざるを得ない覚悟と、信念の鈴木貫太郎ら文民政治家。
天皇にあのような事を語らせるに至ったことに、思わず椅子から崩れ落ち、嗚咽する閣僚の姿。
軍部の暴走を止めることができなかった忸怩たる思いと、多くの犠牲者を出したことに対する自責の念。そのあたりを日本映画を代表する東宝の俳優たちの迫力の演技。
対して三船敏郎が演じる、敬愛する天皇と、配下の陸軍将校たちとの板挟みに葛藤する阿南大将(陸軍大臣)の苦悩。
2時間半を超える長尺の映画でありながら、全く長く感じない緊迫の演出、実に傑作。
横浜守備隊の狂気溢れる天本英世のアジテーションと、学生のポケットから見えるボロボロになるまで読み返された岩波文庫。倉田百三の「出家とその弟子」。
純粋で良識ある精神性と、テロに向かう青年の姿という相反性。強烈な皮肉。
二度とこのような愚かな戦争をしてはいけない。とこの時期に見返すことによって改めて思う。
2023年8月