2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻は、開始から2年を迎える。
昨年春から夏にかけては、ウクライナによる反転攻勢への期待あったが、現在戦線は膠着している。
欧米を中心とする支援にも限界が見えてきて、一部には、ロシアの占領をみとめて停戦するというシナリオも出ているそうだ(情報戦かもしれないが)。
2023年10月には、パレスチナのガザ地区において、ハマスとイスラエルの大規模な戦闘が開始される。
イスラエルが、ハマスが消滅するまで戦闘をやめないと宣言しているため、収束の道筋が見えない。
北朝鮮の挑発的行為は大規模戦闘に至っていないものの、台湾併合を国家目標とする中国の動きとあわせて、東アジアの不安定要因となっている。
ウクライナ、パレスチナ、朝鮮半島、文明の境界点にあり、ある意味大国の都合で、世界が置き去りにした地区でもある。
自分の理解している範囲で、このことについて、今の想いを書いておく。
1918年に集結した第一次世界大戦の結果、ドイツではワイマール共和国が成立。
理想の民主主義国家として再建されたが、ベルサイユ体制による巨額の賠償金支払いと、世界恐慌の影響で、わずか14年で消滅。
ワイマール共和国というのは戦勝国による押し付けの国家で、ドイツ人による、ドイツ人の国家を創建するといって登場したのがナチスドイツ。
1937年にはオーストリアを併合、1938年にはチェコスロバキアを解体してしまうが、国際連盟を中心とする国際社会はこれを黙認していた。
また、ナチスドイツが政権を握った1933年からユダヤ人への迫害が開始されるが、これに対しても有効な手を打つことができなかった。
1939年に、ポーランドに侵攻するに至って、英仏がドイツに参戦し、第二次世界大戦が開始される。
ナチスドイツは、英仏とソ連(当時)との二正面作戦を避けるため、ソ連と不可侵条約を締結、ソ連はその見返りにポーランド、バルト三国、フィンランドに侵攻・占領している。
1941年日本の対英米宣戦によりドイツも米国に宣戦するが、1945年日本の無条件降伏によって、第二次世界大戦は終結、連合国が勝利する。
しかし戦後の処理をめぐって連合国は分裂、冷戦が始まる。
1991年のソ連崩壊で冷戦は終了し、世界平和が訪れると期待されたが、東ヨーロッパ諸国がNATOとEUに組み込まれたことで不安定が増大する。
これ以上のNATOとEUの拡大を望まないロシアは、2014年にクリミアを併合し、欧米がこれを黙認してしまう。
そして2022年2月、反ロシア親欧米を鮮明にするウクライナを奪還するため、全土への侵攻を親始した。
ロシアのプーチン大統領は、当初ウクライナをネオナチ政権から解放する戦いと言っていたが、現在は欧米の陰謀からロシア国民を守り、偉大なるロシアを復活させるために戦うと宣言している。
第一世界大戦に勝つため、アラブ人・ユダヤ人双方の支持を得るとともに、戦後の支配バランスを確定したい英国は、三枚舌外交を展開する。
1915年のフサイン・マクマホン協定では、オスマントルコ帝国の領土内のアラブ人首長にたいして、戦勝後、国家を与えることを約束。
1916年には、戦勝後、中東を英仏で分割管理することをサイクス・ピコ協定で確定。
1917年にはロスチャイルドをはじめとするユダヤ人財閥からの支援を得るため、バルフォア宣言によって、英国管理下になるはずのパレスチナの地に、ユダヤ人国家をつくることを約束していた。
ナチスドイツとソ連によるユダヤ人迫害を逃れて、大量のユダヤ人が流れ込んだパレスチナは混乱の極みに達して、英国は第二次世界大戦終結後その管理を放棄する。
1947年の国連決議で、パレスチナの地にユダヤ人とパレスチナ人の国家をつくることが決定して、イスラエルが建国されるが、もとから住んでいるパレスチナ人をどうするのかは置き去り。
イスラエルと、パレスチナ難民を受け入れたアラブ諸国との幾度かの中東戦争は、冷戦時には米ソの代理戦争の様相も呈する。
冷戦の終了と、中東への米国の関与の変化で、和平への期待が高まった時期もあったが、双方の不信と怨恨が根強く和平には至らず。
米国を中心とする国際社会がイスラエルに対して強硬な措置に出ないのは、ナチスドイツによる迫害を防ぐことができなかった反省があるからと言われている。
アジアでも国際社会が置き去りにした地域がある。
清朝末期の混乱に乗じて清国(当時)と戦争を行った日本は、戦勝したことで、朝鮮半島の支配権を清国に放棄させる。
これをみたロシアの手が朝鮮半島に及ぶのを防ぐため、日露戦争が開始される。
ロシアの南下を防ぎたい英国、ロシアにおけるユダヤ人迫害に抗議するユダヤ人財閥からの支援をうけ、さらに戦争の拡大による大陸の混乱をさけたい米国が仲介したことで、日本が勝利し、1910年に大韓帝国(当時)を併合、中国東北部(満州)における権益も手に入れる。
日本からすると、多額の戦費と大量の人的損害を払っているので、当然の戦果と思っていたのだが、混乱していたとはいえ清国も大韓帝国も主権国家であり、力によってこれを我が物にすることは許されない。
日露戦争の権益の期限が迫るなか、中華民国(当時)に強制的に期限を延長させたうえで、さらに権益を確固とするために起こしたのが1931年の満州事変。
当初、日本軍は戦果によって、満州を日本領にしてしまうつもりであったが、天皇と政府の不拡大方針、国際社会からの反応から、傀儡国家をつくって支配することになった。
これを中華民国が国際連盟に訴えて、1932年リットン調査団が派遣される。
リットン調査団の報告書は、満州国は日本の侵略行為でできたもので、独立国としては認められないと認定するが、一方で日本が持っている権益については認めて、中華民国との間に改めて条約を締結すればよいという、日本よりの判定でもあった。
昭和天皇が戦後の回顧録で、これを鵜呑みにすればよいとする判断もあったのだが、政府・軍・世論ともに、これは白人至上主義、有色人種蔑視の判定で、日本がどれほどの犠牲を払って得たものか理解していないということになり、第一次世界大戦の戦勝国の一員だったのが、世界から孤立する国になってしまう。
1945年の日本の無条件降伏により、朝鮮半島は独立を回復するが、民族の想いとは関係なくソ連と米国が38度線で分割管理することになる。
1950年の朝鮮戦争を経て未だに解決せず、71年間停戦したままになっている。
同じく1945年に日本の支配を脱した中華民国は、ソ連の支援を受けた中華人民共和国と、欧米の支援を受けた台湾(中華民国)に分裂してしまい、この状態も未だに解決していない。
ここまで書いて感じたことは、
1900年代初頭から開始された、文明対立の100年戦争である。
三つとも、ロシア、西ヨーロッパ、米国が関係している。
その地にいる民族の主権は全く尊重されず、大国の思惑で事態が動いている。
いつもように、だからどうすればよいのか結論はない。
第三次世界大戦になって、100年戦争を終わらせるというのは最も起きてほしくないシナリオ。
なんとか妥協点をみつけて、人々が安全に暮らせるようになってほしい。
東アジアの不安定要因の原因を創った国であることと、文明の対立ということでいうと、どちらの文明にも属さない日本の役割があると思うのだが。