年に何度か取引先の人に誘われて食事へ行くことがあります。要するにご接待ってことですね。ただ接待というものは、する側とされる側の予定調和というか、協力関係がないとなかなか上手くいかないもんです。その点でいうと、僕はかなり扱い辛い人間じゃないかと思うんですね。
何せ王道であるゴルフ談議ができません。食事の席では、さほど親しくない人とでも、ゴルフの話さえできれば二時間くらいあっという間です。
ところが僕は名門コースの名前もプロゴルファーの名前も知らないし、1ゲームが何ホールあるかもよく判らない、聞いても憶えない。テレビもほとんど観ないので、ドラマや人気女優の話もついていけない。マイクを渡されても最近の歌はまったく知らず、井上陽水の、しかも「帰れない二人」とか歌いだす。そして酔っ払うと
釣りの話を始める(-_-;)
以前、とある人に「だっておめぇ、それ魚が喰いつくの待ってるだけじゃねぇか、違うのか?」と言われたことがあります。この人は僕よりも10歳くらい年上の方で、しかも超が付くほどの一流商社マンなんだけど、超が付くほど口が悪く、身からでたサビで僕みたいなペーペーと付き合う羽目になっている人です。ただ、この物言いはさすがといいますか、僕を挑発し、ムキにさせておいて、そして投げ釣りの素晴らしさを熱く語らせよう、客に喋らせてこっちは適当に聞き役に回ろう、という周到な計算があります。どうだ、俺を納得させてみろ、という挑戦的な投げ掛けに対し、僕はつい、
そうです、待ってるだけなんです
と答えてしまい、酒席を思い切りシラケさせてしまいました。
さすがにこれではマズいと気付いて、いや~釣りもそうなんですが、明日はどんな仕掛けで釣ろう、なんて考えながら準備して、そして海に行く、というプロセスが半分目的になってるんですよね~それでほとんど満足しちゃう、、、みたいな?(ニッコリ(^-^)v。。。と答えると、相手もさるもので、ん~それは俺も何となくわかるな~などと適当にまとめてしまい、スパッとこの話題を終わらせやがりました。
さて、このおっさんに限ったことではないのですが、投げ釣りの魅力を人に伝えることはなかなか至難の業です。
以前、別の日記でも触れましたが、「投げる」という所作に快感を感じない人は投げ釣りなんかやりません。これは様式美なんです。
だってね、魚を捕獲する技法としては相当に効率が悪いと思いますよ。
中層や表層の魚だって釣れるかもしれないというのに、頑なにウキは付けない。飛ばせなくなる、というかもしれませんが、磯竿を使ったカゴ釣りでも7~80メートルなら普通に皆さん投げてます。表層から底層まで自由自在、しかも撒き餌が使える。仕掛けを潮に乗せれば広範囲を探ることができ、竿も一本で済む、などなど、投げ釣りはかなり形勢が不利ですよ。
ただカゴ釣りだとスピンや赤サーフやバトルサーフは使えません。そんなの使ってたらただのアホです。使ってる竿が高価であればあるほどアホが際立ちますよね。
しかしこの、スピンや赤サーフが、つまり投げ竿が使えない、そのことにガマンがならないわけです、僕は。そんなの投げ釣りじゃねーよ、だったら釣りなんかやめてやる、くらいにこの様式を愛しているのです。
もちろん投げ釣りが有利なポイントだってありますよ。100m以上投げなければならない、30m近く水深がある、あと潮が早い場所も投げ釣りは有利ですね。であればもっとフレキシブルに、場所に応じた釣り方をすればいいのに、決してそれはやらない。なぜならそれは投げ釣りではなくなってしまうから。
極端ですが、こうして三脚にセットされた投げ竿を眺めているだけで、酒が飲めます。ずっと眺めていると釣れませんが。
投げ釣りでもう一つ好きなところは、寝転がってボケっとしていても釣れることがある、という大雑把なところですね。こういったジャリまじりの浜で寝転がりながらアタリを待つのが大好きです。
冒頭の話じゃないですが、まさに魚が喰いつくのをただ待ってるだけ、という、そんなスローな釣りは投げ釣りの真骨頂だと思います。
こんな感じでアタリを待っていて、それで釣れた、という経験はそれほど多くはありませんよ。打ち返しは大事です。なのにやってしまうのは、何としてでも魚を釣って持って帰るのだという強い思いに欠けるのでしょう。三脚に竿が並んでいるのを眺めるのが好きなのは、三脚に竿が整然と並んでいる、それだけであたかも本格的な釣りをしているような、今オレって本格的に釣りしてるよな~(^-^)そんなオレかっこいい☆
みたいな、そんな気分に浸れるからなのです。
以上のことをまとめると、僕が投げ釣りが好きなのは、僕が様式美を愛する融通の利かない頑固者で、その上だらしがないくせに人一倍他人の目を気にするナルシストだから、ということになりますね。こいつ最悪だわ。