『落下の王国 The Fall』  (ターセム 2008年)


なんともへんてこなストーリー。でも、このへんてこさは好き。

映画って、本来、こういうものだったんじゃないかな。

現実と現実をつなぎ合わせて、ファンタジーを創る。

そういう意味で、映画の底力をショッキングなほどに思い知らせてくれるパフォーマンスでした。


CGだらけの映画の中で、今の時代、ホンモノにこだわることが、どれだけ勇敢か。

「夢は世界を駆けめぐる」って言葉のように、国籍不明で、でもどこの子供でも想像しそうな冒険物語。

それを現実の映像からおこしていく、映画は究極の大人の遊びなのかもしれない。


いろいろな世界遺産を舞台に物語は進行していくけれど、ちょうどいい具合に自然遺産と人工建造物が混ざっていたのが印象的だった。宮殿と砂漠、珊瑚礁みたいに。

動物や精霊や火の役割の割合も、人間一辺倒じゃない世界観が感じられて、さらにスケールを大きくしていたように思う。


冒頭の音楽と絵のような映像からして引き込まれる。

そう、なんだかどこかにお手本となる絵があって、それに似た風景を撮っているような感覚。

いやがうえにも高揚させられる音楽は、いったい誰だと思ったら、オゾンやデプレシャンでも起用されているレヴィ。どうりで。


技術を駆使して、映像の限界に挑むのもいいけど、こういう映画の原点を掘り下げる、映像美とイマジネーションと音楽で映画の本質に迫っていく、こういう作品をもっともっと観たいな、と思った。

あたりまえでないことが起こっても許される映像の世界。

そんな夢のゆりかごでまどろめて、よかった。

『つぐない(ATNEMENT)』 (ジョー・ライト 2007年)



ラブストーリーを見に行ったつもりが、やりきれないほど悲しい、残酷さにうちのめされました。


映画の完成度はとても高かったし、撮影や音楽、衣装、風景などとても計算されたものがきれいに調和してる、頭がいい感じがしました。


・・・これは、先に原作読んで覚悟して見るべきだったかな。


田園的な風景の中にどこか不穏なタイプライターの音。

それが、全てを暗示してたのかもしれない。


結局、セシーリアとロビーが気持ちを通じあわせられたのは図書室での一瞬だけ。

これから、ってところで引き裂かれたことで悲劇感が増すのだけれど。

綺麗なままでのこる気持ちの甘美な罪、みたいなものもあるのかなぁと。

この2人は結局破滅に向かってった気がする。ある意味続きがないのも救いなのかな、なんてね。


妹ブライオニーの気持ちが屈折するのもわかる。

姉への崇拝と(あれだけきれいなお姉さんなら、しょうがない)ロビーへのあこがれ。

そこに想像力が加わって、潔癖症や嫉妬だけじゃ、説明できないどろどろした感情。


ブライオニーの内面と、戦争を前にした人間の無力さ、みたいなのが押し出されたテーマなのかな、と思いました。

戦争に比べたら、ひとつの恋が実らなかったことなんて取るに足らないこと、と感じてしまうほど圧倒的な映像もあったし。


最後に何を償ったのか、そもそも償えたのか、っていうのは残るけど、そこがあいまいなままな分、ラストの海辺の映像がものすごくせつなかった。


原作がある映画だからできる、納得できる終わり方だったと思う。


ジェームス・マカヴォイははまり役だった。ちゃんと演技してるし。

ゴールデンウィークのお約束。


イタリア映画祭2008を観てきました。


『まなざしの長さをはかって La giusta disanza』 (監督:カルロ・マッツァクラーティ)


前半は小さな村に美人がやってきて・・・といういかにもなイタリア映画かと思わせておきながら、後半一気にサスペンス色が濃くなり、結構意外な結末に落ちていく。

こんな大筋ばかりではなく、細かいデティールにも色々なメッセージが感じられて、短い時間ではなかなか消化しきれなかったです。

編集するの大変だったろうなぁ、なんて思っちゃいました。ボツになったカットが多そう。


一番感情移入したのが人種差別の問題と、よそ者同士の最後まで信頼しきれない関係。

メールの盗み読みや覗き見なんかは、とってもイタリアっぽさを感じました。


映像に関しては全体的に、光の撮り方が良かったです。夜の自動車工場のシーンとか。

音楽もきれいだったけど、音に関してはもっとこだわってもよかったんじゃないかな、と思いました。

車やバス、自転車などの乗り物が、近づいては遠ざかる音の変化のつなぎが少し雑な気がして、もっとうまく使えばいいのに、と感じた記憶が何箇所かありました。


決してただの三角関係の映画ではありません。もっと大きな作品です。

迷ってる人がいたら、見に行くことをお勧めします。いろいろ考えさせてくれる、クオリティの高い映画でした。


主演女優の舞台挨拶を生で見られたのも嬉しいハプニングでした。

それにしても、この邦題はあまりいただけないんじゃぁ・・・。

配給が決まれば、また変わるのかな。