『あなたを探して Ou es-tu?』 マルク・レヴィ Marc Levy


去年からはまっていて、これまでに読んだ『永遠の七日間』と『夢でなければ』も心にしみこむものでした。

今回の作品は、その2作品の上をゆく、まさに人生を豊かにする小説だと思いました。


具体的には。

アメリカとホンジュラスという貧富の対極にある国を対照させつつも切り離さずに関係をつなぎきっているところ。

主人公のカップルの気持ちに焦点を当てつつも、三角関係をつくるもう一人の女性の心理も細やかに描いているところ。

理想を追い求めるのと、現実を見据えること、そのどちらも正しくて悲しい結論になり得るということを淡々と描いているところ。

そんなこんなでとても考えさせられる内容ではあるけれども、

それが魅力的な登場人物たちによって紡ぎだされ、一気に読み切ってしまえる、しかも読み終えるのがもったいないような幸福な時間をもらえる、極上のストーリーだと思います。おすすめ。


個人的に、スーザンの性格が私にすごく近くて、似たようなことやってるし言ってるし考えてるしで親近感がわいたけれども、客観的に読むと、かなり自己チュー・・・(苦笑)。自戒しなきゃ。


ホンジュラスやハリケーンといった、なかなか取り上げられにくいテーマを取り上げたことも、

こういう社会問題を読みやすいラブストーリーに溶け込めさせられることも、

著者の才能と力量なんだと思います。

次は『mes amis, mes amours』が読みたいなぁ。

はやく翻訳が出るといいです。


『ブーリン家の姉妹  The Other Boleyn Girl』 

(ジャスティン・チャドウィック  2008)



原作を読んでから、ものすごく楽しみにしていた作品。

時代的にも興味のど真ん中。


だから、おおむね満足。豪華な映像を堪能させてもらいました。


でも。


せっかく当代一の演技派女優二人を起用してるのに、キャラクター設定が単純すぎてもったいなかった。

二時間映画だから仕方がないけれど、このキャストなら原作に忠実な、もっと複雑な心の動きをじっくり見せてもらいたいし、この二人にならその実力もあると思う。


特に妹メアリーの性格が、ただのいい人みたいになってしまっていて、スカーレットのポテンシャルが十分に引き出されてるとは思えなかった。

もっと姉アンに対して屈折した感情があって、宮廷暮らしも好きだけど田舎もいい、夫も好きだけど王も手玉に取りたい、そんな現実的な計算をしている面を滲みだす演技が見たかった。う~ん、もったいない。


圧巻だったのが、姉妹の母親、エリザベス。原作ではまったくと言っていいほど存在感がないけれど、映画ではいい感じで「まともな女性」像を演じていて、権力に目を曇らされた男たちと好対照。


典型的ダメ男、ヘンリ8世を演じたエリック・バナもよかった。

作品の性格上、その心情が前面に顕われることはないけれど、

「引き算の存在感」とでもいうような計算された演技が光っていた。

まさに、王という太陽を中心に、ブーリン姉妹や貴族がくるくるまわっているような。

何もかもわかっているうえであえてダメ男を演じている感じがした。


そもそも現代の感覚ならダメ男だけれども、当時の王様としてはむしろこれがノーマル?とも思う。

あまやかされ、誰よりも偉くて、でもとてつもないプレッシャーを背負っている。

孤独を癒す術が、彼の場合はたまたまオンナに向かっただけの話で。

・・・こんなふうに同情さえしてしまうくらい、彼の演技には説得力があった。


陰の権力者のノーフォーク公の演技もはまってたかな。


思ったよりロンドンの宮廷が暗くて息の詰まる感じがしたのに驚いた。

原作に戸外のシーンが多いためか、もう少し解放感があるのかと思っていたから。


衣裳が豪華絢爛で、歴史絵巻、って感じがしたけれど、

人間の心理に焦点をあてるなら、衣装はあえてもう少し控えめでもよかったと思う。

なんか衣装に圧倒されて、心の動きが見えにくい気がしたから。


ともかく、見ていろいろ考えさせられる映画でした。



・・・この時代のイングランドに生まれなくてよかったぁ。

フェルメール展~光の天才画家とデルフトの巨匠たち~


友人に誘われ、わざわざ天気のいい日を選んで光の巨匠を見に行きました。


正直、北ヨーロッパの絵画って色が鮮やかすぎて、現実的すぎて、ものすごい好き、ってわけではなかったけど。

だから絵の出来以前に、そのモチーフのチョイスとか、シーンごとに交わされていそうな会話なんかに思いを馳せながら鑑賞させてもらいました。


イタリア絵画だと問答無用に宗教画が多かったから、メッセージ性とか、わりと単純明快だったけど。

今回見た絵は、漠然と「遠近感をだす訓練したかったのかな」とか、「絨毯の模様に気合い入れたいのね」みたいな感想でした。


ずいぶん前からテレビや新聞でたくさん宣伝していて、おかげで少し予備知識が持てて。

期待してたより楽しめました。


フェルメール以外はあまり印象に残ってないけど、デルフトが面白い街だなぁ、と。

どの画家も同じ教会の絵を描いてて、17世紀の時点で、画家組合的なものが存在していたのか、それともパリのモンマルトルのように、画家志望者が一度は通る道なのか、興味がわきました。


・・・それにしても、どうしてフェルメールの絵は常に光が左から射しているんだろう。

手紙を書いているシーンの絵が、一番動きが想像できてよかったです。