私たちは占い師さんにお礼を伝え
会話もないまま占いの館を後にした。



“・・・“


“・・・“



今年中に結婚?
今日が初デートなのに今年中に結婚?


いやいやそんなわけないでしょ!


私はクスッと笑ってしまった。

するとあっくんもなにかを察したように
私を見てクスッと笑った。



“ビックリしたね“


“ホンマに。変な汗かいてんもん“


“もう一回小籠包食べ直す?“


“もうやめて〜!“


一笑いしたら2人とも気まずい空気はなくなりさっきの明るく楽しいテンションに戻っていた。



“この後どこ行こうか?“


“ここからあの観覧車のある遊園地まで行きたい“


“おぉーほな歩いて行こか!“


“うん!“



もう一度、今度は私から手を繋いだ。


海沿いの公園を歩き
遠くに見える観覧車を目指した。


かれこれ30分くらい歩いたけど
嬉しくて楽しくてあっという間だった。


“着いたー!“


“お疲れさん。一旦どこか座ろうか!“


“そこに売店あるから行く?“


“ホンマやね!…うわっ!生ビール。。。“


“うわっ!生ビール、、飲みます?“


“いいっすねー。いっちゃいましょうか!“


寒い2月の曇りの日に
私たちはお昼から観覧車の真下にある売店で生ビールを買って
誰もこの時期に座らないであろう外のテーブルに座った。

この感覚が合う人で、とても嬉しい。

そして楽しいたびにふとあっくんが芸能人だということを忘れてしまう。それくらい自然体な人だ。




“まだめちゃくちゃお昼やけど、かんぱーい!“


“最高だね!かんぱーい!“


“実は小籠包で一杯行きたかった“


“え、私も。飲んでたら占いもっと楽に聞けたかも“


“アハハハハハハー“

“アハハハハハハー“


なんてことない会話が楽しくて弾む。

そして誰も来ない、貸切の空間。



“観覧車乗ったことある?“

“あー、うん、ロケで。“


でた!ロケ!
あっくんが芸能人なことをハッと思い出し少し背筋がピンとし、キョロキョロする私。


“いやホンマにロケでやで?“


あ、別に疑ってないです!
多分本当にロケなんだろうなと思って背筋ピンしたんです。


“ふ〜ん“


ふざけて言う私。



“えっ!えっと…“

どう伝えようか悩んでる真面目なあっくん




“観覧車、乗らない?“

初めての観覧車デートをお誘いをした。



“ご一緒させて頂いてよろしいでしょうか?“


手を差し伸べてくるあっくん


2人でギャハハと笑いながら乾杯をする。


“これ飲んだら乗ろうか!“

“やったぁ!“



そして私たちは大きな観覧車の
小さな一つの部屋に乗り込んだ。


乗った瞬間に私はこう言った。



“うわ待って!私、高い所苦手かも!“


“いや今更かーいっ!!!“


とっさのツッコミ。緊張がほぐれる。


“高い所大丈夫?“


“大丈夫やで。高い所は。。。“


“高い所はって!?“


“俺、狭い所苦手やねん。“


“いやいや、あんたも今更かーいっ!“


と、めちゃくちゃ下手なツッコミをする。
しかしリアルな心の声がとっさに出ただけだった。



“2人とも観覧車、向いてへんやん“


“…とりあえず話して、乗り切ろう!“


“おっけ!“



観覧車は良いムードになる定番の場所だ。


しかし私たちは今、何をしているのか?

高い所と狭い所が苦手という状況で
観覧車に乗ってお互い震えているではないか。


移動すると、揺れるのが怖くて
隣に座ることも出来ず向かい合わせで
お互い俯き加減で話し始めた。



“遊園地好き?“

“あんま来たことないねん“

“そっかぁ。デートスポットでもあるけどファミリー向けだもんね“

“せやねん、子供が居たら絶対来ちゃうと思うわ“

“分かる〜。さっきのカートのおもちゃとか乗せたくなるよね。“

“いや絶対あんなん子供乗ってたらかわいいやん。“


“子供好き?“

“うん、めっちゃ好きやね。“

“あっくんは兄弟多いから余計にそう思うのかなぁ?“

“そうなんかなぁ?でも大家族のオヤジ、みたいなんには憧れあるで。“

“うお〜。全く想像つかない“


“なんでやねん!“

“細いもん!“

“いや関係あらへんやろ!“



“ギャハハハハー!“


素敵な夢の話や楽しい話に
ちょっと怖さがなくなってきた気がする。



“あゆみちゃんの理想は?“


“私?うーん、2人が理想かな。だけどそうやって聞くと大家族って楽しそうだなぁって思っちゃう!“


“そうなんやぁ!絶対あゆみちゃんはステキなママちゃんになるよ。“


“いやいや〜。え、でもなんかありがとう“

“あ、いや。。なんかごめん。“


なんとなく微妙な気まずい空気が流れたのを覚えている。



“もうすぐ頂上やで“


そう言われ、チラッと見るともう
あっという間に上まで来ていた。


“うわおーーー。“


“下、見れる?めっちゃ可愛い子供おんねんけど“


“え?下?“


“怖かったら無理せんといて。“


そんなん言われたら気になる。

チラッとあっくんを見ると
窓に張り付き下を覗いてとんでもなく優しい眼差しを可愛い子供に向けていた。


その姿が、たまらなく愛おしくて
優しさを感じて、印象的だった。


その笑顔につられて迷わず下を見た私。


“おぉー高い!どこに子供ちゃん居るの?“



“俺たちがさっき居たところ“


誰も座らないと思っていた
さっきまで私たちが座っていた
観覧車の真下の外テーブルに子供が2人座っているのが見えた。

きっとお母さんが売店で買っているご飯を待っているのだろう。


“見えた見えた!オレンジの洋服の子2人だよね?“


“そうそう!さっきから2人で追いかけっこしてて可愛いなぁ思っててん。今疲れて2人とも座ったんやって。“


“ほんとだ、かわいい。“






“双子ちゃんかな?“


“え?あー、確かにサイズ感一緒?
でも遠くて小さすぎるからよく分からない!“


“せやな。双子ちゃんって可愛いよなぁ“


“めちゃくちゃ可愛いよね!
私、双子ちゃん産みたいって中学の時よく言ってた!“


“そうなん?めっちゃ気持ちパワフルやん“


“確かに。笑“



そんな話を気付くとずっとしていた。

そしてあっという間に後半は終わり、地上に到着した。




まさか、それから5年後に
あっくんの元に
双子ちゃんが舞い降りて来てくれて、

2人で眺めたカートのおもちゃで我が子が遊ぶ日がくるとは、、


この時の私たちは想像もしていなかった。







そして観覧車を降りる寸前に

あっくんがポソっと言った。





“そろそろ、お父さんにご挨拶せなあかんな“







ついに、

その時が来たか。。。。!


続く。




ほいでは!