“あのっ!!!“












“はい!おまたせ!“



無言の空間を打ち消すかのように
タイミングよくドンッと置かれた瓶ビール。



“テーブル席なんて初めてじゃないっすか“


“そうっすねーいつも1人やから“


店員さんと石田さんが話し始める。


私はなんだかホッとしていた。
勢いで告白してしまうところだった。

店員さん、冷静にさせてくれてありがとう。



去っていく店員さんに軽く会釈をし
石田さんを見ると焼き鳥の盛り合わせをキラキラした目で見ている。


“おいしそ〜“

と、とっさに話しと空気を変える。


“焼き鳥ってどうやって食べる派?“

よく分からないけどなんかよく分かる事を聞いてきた。


“うーん。人と食べる時はなるべくバラバラにして分けるけど出来れば串ごといきたいタイプ!“


先程の動揺を隠す為に
違うところで本当のボロが出まくる。

やばい、、私また余計な事言ってるよ。



ワインバーで本音を話した時の
びっくりまんまるお目目に石田さんは今日もまたなって驚いている。


間が辛い。


“ぼんじり、このままかじっちゃっていいですか?“



“いいよ。てか絶対この串のままの方が食べやすいやろ?“



“まじ!?“


“まじまじ“


石田さんから
“まじまじ“が出るならこれは“まじ“だ。



そしてまた2人で吹き出すように笑う。
笑いが止まらないまま、交互にビールをさりげなく注ぎ合う。

相手に無理をさせない石田さんのさりげなさがこの時からとても好きだった。



話しが深くなるにつれ盛り上がってくる。


そして私は告白を。








は、さっき失敗したようなもんだから
遠回しに聞いてみた。



石田さんの好きなタイプはどんな人?“


“タイプとかあんまないねん“


“どういうこと!?“


“好きな人に俺なんかを好きって思ってもらえたらそれが幸せかなぁ“


なんか深い回答がきた。



“じゃあ、芸能人でいうと誰とかある?“

芸能人相手にリアルな芸能人の話をしている私はやっぱり若かったのだろう。



“芸能人なら松雪泰子さん!“


なるほどねー。なるほどねー。
私は一ミリも松雪泰子さんにかすらない女だ。

さっき告白しようとしてた自分を本気でバカだと思った。そして本気で店員さんと瓶ビールに感謝をした。



“あゆみちゃんは?“


“イッチー(市原隼人)かな“


“ぽいわー“


なんだか分からないけど“ぽい“らしい。


石田さんです“

とか言えちゃったら超可愛いのに。
イッチーだなんて石田さんと真逆のような人をわざわざなぜ言った!まぁ、本当にタイプなんだけどもね。


恋愛トークはあまりにもお互いのタイプが別人すぎてなんだか弾まずに終わった。



そして気付けば家族の話をしていた。
石田さんがご両親のことを大切に優しく話す。

あーやっぱりこの人好きだ。
そう思ってしまった。

私も家族のことを話す。語るとどんどん熱くなってしまうのが私のクセ。

話しすぎたかな?と思い石田さんをチラッとみるが優しい眼差しで、うんうんと話し終わるまでずっと聞いてくれた。



そして話し終わると石田さんが何かを言った。



“……せんか?“


石田さんの言葉は電車の音でかき消された。


“え??“


聞き返すも聞き取れない。

二度続いた。


笑う石田さん。笑う私。




そして3回目にして聞こえてきた言葉がこれだった。


 


“あゆみちゃんのこと
好きやから付き合ってもらえませんか?“





??????


頭の中はパニックになっている。
でも確実に聞こえた。



好き。
付き合って。
という言葉が。



“まじ?“


“まじまじ“

石田さんの“まじまじ“は“まじ“だ。





“私も。お願いします“

端折って伝えたこの言葉が精一杯だった。




お互いに照れながら静かに乾杯をした。





そして渡された石田さんからのプレゼント。



“この袋、、クリスマスの時に!!!“


“せやねん。実はあゆみちゃんへのプレゼントやってん“



びっくりしてプレゼントを開けると
赤いブランケットが入っていた。


私は赤いブランケット
ガード下の飲み屋で膝にかけた。




そして、ちゃんと、伝えた。



“ありがとう。私も好きだよ。“


お酒のせいか、
このシチュエーションにか、
赤いブランケットの反射でなのか

石田さんの顔が赤くなっているのがとても愛おしかった。



そして私は言った。


“今日から、【あっくん】って呼んでもいい?“


“あっくん?…ええよ“


そう言ってビールを一気に飲み干したあっくんは更に顔が赤くなっていた。




お店を出て駅まで送ってくれた。


ガード下から駅までは、たったの30秒。



とっても短く、でもとっても長く感じた
その30秒、私たちは初めて手を繋いだ。


完。







★★馴れ初め【結婚までのカウントダウン】


始まる?




ほいでは!