日本の株式市場には4,000社近い企業が上場していますが、理想とする企業を一つだけ挙げるとすれば、躊躇なく大阪にあるFA機器メーカ-㈱キーエンスを選びます。

 

同社のどこに魅力を感じるのか?まずは言わずもがな日本を代表する”高収益企業”である事。直近決算の売上高は約7,550億円で経常利益は約4,310億円と驚愕の利益率です。

 

もう一つの魅力は”持続的成長企業”であること。同社はなんと約50年間も継続的に企業成長しており近年は特にグロ-バル市場での売上を伸ばしているようです。

 

現時点で約16兆円もの時価総額がついているのは高収益且つ持続的成長を実現されているからでしょう。最近は同社の倍にあたる1兆円の営業利益を叩き出しているソニーグループと時価総額二位の座を競い合っています。

 

そして、”高い年収”ですね。同社の平均年収(2022年)が2,183万円と日本で一二を争うぐらい高いのはメディアでも話題になる事が多く周知の事かと思います。

 

最近、注目が高まっているように感じる同社ですが、創業者の滝崎氏がメディアへの露出を避けているせいか経営の秘訣はベールに包まれています。不肖、私は経済評論家などによる書籍を二冊ぐらい読みましたが、今一つピンとこなかった。

 

しかし、先日に同社のOBによる講演を聞き、キーエンスの優れた点がいくつか腹落ち出来ましたので備忘録を兼ねてここでお伝えします。

 

まず、高収益の理由の一つは製造業のボトルネックを解決している事。おそらくどの製造工場も”不良品の低減”、”稼働率の向上”に頭を悩まされている。”開発の時間短縮”もどの企業にもある経営課題です。

 

これらのお悩み(ボトルネック)を解決する商品提供をキーエンスは行っている。そして、同社の値付けは製造原価からの積み上げではなく、お客様が得る利益から決められる。

 

例えば、ある工場がキーエンスの機械を導入する事で不良品の比率が下がり年間10億円の利益が生じるとします。その場合はキーエンスは製造原価が1億円の機械を5億円で販売する。

 

わかりやすく単純化した事例ですが同社がターゲットとする粗利益率80%はこういう形で実現されます。

 

あと、商品企画の方針である”世界初・業界初にこだわる”、”市場シェアを追わない”、”利益率が低い売上は追わない”も高収益且つ持続的成長につながっているようです。

 

多くの企業は大きな市場で競合に勝つ商品を開発し市場シェアを伸ばす事に躍起になっていますが、同社はまさしく逆張りの発想です。

 

”細い糸を多くの顧客へつなげる”、”売上の大きな顧客作らない”いずれも創業者の言葉ですが、こちらも高収益の秘訣を表しているように思います。

 

同社の顧客数は30万社と膨大とも言える数。そして、一つ一つの商品の売上構成比は全体の1%以下から10%程度との事。

 

独自性の高い商品を開発し価格交渉が厳しい(売上の)大きな顧客に頼らない。とは言え特注品ではなく標準品にこだわっているので商品開発については非効率に陥らないようある程度スケールの基準があるのでしょう。

 

例えば少なくとも30億円以上の売上が見込める商品しか作らないなど・・・ボトルラインが定まっているように思います。

 

常に多様な商品ラインナップを擁し、顧客のきめ細かいニーズに対応した新商品の開発を短期間で実現するには自社工場は向かない。よって同社は”ファブレス”を堅持しています。また工場を持たないので新商品の企画に制約もありません。

 

さらに、キーエンスは代理店を通さず”直販”にこだわっています。なぜなら顧客のところで出向き、自身の目でボトルネックを見つけなければならないからです。勿論、直販の方が利益率は高い。

 

そして、同社の分配のルールは40年間変わらず、営業利益から確保すべき金額を引いた残りを業績賞与として支給しているとの事。業績を賞与が連動する事で高収入を実現出来ているようです。

 

あと、これは自身で感じた事ですがキーエンスの少数精鋭スタイルも高収入に関係しているのでしょうはないでしょうか。

 

例えば、同社のライバル企業であるオムロンは約8,000億円と同じような売上規模ですが社員数はキーエンスの3倍以上となる29,000人です。少数精鋭で高収入なら昼夜問わずのハードワーキングなのか?・・・そうでもないようで同社の離職率は低いようです。

 

理想に見えるキーエンスですが、勿論、我々の伺い知れない問題や苦労はあるのでしょう。しかし、高収益・長期の持続的成長・高収入を実現しているのは本当に素晴らしい・・・一経営者として敬服するばかりです。

 

同社は”青果物業界のエクセレントカンパニー”を目指す当社として、まさしくお手本とする企業でありこれからも大きな関心を持って動向に注目したいと思います。